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トウモロコシの栽培限界地帯・中標津での挑戦!新品種ハヤミノルドとは?

トウモロコシの栽培限界地帯・中標津での挑戦!新品種ハヤミノルドとは?

世界情勢や円安の影響で高止まりを続ける飼料価格。配合飼料価格は3倍近くに跳ね上がり、多くの畜産農家や酪農家が自給飼料の生産、代替品の模索などに追われています。代表的な飼料といえばトウモロコシですが、気温によって生長度や成熟度が変わる作物のため、北海道北部や東部といった栽培限界地帯では、安定した栽培が難しいとされてきました。しかし、農研機構と道総研が開発した飼料用トウモロコシ「ハヤミノルド」は栽培限界地帯でも安定栽培が可能な新品種として期待されています。2023年、実際に中標津町で試験栽培を行った畜産農家にその魅力を伺いました。

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従来の弱点を克服し、栽培限界地帯で試験栽培を実施した「ハヤミノルド」

冷涼な気候から酪農が盛んな土地である北海道標津郡の中標津町。北海道の東部に位置し、トウモロコシの栽培限界地帯でもあります。

そんな栽培限界地帯を含む北海道全域でハヤミノルドの試験栽培が実施されており、2023年に作付けに挑戦したのが遠藤牧場の遠藤昭男(えんどう・あきお)さんです。

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遠藤牧場の遠藤さん。酪農を中心にジャガイモやダイコンなどの栽培も行っています

遠藤牧場は、乳牛と和牛を合わせて210頭ほど飼育しています。飼育は牛が自由に牛舎内を動けるフリーストールスタイルをベースに、二番草の刈り取りが終わる9月頃からは放牧スタイルへ移行。トウモロコシは十数年にわたって作り続けており、牛に牧草だけではなく食べ応えをもたらす粗飼料を与えるために栽培してきました。

遠藤さんは新しいことに率先して挑戦する人柄もあって、今回ハヤミノルドの試験栽培を実施したとのこと。約20年前には、当時ゴルフ場などでしか使われていなかったペレニアルライグラスを放牧地転用の第一人者としていち早くスタートさせたことからも、そのアクティブな面が伺えます。

その後もさまざまな酪農の試作などに関わり、現在はJA中標津で営農委員長も務めています。遠藤さんは一般社団法人日本草地畜産種子協会の放牧アドバイザーから、日頃試験栽培などを頼まれていた経緯から、ハヤミノルドの試験栽培も請け負うことが決まったのです。

倒れない!病気に強い!育ちが早い!「ハヤミノルド」が農家を救う

ハヤミノルドの特徴は大きく3つ。とても早く生長しきる「早晩性」。従来品種に比べ病気になりにくい「耐病性」。台風でも倒れにくい「耐倒伏性」です。

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ハヤミノルドを実際に栽培したときの様子。8月末にはとうが立つほど、他品目をしのぐ早晩性を誇る

栽培限界地帯に向けて市販される飼料用トウモロコシは、最も熟期が早い品種であっても相対熟度75日クラスの品種が一般的です。そんな中、ハヤミノルドは相対熟度60日という圧倒的な早晩性を誇ります。今回試験栽培を行った遠藤さんもハヤミノルドの成熟の早さに驚いたとのこと。

「これまでのトウモロコシは10月にならなければ収穫できないことが多かった。それに比べてハヤミノルドは8月末に収穫できる状態まで生長していたため、台風シーズンのピークである9月を避けられると感じた。もともと栽培限界地帯ということもあって、トウモロコシは一か八かで植えている農家も多い。台風でトウモロコシが生長しきる前に付け根から折れて倒れている光景は、精神的にとても打ちのめされる。そうした意味でも早晩性や耐倒伏性が高いこともありがたい」

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「台風被害でトウモロコシが全く収穫できなかった年もあり、作るのをやめようとしたこともある」と話す遠藤さん

試験栽培を行った2023年は、珍しく中標津まで到達した台風はゼロ。 異常気象によって気温が30℃以上になる日も多く、トウモロコシ栽培にとっては非常に恵まれた年だったそうです。

