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【TOP対談】老舗農業ベンチャーが上場!世界で勝負する農業事業とは【前編】

【TOP対談】老舗農業ベンチャーが上場!世界で勝負する農業事業とは【前編】

農業ベンチャーの老舗として多岐にわたる事業を展開する株式会社マイファーム。このほど上場され、農業界以外からの注目度も高い代表取締役の西辻一真(にしつじ・かずま)さんをお招きし、日本農業の価値や、今後農家が利益を上げる手段などを深掘りしました。

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■西辻一真さんプロフィール

株式会社マイファーム代表取締役
京都大学農学部資源生物科学科卒業後、2007年に株式会社マイファームを設立。2010年、戦後最年少で農林水産省政策審議委員に就任。2016年、総務省「ふるさとづくり大賞」優秀賞受賞。将来の夢は世界中の人が農業(土に触っていること)をしている社会を創ること。

■横山拓哉プロフィール

株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部 事業部長
北海道出身。国内外大手300社以上への採用支援、地域創生事業部門などで企画・サービスの立ち上げを経験。2023年4月より同事業部長就任。「農家をもっと豊かに」をテーマに、全国の農家の声に耳を傾け、奔走中。

世界に羽ばたく農業ベンチャー

横山:マイファームについて、教えてもらえますか。

西辻:うちの会社は「自産自消」ができる社会を目指しています。自産自消とは、自分で耕し、育て、収穫し、食べるということで、世の中の人たちが自然や農に触れる時間を少しでも持ちましょう、という考え方です。その実現のためには、ひとつのプロダクトやサービスでは難しいので事業が多岐にわたっています。

横山:数々の事業の中でも柱となるものは何でしょうか。

西辻:まずは、農業体験事業。二つ目はアグリイノベーション大学校という学校事業です。三つ目はサポート事業です。大学校を卒業した人たちが、安心して農業ができるように、作物を買い取ったり、手伝いに行ったりするなど、サポート業務も担っています。
そして四つ目が生産事業。卒業生で契約栽培をしたいという人たちにのれん分けするために、「この作物ならマイファームで全量買い取ります」というような形でやっています。

横山:ひとつの理念のもと、いくつもの事業の柱を持つマイファームさんですが、この度会社が上場されたそうで、おめでとうございます!

西辻:ありがとうございます。

横山:上場というのは経営者として一つの大きな成功だと思うのですが、西辻さんにとっては、ターニングポイントの一つに過ぎないようですね。

西辻:そうですね。上場っていうのは、資金調達したり、会社の信用力を上げたりといろいろな目的があるんですね。でも僕たちが一番大事にしているのは、「農業界だってちゃんとできるんだ」というのを、老舗の農業ベンチャーとして世の中に見せたいということ。
僕たちが上場することで、次に続くような農業系の企業がどんどん出てくるんじゃないかと思うんです。そうして日本の農業界に貢献して、更に世界でも勝負ができる会社として羽ばたいていきたいと思っています。日本独特の進化を遂げた農業メジャーとして、世界の中で活躍したいですね。

失敗しても人生やり直せる

横山:農業界を目指したきっかけには、どのような体験があったんですか?

西辻:僕は福井県三国町という所で生まれました。カニ漁が盛んで、他にもスイカとラッキョウの産地ということもあり、友だちのほとんどが漁師や農家の子どもでした。僕はサラリーマンの子どもでマイノリティだったので、みんなと友だちになりたくて、海の素潜りをしたり家庭菜園をしていました。
実際に野菜づくりをしてみると、親にも近所の人にも褒められるし、自分でもやっている感じになるんですよ。家庭菜園って最高に人を喜ばせるツールだと思いましたね。
そうして高校生になった時に、通学中に耕作放棄地を見つけたんです。当時は農業と家庭菜園の違いもわからなかったので、「この土地を家庭菜園の延長線上で使いたい」という意味で「農家になりたい」と話したのが、農業の世界に踏み込んだターニングポイントです。

横山:そうなんですね。

西辻:学校の先生や親も勧めてくれたので、大学で農学部に入って、自分にしか作れない作物を作ろうと思い品種改良を学びました。ところが品種改良って何十年もかかるんです。僕はそんなに待っていられないと思ったんです。

もう一つ、家庭菜園の延長って、仕事にすると農業なんだということがわかってきました。で、農家を回ってみると、ほとんどの人に農家はやめた方がいいと言われ、大学の先生からも研究者や官僚も考えた方がいいと言われてしまった。

こういう現状にぶち当たって、農業を仕事にするなら、もうかるようにやらないといけないんだと感じました。それでマイファームを作るんですが、やり始めてみると、耕作放棄地を改良するのにはお金がかかるし、なかなか農地を借りることができない。やりたいのにできない、これが当時の状況でした。

横山:そこで諦めなかったわけですね。

西辻:そうですね。前に進まないと運もやってこないし、チャンスも回ってこないから。ちなみに僕のマインドでいうと、失敗って長い遠くのゴールへ向かう時の、ちょっとしたヘコみぐらいで考えています。
もしダメだったとしても、バイトでもして生きていけるしね、と思ってましたから。起業時代は、ダメでも僕の人生はやり直せると思ってやっていました。

世界で勝負する新しい事業とは

横山:これからの日本農業についてどう思われますか?

西辻:今までのように安価に大量生産するのではなく、付加価値をつけたり、農業の人材育成や次世代への食育なども含めた、総合パッケージのような進化があるんじゃないかと思っているんですよ。
今回世界にターゲットを定めるにあたって上場し、今後は学校法人をマイファームのグループに入れて、海外人材の農業教育事業ができるんじゃないかと思っています。

横山:海外には農業学校ってあるんですか?

西辻:今はないですね。オーストラリアは農協のような組織が営農指導をしていますが、他の国にはない。僕たちは、人口が急激に伸びているアジア圏やインド、アフリカなどに学校を作りたいんです。そういう地域って、農業は貧困層や労働者がやるものだというネガティブなイメージがあるんですね。農業はきちんと利益が上がって、いい生活ができるようになる仕事だということを教えられる学校を作りたいです。

横山:マイファームのスタッフが行って、地元の人たちにノウハウを教えていくということですか。

西辻:そうですね。日本は、いかに農作物の価値を上げていくのか、農業が持つ多面的な価値をいかにサービスに変えるのかというのが得意な国だと思いますから、そういったことも教えていきたいです。

横山:確かに日本は中山間地ならではの創意工夫が詰まってますよね。

西辻:日本の農業って、生産効率の悪い棚田でやっていたりするじゃないですか。地域の美しい景色を守るために。それが今、観光産業になっていますよね。農業がやっている多面的機能をサービスに変えたんです。
マイファームの農業体験サービスでいえば、作物を作る過程を体験に置き換えて提供しているんですよ。こうして多面的なことを理解しながら、経営する力を持つ農家が、これから伸びてくると思います。

後半へ続く

自産自消が浸透した社会を目指して奮闘する西辻さん。
日本の農業の価値は、農業が持つ多面的な機能をサービスとして展開できる柔軟性や応用力にあると言います。
後半では物価高が続く中、農家がどうやって利益を上げていくべきなのか、西辻流の価値の作り方について語っていただきます!

<編集協力>鮫島 理央

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