毎日2回の見回り作業。高齢化が進む地域にとって大きな負担に
中山間地域である広島県北広島町千代田地区にある有馬活動組織集落。地域生産者で連携して圃場管理の円滑化を図ることを目的に設立されました。法人1軒、大型農家1軒、小規模農家10軒の計12経営体で構成され、合計42ヘクタールの圃場を管理しています。
水稲栽培品種は、コシヒカリ、あきろまん、にじのきらめきなど5種。土地柄1圃場あたりの面積が小さく、大型農家への農地集積が進んでいるものの、農業従事者の高齢化もあり1経営体あたりの負担が大きくなっていました。特に、北広島町は水の少ない地域のため、毎日朝晩2回の見回りと水管理が長年の大きな課題でした。
「水路が車道から離れている圃場では、足もとの悪いあぜ道を薄暗い中歩いて確認しにいきます。私たち団体の最高齢メンバーは94歳。時間も手間もかかる上に危険です。水管理にかかる負担を解消できないかと、頭を悩ませていました」
そう話すのは、農事組合法人ファーム八重145代表理事の中森司さん。常日ごろ、車で圃場まで向かい、水管理を怠ったことはないと話します。
設置後スイッチを入れたらあとは放置!? 毎日朝晩の水田見回りは目視だけ
2022年、有馬活動組織集落ではスマート農業設備の導入による水管理の負担解消を図るため、中山間地域等直接支払制度の活用を決めました。本制度は、中山間地域等、生産条件が不利な地域の農業生産活動を維持するためのもので、有馬活動組織集落では、各条件をクリア。5年間で約630万円の助成金を受けられることになります。
その使い道を探しているときに代表の中森さんが提案したのが、アクアポートでした。2021年に中森さんの圃場で1基試験的に導入して水管理が楽になることがわかったことに加え、集落のみんなで使用できるからと意見が一致し、まずは12基購入することとなります。
アクアポートは、水口となる塩ビ管さえあれば1分ほどで設置することが可能です。
圃場と水路の高低差が大きい有馬活動組織集落では、塩ビ管、サニーホース、異径ソケットを組み合わせることで、合計12基が各圃場に無事設置されました。
あとは、上限用センサーと下限用センサーを設定水位の位置に調整し、電源スイッチをオンにするだけ。稲刈りまでは管理の必要は特段なく、自動で給水と止水を行ってくれます。
また、有馬活動組織集落はもともと水量の少ない地域でもあり、上流地域の圃場に水を流すと下流地域に十分な水量が届かないといった、土地の高低差による不公平感が少なからずあったのだとか。しかし、アクアポートを1シーズン使用してみて、適切な水量が各圃場に流れ、下流地域でも安定的に水が利用できることがわかったことも良かったそうです。
これらの結果を受けて、2023年、集落全体で協議し80台を追加購入することに。現在、合計26ヘクタール分もの圃場の水管理をアクアポートが担っています。
農事組合法人ファーム八重145副代表理事の西原敏幸さんは「合計92基のアクアポートを導入したことで、毎日見回りに行くことがなくなり、人件費やガソリン代の削減にも繋がりました。メンテナンスも、1年に1回、単1電池4個を変えるだけで、とても楽です」と、にこやかに話してくださいました。
1シーズン2基から。条件の違う2圃場で試験的に導入
「地域が連携して農業を支えていくことが大切です」と話すのは、有馬活動組織集落でのアクアポート設置をサポートしたひろしま農業協同組合の田坂真吾さんと益田悠太さん。農家さんの相談に乗ったり、作業負担を軽減するための情報にアンテナを張ったりと日々奮闘されています。
お二人がアクアポートのことを知ったのは2021年。JA全農からアクアポートが販売されるとの情報をキャッチした際、あまりのコンパクトさとシンプルさに「本当に大丈夫なのだろうか」と思わず不安になってしまったそうです。
“手頃で手軽”をコンセプトに掲げた稲作の水管理を省力化する機器で、価格は業界最安値とはいえ、実際の効果がわからないものに対して約4万円ものコストを投資するのは農家さんにとってリスクが大きいと憂慮した田坂さんは、アクアポートの効果を図るために、2基の試験機を取り寄せることにしました。
後日、実物をはじめて手にした田坂さん。通常水路から引き込む塩ビ管の口径が125Aに対して、アクアポートは100Aとパイプが細かったため「もしかしたら水が枯れるかもしれない」という覚悟を持ちつつも、1シーズンの試験運用を決めました。
実際に試験が始まってみると「もしかしたら水が賄えないかもしれない」といった不安は杞憂に終わり、シーズン中の圃場には目視でいつも水が張られているのを確認できました。アクアポート1基で0.9ヘクタールの広さをクリアできると実証できたのです。
さらには、圃場の水が枯れないため雑草の生える量が減ったことで除草効果があるといったうれしい誤算も。見回り作業と草引きといった水管理にかかる労力が大幅に減り、管轄地域の農家さんに自信を持って提案できると意気込んだ田坂さんと益田さん。
現在、千代田地区のアクアポートによる水管理のあり方は、隣接する集落にも波及。地域一帯の総導入台数は264台にのぼっています。この導入数は、自治体としては国内第1位を更新しており、現在も千代田地区の省力化に貢献し続けています。
まずは試験機でお試し。個人農家からの直接問い合わせもOK!
「2022年にアクアポートを販売して4年目。しかしながら自動給水機そのものがまだ認知拡大できていない状況です。“手頃で手軽”をコンセプトにし、個人農家さんでも高齢の方でもすぐに使える、シンプルな仕様を大事にしています」。そう話すのは、北菱電興株式会社開発事業部の福田淳一さん。
アクアポートは、設置後は野ざらしの状態になるためボディの素材をより頑丈なものへとアップデートするなど、使用いただいている農家さんやJAさんのご要望を詳しく伺い、改良を重ね続けています。
近日発売を予定している新モデルでは、実際の利用者の要望からタイマー機能が実装され、水を入れる時間を指定できるようになりました。
「問い合わせがあれば試験機を提供し、希望があれば現地に出向いて、設置や使い方のレクチャーいたします」と導入時には充実のサポート体制もあるアクアポート。
どの年代の方でも使いやすく、簡単に「スマート農業」の第一歩として導入することが可能です。まずは、お気軽にお問合せしてみてはいかがでしょうか。
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