しかしながら道内ではトウモロコシが枯れてしまう「すす紋病」がはやっていた経緯もあり、遠藤さんは「従来の品種はハヤミノルドに比べると病気に弱い。今回すす紋病で困った農家こそ、ハヤミノルドに頼りたかっただろう」と思いをはせていました。

栽培限界地帯の寒さに負けない「ハヤミノルド」の有用性

遠藤さんは今回、牧草とトウモロコシを合わせて82ヘクタールある敷地のうち、2~3ヘクタールを使ってハヤミノルドの試験栽培を実施しました。

ハヤミノルドは密植性にも優れているので狭い間隔でも植えられますが、今回は違いを見極めるため他の品種と同じ株間で栽培。

「今年は本当にトウモロコシにとっての条件が良く、通常品種がよく生長した。ハヤミノルドは極早生品種ということもあり粒にサイズ差があったため、収穫量に明確な違いが出たものの、それについては密植で十分に補えると考えている。また、エルニーニョ現象などで冷害が発生した時、通常品種は自分の背丈ほどしか育たない年があった。そんな時も、寒さに強いハヤミノルドであれば変わらず一定の収量を確保できるのは心強い」と遠藤さん。

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トウモロコシに大きな被害をもたらす病害や冷害。これらに対応できるハヤミノルドに期待していると話す

トウモロコシを10年以上栽培している遠藤さんですが、植え始めた頃はトウモロコシが伸びきらず何年も苦労したそうです。しかし、それも近年地域の気候が変わったことによりどんどん改善されてきたとか。

「以前は6月に芽が出た後、霜が降りることがあったりと厳しい気候条件だった。そうしたときは、いくらアミノ酸肥料をまいても挽回できなかった。しかし近年は異常気象の影響か暖かい日が多く、栽培限界地帯も北へ移りつつあるのかもしれない。今後はこれまで全くトウモロコシが栽培できなかった北海道北部の農家で試してみるのもおもしろいと感じる。また、飼料用トウモロコシを今後検討している畜産農家にとっても育てやすいのでは」と、遠藤さんはハヤミノルドに期待を寄せます。

リスクヘッジに最適な「ハヤミノルド」 地域一帯で取り入れるメリット

ハヤミノルドの試験栽培は、遠藤牧場のある中標津地域一帯でも非常に注目度の高い取り組みでした。

「非常に恵まれた年になったため、今年に限ってはハヤミノルドの良さを地域に伝えるには今一歩及ばずというところ。しかし、エルニーニョ現象による冷夏や、台風被害、病害が断続的に発生していたため、苦慮している農家はとても多い。ハヤミノルドはその点でリスクヘッジできる品種として期待が高まるところ」と遠藤さんは話します。

中標津では2006年に地域にTMRセンター「有限会社中標津ファームサービス」が設立されています。遠藤さんはTMRセンターのような大規模栽培にハヤミノルドが向いていると実感を得たようです。

「ハヤミノルドは飼料用トウモロコシ栽培においても非常に心強い存在。例えば、冷夏によって通常品種がすべて使い物にならなくなってしまっても、ハヤミノルドだけは残ってくれたという実感をもたらしてくれる。それは地域全体を支えるTMRセンターであればより強力に感じられることだろう。センターで抱える100ヘクタールのうち、10%でもハヤミノルドに転用することで救われる農家が多くなる」

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農家の抱える不安要素は多くあるが、これらを緩和してくれるだけでもハヤミノルドに価値はあると話す遠藤さん

畜産農家や酪農家にとって、生産費の半分を占める飼料コストは、営農活動の継続に関わる大きな要素の一つ。その価格が高騰することは経営全体に大きな影響を及ぼします。

そんな時、病気に強く、台風に強く、早く収穫できる新品種「ハヤミノルド」は、苦境にあえぐ畜産農家を救う一手となるかもしれません。ハヤミノルドの実用化に向けた取り組みに注目してみてはいかがでしょうか。

「ハヤミノルド」についての問い合わせ

一般社団法人 日本草地畜産種子協会 
東京都千代田区神田紺屋町8 NCO神田紺屋町ビル4F
TEL:03-3251-6501
FAX:03-3251-6507
「ハヤミノルド」についてはこちら

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