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出会いや取り引きのきっかけにも! 農業女子グループに聞いた「活動メリット」

出会いや取り引きのきっかけにも! 農業女子グループに聞いた「活動メリット」

農林水産省が2013年から推進している「農業女子プロジェクト」の影響もあり、現在は全国各地で農業女子のグループが増えています。中でも、石川県の農業女子グループ「石川なないろ~I☆M☆J~」の活動が注目されています。同グループを支援するいしかわ農業総合支援機構(INATO)の奥谷内文子(おくやち・あやこ )さんと、グループメンバーで農事組合法人「蓮だより」の 川端美希子(かわばた・みきこ)さん、きよし農園の多田礼奈(ただ・れいな)さんに、グループ活動の利点や長く続く秘訣(ひけつ)を伺いました。

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【プロフィール】
■奥谷内文子 さん

公益財団法人いしかわ農業総合支援機構(INATO)職員。
農地のあっせん・確保から人材の育成・確保、経営の効率化までをワンストップで支援する、石川県の農業の総合支援機関。新規就農者などの人材育成や販路開拓・6次化の支援、参入支援による多様な担い手確保など「人」「経営」「土地」をセットに総合的なサポートを行う。

■川端美希子 さん

脱サラしてレンコンに全てを注ぐ夫を支えるため、自身も幼稚園教諭を辞めて農家に。土壌改良材などを活用したこだわりの微生物農法で「加賀れんこん」を作る一方、石川農業女子グループ「石川なないろ~I☆М☆J~」や金沢農女(のまじょ)に参加し、新商品開発や、自社の商品の販路拡大を行う。

■多田礼奈 さん

祖父に「後を継いでほしい」と言われたことを機に23歳のときに農園を引き継ぐ。現在は「金沢ゆず」「ヘタ紫なす」「しろねぎ」を栽培するほか、伝統工芸とのコラボレーションや「ゆず祭り」を開催するなど、さまざまな取り組みに挑戦する。

農業女子グループって何をしているの?

マイナビ農業:農業女子グループってどんな活動をしているんですか?

奥谷内さん:農業経営に直結するような研修や、物づくりに関連するセミナーを開催したり、実践的な商品企画やマルシェの共同出店などを行ったりと幅広く支援しています。グループに参加する方の目的もさまざまで、女性農業従事者同士の横のつながりがほしいという人もいれば、経営に生かせる情報収集のために参加されている人もいます。

地域内に農業女子がこんなにいるって知らなかった!

マイナビ農業:川端さんは「石川なないろ~I☆M☆J~」発足の初期から参加されていますよね。参加しようと思ったきっかけを教えてください。

農事組合法人「蓮だより」の 川端美希子さん

川端さん:もともと同世代の農業の知り合いが全然いなかったんです。そんな時、たまたまグループ立ち上げの時にお便りが届いて、参加してみました。「農業の女性ってこんなに居るんだ!」と新鮮でしたね。参加後は、ハンドクリームの企画販売やバウムクーヘン作り、ドライ野菜の商品開発プロジェクトに参加したり。最近は東京・秋葉原で行われたマルシェに農業女子として出店しました。

マイナビ農業:いろんな活動をされているんですね! 活動に参加する目的は何でしょうか。

川端さん:農業女子同士のつながりができることで、日々の仕事へのモチベーションが上がる点です。例えばマルシェへの参加は、いつもの農作業とは違う仕事をメンバーとできることが楽しいですし、リフレッシュにもなります。他県の野菜がどう販売されているのかを見るのも新鮮ですし。他県の農業女子との交流もできるので、そこでパワーをもらえて「また頑張ろう」って思えるんです。どれも自分一人ではできないことです。

マイナビ農業:確かに、グループだからこその強みがありますね。活動を通じて得られたことや気づきを教えてください。

通販やデパートでも人気の「蓮だより」の加工品

川端さん:最近参加した秋葉原でのマルシェは反省点がたくさんありました。予想外だったのは、お客さんがほぼほぼ海外からの旅行客だったこと。商品説明を英語や韓国語、中国語で書くなど、販売中にも売り方を工夫していきました。行ってみて初めてわかることがたくさんありましたね。開催場所によって売れるものや準備しなければならないことが違うので、今後は下調べが必要だと痛感しました。またリベンジしたいです。

