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人手不足の時代に備えて 産地間連携と外国人材活用に向けた、宮崎で進む労働力受け入れの基盤づくり

人手不足の時代に備えて 産地間連携と外国人材活用に向けた、宮崎で進む労働力受け入れの基盤づくり

人口減少や少子高齢化が進む中、農業における労働力確保は全国共通の課題です。特定技能制度による外国人材活用なども進められつつありますが、人手が必要なのは収穫期に偏り、通年での雇用が難しいことが一つのハードルになっていました。
そんな中、宮崎県では農繁期の被らない群馬県嬬恋村と産地間連携を図り、通年での安定した仕事量を確保する取組を行っています。また外国人労働者との相互理解を深めるための研修や住居確保などの対策をしながら、これからの労働力不足時代に備えた外国人の受け入れ体制づくりをしています。宮崎での取組を関係者に伺いました。

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農繁期の異なる地域との連携で、労働力不足を解消

「日本のひなた宮崎県」のキャッチコピーに象徴されるように、日照時間と快晴日数が全国でトップクラスの宮崎県。令和4年度の農業産出額は3,505億円(全国6位)で、温暖な環境を生かした施設園芸品の生産が盛んに行われており、キュウリ、ピーマン、マンゴー、スイートピーは全国でも有数の産地です。

一方で、他の地域と同様に年々深刻化していくのが農業の労働力不足。宮崎県の調査によると、910農業法人のうち、3割の法人で労働力が不足していると回答しており、その人数は約1,000人を超える状況です。

「人材の確保・育成はここ十数年の揺るがない課題でした。」と話すのは、宮崎県農業法人経営者協会の長友さん。宮崎県農業法人経営者協会は、県の農業発展への貢献を目的に設立された組織で、農業法人に対して経営や人材育成、販路拡大などをサポートしています。

「経営者の片腕人材育成にも力を入れていましたが、そもそもの人手不足が深刻で、今後の生産計画も危ぶまれるレベルにまでなってきました。外国人材の活用も進めていたのですが、人手不足は繁忙期の冬場に偏り、通年の雇用は経営上厳しい。そんな中で嬬恋との連携の話をいただきました。」(宮崎県農業法人経営者協会 長友さん)

群馬県嬬恋村では冷涼な気候を生かしてキャベツの生産が行われており、農繁期の春から秋(4月~11月)にかけて外国人労働者を積極的に受け入れてきました。令和4(2022)年度には33軒の農家で90名もの外国人が働いています。冬(12月~3月)に労働力が必要な宮崎と連携することで、一年を通しての仕事量を安定させると同時に、繁忙期の雇用問題を解消する狙いです。

令和4年の10月に話が立ち上がり、そこからは急ピッチで話は進み令和5年には、農林水産省の『農業労働力産地間連携等推進事業』を活用して、宮崎県農業法人経営者協会(宮崎)と嬬恋キャベツ振興事業協同組合(群馬)、人材会社のウィルテック(大阪)の3者間で「産地間人財リレーに関する連携協定」を締結。ウィルテックは外国人材の教育や採用、生活面でサポートします。

宮崎県としては、今後は嬬恋だけでなく、農繁期の被らないほかの地域とも協定を結んで連携していく予定です。

人材のプロの協力で、調整や事務手続きを円滑に

連携に至った背景には利害の一致だけではなく、ウィルテックのサポート体制に信頼が持てたことが大きな要因としてありました。

「労働者を安く雇う意識ではなく、育成に力を入れているのが印象的でした。日本に来た方が学び、本国に戻った後に生かしてもらうビジョンが見えました。」(宮崎県農政水産部 藺牟田さん)

ウィルテックでは、約20年以上にわたり海外人材採用に携わり積み上げてきたノウハウを生かし、農業に対する意欲の高い方を選抜して7~8カ月かけて人材育成プログラムを実施しています。
目標の日本語レベルはN3に設定。「特定技能1号」の資格取得はN4レベルの日本語力があれば可能ですが、円滑なコミュニケーションのためにワンランク上の語学力を目指します。さらに来日後もステップアップを目指して勉強できる環境を用意して、入国後も全面的にサポートします。

