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【セージの育て方】畑・プランターごとの栽培方法や注意点を農家が解説

鮫島 理央

ライター:

【セージの育て方】畑・プランターごとの栽培方法や注意点を農家が解説

家庭菜園でも人気の高いハーブ類。その中でもセージは丈夫で育てやすく、収穫期間も長い便利なハーブとして知られています。
さまざまな料理に使われ、食べ過ぎや飲み過ぎ、食欲不振にも効果があるというセージ。愛好者の多い作物ですが、家庭菜園で栽培しようとすると種が小さく発芽がそろいにくいなどの難しい点も。本記事ではセージの種まきから収穫まで、日々の栽培管理を詳しく解説していきます。ぜひ記事を参考にして、フレッシュでおいしいセージを楽しんでください!

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セージとはどんなハーブ? 特徴や由来など

セージはシソ科アキギリ属に属する多年草の植物です。地中海沿岸が原産地で、ガーデニングで人気の高いサルビアの仲間でもあります。

セージはその強い香りで知られ、肉料理や魚の煮込み料理などに使われることが多く、臭み消しや油っぽさを抑えるために利用されます。一説によると、ソーセージはセージから来ているという話もあるほどに、昔から愛されてきたハーブです。

また、葉や花の色が豊富で、観賞用としても人気があります。セージの葉は肉厚で、全体に白い毛が生えており、独特の香りを持っています。花期は5月から6月にかけてで、淡紫色または白色の唇形花を咲かせます。

セージはその薬効も注目されており、古代エジプト、ローマ、ギリシャの医学では薬草として利用されていました。強い抗酸化作用があるとされ、精神安定や発汗抑制作用などの効果があるといわれています。また、ピネン、シネオール、ツヨン、ボルネオール、セスキテルペンなどの精油を含み、消化促進や食欲増進に役立つとされています。

セージの種類

セージは約900種類以上の多様な品種を持ち、それぞれ独自の特徴があります。代表的な種類には、コモンセージ、ホワイトセージ、チェリーセージ、アメジストセージなどがあります。

ホワイトセージ

コモンセージは地中海原産で、料理やハーブティーに使われる一般的なセージで、灰緑色の葉と紫色や白色の花が特徴です。

ホワイトセージはカリフォルニア州南西部に自生し、白っぽい茎や葉が特徴で、ネイティブアメリカンの宗教儀式や薬草として利用されています。

チェリーセージは北アメリカからメキシコに分布し、さくらんぼのような香りとさまざまな色の花が特徴で、虫よけの効果があるといわれています。

チェリーセージ

アメジストセージはメキシコ原産の園芸種で、紫色の花穂を咲かせ、ミントのような香りがします。

セージの栽培暦

セージにはたくさんの種類があり、それぞれ栽培暦や適した環境が異なります。
ここでは、一般的なコモンセージの栽培暦について解説していきます。
地域や環境によって、栽培暦は異なるので、あくまで参考としてください。

セージは日当たりの良いやや乾燥した土壌を好みます。
庭や花壇で栽培する場合は、堆肥(たいひ)などを入れよく耕し、水はけの良い土を作っておきましょう。

また、酸性土壌を嫌うので、土壌の酸度が高いところでは苦土石灰を散布するなどの準備も必要になります。

セージの種まき

セージは種からでも栽培できますが、種が小さく、発芽率もそれほど高くないため、慣れるまでは大変です。
種からの栽培は少々難易度が高いですが、発芽がそろったときのうれしさは、種から栽培しないと味わえません。
種まきの時期や抑えるべきポイントなどをまとめましたので、ぜひ参考にして挑戦してみてください。

種まきの時期

セージの種まき時期は、春の3月から4月頃、または秋の9月から10月頃が適しています。
気温が20℃がセージの発芽する条件なので、実際の天候や気温の様子を見ながら、十分に暖かくなってから、もしくは夏の暑さが引いてから種まきを行いましょう。

種まきの方法・コツ

セージの種は発芽率が低めなので、種まきの際には多めに種をまくことをおすすめします。種まきの方法としては、ポリポットや育苗箱を使用し、種をゴマ粒程度の大きさにしてバラまきするか、ピンセットや湿らせたつまようじを使って点まきする方法があります。
もちろんプランターや地面に直接まいても良いですが、種が雨に流されたり、鳥に食べられたりしてしまうことがあるので、しっかり管理してあげる必要があります。

