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売り上げ50億規模のカリスマ農家が語る、法人経営の原点と転換期【前編】

売り上げ50億規模のカリスマ農家が語る、法人経営の原点と転換期【前編】

大規模化を目指す農業法人は、どんなことに取り組んでいけばいいのだろうか。家業を法人化して大規模化を果たし、現在はグループで売り上げ50億円にのぼるグリンリーフ株式会社の代表取締役社長、澤浦彰治(さわうら・しょうじ)さんとマイナビ農業の横山拓哉(よこやま・たくや)が対談した。

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■澤浦彰治さんプロフィール

グリンリーフ株式会社 代表取締役社長
1964年、群馬県昭和村生まれ。高校卒業後、群馬県畜産試験場での研修を経て、実家に就農。1992年、3人の仲間とともに有機農業グループ「昭和野菜くらぶ」を立ち上げ、有機栽培を本格的に開始する。1994年、家業を法人化(現グリンリーフ株式会社)。1996年、有限会社野菜くらぶを設立し、2002年に株式会社化。

■横山拓哉プロフィール

株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部 事業部長
北海道出身。国内外大手300社以上への採用支援、地域創生事業部門などで企画・サービスの立ち上げを経験。2023年4月より同事業部長就任。「農家をもっと豊かに」をテーマに、全国の農家の声に耳を傾け、奔走中。

原点は手作りの玉コンニャク

横山:澤浦さんはこの規模にして2代目なんですよね。継いだ当初は明日食べるものにも困るくらい苦しい時期もあったとか。会社を大きくするにあたって、ターニングポイントはいつだったのでしょう。

澤浦:今から35年前、加工を始めた時ですね。当時は昭和から平成に変わる頃で、農産物の相場が暴落して経営が本当に悪かったんです。「なぜ農業が駄目なんだろう」と考えた時、生産者が値段を決められないからだという結論に至りました。そこで加工・販売を始めたんです。

横山:当時は資金がなくて、家電量販店でミキサーを買ってきて手作りしたんですよね?!

澤浦:そう、そう(笑)お金がない中で何が出来るかを考えるしかなかった。必然的に他との差別化できたのは良かったです。お金があったら設備投資して、恐らく一般的なものしか作れなかったでしょう。振り返ると、独自のものを作っていくことを学ばさせてもらいました。

グリンリーフHPより

横山:次なるターニングポイントは。

澤浦:1998年にコンニャク工場を作ったことです。O-157事件を機に食品の衛生管理が非常に厳しくなり、製造の環境を整える必要が出てきました。そこで借り入れをして工場を建てました。稼働してから3年後には社員数も3倍に、メディアにも取り上げられてお客様が一気に増え、売り上げも7000万円から2億8000万円になりました。

横山:30代前半でかなりの冒険だと思います。失敗する怖さはなかったんですか?

澤浦:既に失敗していましたかね、怖いというよりも、やるしかないという思いが強かったです。

「健康志向」の一本足打法からの脱却

横山:会社を大きくしていく過程で、大事にしていたポイントは何でしたか。

澤浦:もともと、うちの商品は「有機」「無添加」がウリで、お客様も環境や健康、安全性に敏感な人が多かったです。
しかし東日本大震災を機で福島第一原子力発電所の事故があってから、お客様の商品を選ぶ基準が一気に「放射性物質」に変わったんです。群馬県でも野菜から放射性物質が検出されて出荷停止になり 、うちも一時は売り上げが半分に落ち込みました。その時に、「健康志向」の一本足打法じゃ、何かあった時に逃げ場がなくなると感じたんです。

横山:大変な中でも気づきがあったんですね。

澤浦:当時は不景気で、女性も働いて家計を支えるようになっていました。そうなると、忙しい女性にとって料理が大変になるだろうと思いました。そこでスタートしたのが、生協との「下ごしらえ野菜」の開発です。料理前の下ごしらえをした状態の加工品を発売しました。今のミールキットの原点です。安全性に、利便性をプラスした商品を作り始めた転換期ですね。
また、有機のしらたきの輸出も始めました。当時、日本の有機JAS認証と、EUのBIOの基準の同等性が認められ、有機JAS認証を取得すると、EUでも有機として売れるようになりました。その時ちょうど日本の輸出業者から話があって、ドイツに輸出するようになりました。

横山:外的要因で売り上げが下がっても、お客さんと向き合い、チャレンジされていった結晶ですね。

対談は後編へ続く

日本を代表する農業法人にも、個人農家だった時に培った経験や社会情勢に大きな影響を受けた転換期があったことが分かりました。後編は、社員の評価制度や今後の日本農業について深掘りしていきます。後編へ続きます。

 

(編集協力:三坂輝プロダクション)

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