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【TOP対談】コスト高に悩む農家必見!今を変えずに利益を上げる方法【後編】

【TOP対談】コスト高に悩む農家必見!今を変えずに利益を上げる方法【後編】

農業ベンチャーの老舗として多岐にわたる事業を展開する株式会社マイファーム。このほど上場され、農業界以外からの注目度も高い代表取締役の西辻一真(にしつじ・かずま)さんをお招きし、日本農業の価値や、今後農家が利益を上げる手段などを深掘りしました。

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TOP対談前編はこちらから

資材高騰のなかで利益を上げる方法

横山:最近の資材高騰や物流コストの値上げで、経営に苦しむ農家さんもいます。原価が上がるなかで利益を上げるために、どのように活路を見いだしていけば良いでしょうか?

西辻:利益を上げるための方法は四つあると思います。
まず一つ目は売値を上げることです。そして値上げを認めてくれる顧客をいかに集められるかがポイントですね。
二つ目の方法は生産コストを下げることですよね。でも今は資材コストが上がっていて厳しい現状にあると思います。
三つ目は生産量を大量に増やすことです。ただこれは、利益が出る仕組みができているのが前提です。

このなかで簡単にできることは、価格を上げて、それを理解してくれる顧客を見つけましょうということなんです。でも実は四つ目の方法がありますよというのが僕の持論なんです。

横山:四つ目ですか?

西辻:それは、あなたの農業の価値を、他のものに転化したらどうですか? というものです。これは対談の前編 で話した棚田の例が典型的で、棚田の風景を見てもらって、写真を撮らせてあげるから利用料をくださいねという感じにするわけです。これは別にコストがかかるわけではなくて、今自分がやっていることを商品化したらいいってことですよ。
つまり、今やっていることの中で、他に価値になることはないんだろうかと探してみるというのがポイントなんです。
営業力をめっちゃ発揮して頑張るのか、自分のやっていることで他にお金になることは何かを考える。逆に、原価を削ったり生産規模拡大しようというのは、なかなか難しい。

横山:そうですね。ちなみに一つ目の顧客を見つけるためのポイントはありますか?

西辻:今は顧客開拓がすごく簡単です。SNSがありますから、直接探しに行きましょう。SNSが苦手ですという人もいますけど、ならそこまでですねっていう感じだなと思います。苦手を作らないっていうのは成長の一つの大きなポイントですからね 。

西辻流、農業の価値の探し方

横山:他の価値に転化しようとした時、価値を探すポイントってありますか?

西辻:農業界でいうと、「食べる」もしくは「視覚」に注力しがちなんですけど、人が価値を感じる時は五感があるはずなんです。狙い所は「嗅覚」。
例えばマイファームの畑にトウキという薬草畑があるんですが、ニンジンのような匂いがして、その匂いを嗅ぐと、体がポカポカしてくるんです。うちの畑にいるだけで体がポカポカになって体調も整いますよ、その代わり料金払ってくださいっていうことも可能だと思うんですよ。

この“食べない農業”の最たる例が富良野のラベンダーファームです。視覚や聴覚を刺激して、その後食事などでいろいろな感覚をつついているじゃないですか。どの感覚を刺激していないんだろうって考えると、新しい世界が出てくるかなと思います。

横山:面白いですね。

西辻:心と体を満たすような価値を農業ビジネスで提供できるようにしないと。たくさん作ってお腹いっぱいにするという農業経営から、もう変化しないといけないんです。

西辻流、価値の作り方

横山:今後、日本の農業はどう戦っていくべきだと思いますか?

西辻:これからは、農業の持つ多面的な機能を活用できる総合農業企業が増えてくると思っています。また一方で、農業政策の中ではみどりの食料システム戦略のように、いかに環境負荷を抑えたもので栽培をしていこうかというものが伸びると思いますね。昔ながらの農業経営も、海外のものに負けない、いいものを作るかどうかがポイントになってくると思います。

どちらにしても大事なのは、生活者が安いものでお腹がいっぱいになればいいと思っていると、何をしても厳しいということ。結局のところ、生活者に農の価値を十分に感じてもらえるかっていうところに帰結すると思っています。

そうなってくると、僕は教育が大事だと思っている。幼少期から農業の勉強をすることが一番の大事なポイントなんじゃないでしょうか。

横山:より価値を高めていくということを考えた時に、農業現場でどのような努力が必要だと思いますか?

西辻:経営者は、商品を企画するアイディアという商品企画力が特に大事だと思います。
スタッフやマネージャーは、これまでの労働力をお金に換える働き方から、作物を育てることに意義を感じられるようにならないと難しい。

そのためには、目の前の作物とどう向き合うのかを考えることが大事なんです。
そして、その作物を誰かに売る時もきちんと声を聞くことが大事。販売力や営業力に自信がない人だって、自分の愛する作物を誰かに渡す時は、その良さを説明できるはずだし、作物を褒められれば気持ちも上がる。そういったことができるようになると、自分たちの農業にしかない価値も見えてくると思います。

横山:農作物を愛するという初心を持ち続ける、ということですね。

自分なりの価値を見出し、作り出す

物価高や海外に広がる競争相手など、農業を取り巻く環境は厳しくなりつつあります。そのような中で、農業の持つ多面的な機能をサービスに変えていくという西辻さんの考え方は、日本の農業が生き残っていく上で必要不可欠になるのかもしれません。

これから農業経営を志す人に求められるのは、自分なりに農業の持つ価値を探し出し、それをサービスとして作り出す力。その力を身につけるには、初心を保ち続けることが大切なようです。

西辻さんの対談前編

対談前編では、上場を果たした老舗農業ベンチャーのマイファームが、世界を見据えて勝負する農業事業についてお聞きしています。

<編集協力>鮫島理央

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