マイナビ農業:ふだんの農作業もこなしながら、そういった活動をするのは大変そうですが……。

川端さん:みんな無理のない範囲で参加しています。商品開発のプロジェクトはすごく楽しかったのですが、度重なる商品会議で時間を確保しなくてはいけないので、商品開発をずっと続けようとすると限界がきます。基本は情報収集をしておいて、興味のあるものに無理なく参加しています。

「石川なないろ~I☆М☆J~」で企画販売を行ったハンドクリーム「畑の国のアリス」。食べられる成分のみで作り、農作業中でも使用できる

奥谷内さん:事務局の方針としても、基本的には自分が興味のあるものに来ていただければうれしいです。「石川なないろ~I☆M☆J~」には会長もいませんし、総会や会費もないので、活動を強制することはありません。個々人がステップアップできるものを自分で取捨選択して、目標に近づいていけることが1番の成果だと思っています。

商談や商品化につながる出会いの場所

マイナビ農業:多田さんは最近農業女子に参加されたんですよね。参加しようと思ったきっかけは何でしたか。

多田さん:私は祖父の後を継いで就農したのですが、継いですぐの頃は金沢市が運営する農業大学校に通っていました。そこで「石川なないろ~I☆M☆J~」を紹介されたのがきっかけで、参加するようになりました。

マイナビ農業:どんな目的で参加されているのでしょう。

多田さん:最初は「とにかく人に会って人脈を作らなきゃ」と思っていましたね。祖父の頃はほぼJAに卸していたのですが、私は新たに販路を拡大してみたいと思っていたこともあり、いろんな人と会う中で新たな取引先が見つかればラッキーぐらいの気持ちでした。

マイナビ農業:実際に新たな取引先や販路は見つかりましたか。

多田さん:石川県白山市(はくさんし)で米の生産・販売・加工を行っている六星(ろくせい)の取締役・宮城円(みやぎ・まどか)さんとお話しする機会をいただいて、うちで生産しているユズを使ってくれることが決まりました。生果ではなく加工品の取引で、それまで加工品の製造に踏み切る勇気がありませんでしたが、六星さんが背中を押してくれました。

マイナビ農業:すごい! 加工品が製造・販売できると通年の売り上げも安定するので良いですね。グループ内の女性同士の横のつながりで、何か出会いはありましたか。

多田さん:平美由記(ひら・みゆき)さん という、能登町でブルーベリーを作っている方と知り合いました。平さんもお父さんの後を継いで、今は代表として農園を経営していて、立場が似ていたこともあり意気投合したんです。今ではプライベートでもよく会いますし、お互い取引先を紹介し合ったり、お互いのお店で商品を使い合ったりしています。あとは去年お店を始めた、羽咋市(はくいし)で農業をしている濱田友紀(はまだ・ゆき)さん とは、お店を始めた時期が似ていた事もあり、お店の悩みを聞いてもらったり、お取引もあったりします。すごく良いつながりを持てたなと思っています。

マイナビ農業:相談し合える相手がいるのは心強いですね。

多田さん:みんなそれぞれの関わり方で「石川なないろ~I☆M☆J~」に参加していると思います。私の作ってるものはマルシェ向きではないのでマルシェには参加していませんが、加賀野菜でマスタードを作っている方は、マルシェに参加して更に人気が出たという人もいて。そうやってそれぞれにあった関わり方で参加しています。

長く活動できる秘訣は「無理をしない」こと

マイナビ農業:川端さんも多田さんもおっしゃっていましたが、グループが長く活動できる秘訣は「無理をしない」ことが大事なんですね。

奥谷内さん:そうですね。設立時から「あまり縛られないこと」「組織的にならないこと」といった女性農業者の方の意見を取り入れて反映してきました。みなさん作っている作物が異なるので、農繁期も違うんですよね。だから活動の時期も分散して参加できる時にきてもらったり、会場も複数の場所に作って開催したり、託児所を設けたりと工夫を重ねてきました。みなさんそれぞれご自身に合った活動を選択して、着実にスキルアップや経験を積んでいます。

マイナビ農業:「石川なないろ~I☆M☆J~」が今後目指していきたいことを教えてください。

奥谷内さん:女性の声を反映して作られた組織ですが、当初から女性限定のグループではなく、一般に開かれていて、男性も参加されています。男女関係なく自分が必要とするものを選んで参加できるグループとして今後も活動していけたらと思っています。
また、いろんなニーズの方がいらっしゃるので、農業女子で開催している研修だけではなく、さまざまな団体で行っている研修も情報共有し、農家のみなさんが(ご自身の)ニーズに合ったものに参加できるよう支援していきたいです。

(編集協力:三坂輝プロダクション)

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