なおセージの種は好光性のため、種をまいた後は土をかけすぎないように、薄く覆うことが重要です。発芽後、苗が混んでいる場合は間引きを行い、本葉が3~4枚になったら植え替え(定植)をします。

注意点

セージの種は非常に小さく、発芽率が低い傾向にあります。種をまく際は、種が重なり合わないように注意し、種を土で覆い過ぎないようにします。好光性の種なので、薄く覆うか、表面に置くだけが良いでしょう。

また、種まき後の水やりは慎重に行います。やや乾燥した土壌を好むといっても、パサパサしすぎるのは良くないですし、水気が多すぎるのも種を腐らせる原因になります。はじめのうちは霧吹きを使うか、ジョウロで優しく水やりしましょう。

苗の植え付けについて

セージ苗を植え付ける際に注意したいこと、方法や必要なものについて解説していきます。
鉢植えの場合と地植えの場合、それぞれ説明するので参考にしてください。

プランター・鉢植えの場合

 ▼用意するもの
  • プランターor鉢植え
  • ハーブ用土or野菜用培養土
  • 鉢底石、鉢底ネット
  • プランターを置く台やブロック、すのこなど

◯やり方

初めに、用意したプランター(鉢植え)に、鉢底石と鉢底ネットを設置します。
次に土を入れ、軽くたたいたり揺らしたりして、土をならしましょう。
土の準備ができたら、苗を植え付けます。
セージは成長するとかなり大きくなるので、一つのプランターにつき1株がちょうど良いでしょう。
植え付けが終わったら、ジョウロなどで優しく水やりを行ってください。

◯注意点

ベランダや庭で栽培するときは、エアコンの室外機から離して置いてください。
室外機の温風が当たると、株が弱ってしまい、枯れてしまうこともあります。

プランターは直接床や地面に置かず、台やすのこなどに置いて、風通しを良くしてあげましょう。

セージはどんどん大きくなるので、毎年一度は一回り大きいプランターなどに植え替えたほうが良いでしょう。大きくさせたくない場合は同じプランターで栽培して構いませんが、株が疲れてしまわないよう、葉っぱなどをつけすぎないように注意しましょう。

地植えの場合

 ▼必要なもの
  • 堆肥や腐葉土
  • 石灰
  • 緩効性肥料

◯やり方

植え付け2週間前までに、堆肥や腐葉土を入れ、よく耕します。
次に植え付け1週間前までに、石灰と肥料を入れ、よく耕します。
セージはかなり大きくなるので、株間は少なくとも60センチ、余裕があれば1メートルほどとって苗を植え付けましょう。

◯注意点

セージは水はけの良い土を好むため、水はけの悪い場所では事前に土壌改良材を入れておくと良いでしょう。
あまり大きく育てたくない場合は、大きめのポットや鉢に植え付けた上で、地面に植えると良いでしょう。

栽培管理の方法

セージは放っておいてもしっかり育ってくれますが、ある程度の栽培管理は必要になります。
ここでは、水やりの方法、施肥の方法、剪定(せんてい)・摘芯について解説します。

水やりの方法

◯プランター・鉢植えの場合

セージはやや乾燥した土を好むので、頻繁に水やりをする必要はありません。
土の表面が乾いていたら、株元に水やりしてあげましょう。

◯地植えの場合

地植えであれば、基本的に水やりは不要です。
夏の暑いときや、晴れの日が続いて土がパサパサに乾いてしまうようであれば水やりしましょう。

水やりする際は、朝夕の涼しい時間帯に行うようにしてください。

施肥の方法

セージの施肥に関しては、次のポイントが重要です。
セージは肥料を多く必要としない植物なので、苗の定植時に長く効く緩効性肥料を施す程度で十分です。鉢植えの場合、植え替えの際に用土に緩効性肥料を与えましょう。

特に株を充実させたい時や花つきを良くしたい時など、追肥が必要な場合は、4月から6月と9月頃に月に1回程度、ボカシ肥料などを施します。この際、肥料は株元ではなく、根張りを考慮して葉の展開したあたりに半分くらい埋めるように置きます。肥料の過剰な使用は根にダメージを与える可能性があるため、使用量を守ることが重要です。

剪定(切り戻し)・摘芯について

セージの剪定は、主に「摘心」と「切り戻し」の二つの方法で行われます。摘心は、セージの茎の先端にある芽(頂芽)を摘むことで、脇芽の成長を促し、枝数を増やすことが目的です。セージはより葉をつけやすくなり、高さのコントロールもできるようになります。
一方、切り戻しは、伸びすぎた茎を整理し、姿形を整えるために行われます。風通しが確保され、病気の予防にもつながります。

剪定の適切な時期は、摘心の場合、定植後に根がしっかりとついた時点で行います。その後の摘心は、セージの成長状態や目的に応じて行いましょう。
切り戻しは、特に夏など高温多湿の時期に風通しを良くするために重要で、傷んだ茎や混み合った部分を透かすように切り取ります。

セージの収穫

セージの葉は、4月から11月と長期間収穫することができます。
シーズン中はどんどん葉が出てくるので、若い葉っぱのうちに摘み取っていきましょう。
花が咲いてしまうと葉が固くなったり、香りが落ちたりしてしまうので、葉を長く楽しみたい場合は開花前に花を摘み取るなどの対応が必要になります。

収穫後は、生のまま料理に使ったり、乾燥させてハーブティにしても良いでしょう。
乾燥させる際は、風通しの良い日陰にしばらくつるしておくか、食品用の乾燥機などを使って乾かしても構いません。

植え替えの方法

セージの植え替えは、通常、3月から6月、あるいは9月から11月に行うのが最適です。
植え替えには、元の鉢よりも一回り大きな鉢を選びます。排水の良い新しい土(ハーブ用培養土など)を用意し、鉢底には排水を助けるための石や粗い砂を敷きます。

セージを元の鉢から慎重に取り出し、根を傷つけないようにします。必要に応じて、根を少しトリミングしてから、新しい鉢に移植します。
植え替え後は、土が乾燥しないように適度に水を与えます。また、直射日光を避け、風通しの良い場所に置くことが重要です。

セージの増やし方

セージを増やす方法には挿し木、取り木、種まきの三つの手法があります。

まず、挿し木のやり方です。
セージの茎を約15センチの長さに切り、下部の葉を取り除いた後、水に浸してから湿らせたバーミキュライトに挿しましょう。根が出るまで直射日光を避け置いておきます。
うまくいくと、約2週間から20日で新しい根が生えてきます。

次に、取り木のやり方です。
地面に茎を伏せて、途中の部分に土を盛り、根が出るのを待つ方法です。
1カ月ほどで根が生えたら、切り離して植え付けます。

セージは年月を経て大株になると茎が木質化し、折れやすくなるため、挿し木や取り木で苗を作って新しい株を作ると良いでしょう。

セージにつく害虫

セージは害虫がつきにくい植物ですが、株が弱っていたり、風通しが悪かったりすると、次の害虫が発生することがあります。

アブラムシ

セージを含む多くの植物に発生する一般的な害虫で、植物の汁を吸い取ります。アブラムシの被害に遭うと、葉が変形したり、成長が阻害されたりすることがあります。

ハダニ

特に暑く乾燥した環境で発生しやすい小さなダニです。葉に細かい斑点が現れ、最終的には葉が枯れることもあります。

カイガラムシ

硬い殻で覆われた害虫で、植物の汁を吸います。カイガラムシが多く付くと、植物の成長が妨げられることがあります。

ヨトウムシ

葉を食べる害虫で、特に若い葉に被害を与えます。

セージを日々観察して、害虫を見つけたらなるべく早く防除するようにしましょう。
早い段階で対処できれば、被害を最小限に抑えることができますよ。

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収穫期間が長く、料理やポプリなどさまざまな用途に使えるセージは、家庭菜園として庭にあるだけで、日常が豊かに彩られます。

栽培管理においても、専門的な知識や経験などはあまり必要なく、家庭菜園やハーブの栽培に慣れていないという人でも、楽しんで栽培できるでしょう。本記事を参考にしてぜひ挑戦してみてください!

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