現在、受け入れを行っている中邨農園に話を伺いました。

「今回来てくれたミャンマーからの特定技能の2名はスキルも意欲も高く、今期のキュウリの収量アップに貢献してくれました。仕事熱心でありがたいです。私も来てくれた方の興味に応じて、自分の技術や知識を伝えるようにしています。」(中邨農園 中邨さん)

さらに、サポート体制が整っているのも大きな安心に。県内にはウィルテックの相談役が1人常駐しており、外国人労働者も農業者も双方困りごとをいつでも相談できる体制です。

ウィルテックの下條さんによると、利害が一致しているはずの産地間連携でも、うまくいかないケースは多いとのこと。その原因の一つが、産地間での調整や事務手続きの煩雑さです。

「受け入れ時期の設定や提携先との調整、移動に利用する交通機関、書類や申請手続きなど、ただでさえ忙しい農家さんが細かい調整まで行うのは非常に難しいことです。そこは、長年の経験のある私たちがお手伝いできる部分だと思います。」(株式会社ウィルテック 下條さん)

「開くべきところは開く」受け入れ側の意識・制度改革が重要

令和6年現在、8名のベトナム人、37人のミャンマー人と計45名の外国人労働者がウィルテックのサポートのもと、宮崎で農業に従事しています。
受け入れ側に必要なこととして、「何よりもまず学ぶ姿勢が大切」と藺牟田さんは指摘します。

「気持ちよく働いてもらえる環境を作るのはどの業種でも大切なことです。現地の言語や文化だけでなく、そもそもの入国方法や在留資格などに関しても、受け入れ側の知識がなさすぎるのが問題です。農業者から相談されたときにどう返答するのか、その体制づくりも今回の事業で取り組んでいるところです。」(宮崎県農政水産部 藺牟田さん)

行政やJA職員の関係団体、農業者に向けて研修を実施しながら、外国人材の働きやすい環境づくりを強化します。

今後も外国人材活用を進めていく中で、避けて通れないのが住居確保の問題です。
「宿舎や寮のある農家はほとんどありませんし、徒歩圏内で借りられる民家やアパートも少ないです。外国人労働者を雇う場合、まず住居を確保するところで非常に苦労しています。」(宮崎県農業法人経営者協会 長友さん)

一方で不動産業界ではここ10数年、公営住宅の空き家増加が問題になっています。今回の嬬恋との産地間連携とは別事業で、宮崎県では少し前から外国人労働者の住居確保と公営住宅の空き家問題、この2つをつなげる取組を模索しています。

「公営住宅は住むための要件が条例で決まっていて、特定技能の方は裁量で入れるのですが、技能実習生は入れませんでした。宮崎県では、漁協で受け入れを行っている外国人技能実習生向けに公営住宅の使用許可申請を行っている事例があり、それを参考に令和5年度は農業分野で県営住宅の目的外使用の認可を受け、今後実証を行うこととしています。」(宮崎県農政水産部 藺牟田さん)

もう一つの課題が運転免許です。自動車免許がないと、車社会の地方では通勤や日常の買い物に苦労します。また、重機の免許が取得できればコンダクターなどの仕事の幅も広がります。宮崎県では、令和5年10月から運転免許試験について、ベトナム語と中国語を含めた対応を始めました。交通常識の違いなど懸念事項はありますが、地域の理解を得ながら進めていくとのことです。

時代に応じて変わっていく必要性

「嬬恋とウィルテックとの三者間連携は継続してやりつつ、今回の取組をモデルケースとして宮崎としてもあらゆる取組を模索していく予定です。いつ、どのくらいのボリュームで応募が増えるかわからないので、いつでも受け入れられる体制は作っておく必要があると思います。」と、今後の展望について藺牟田さんは話します。

大事にしているのは、受け入れた外国人材が宮崎で学び、帰国後も役立てられる技術を習得してもらおうというビジョンを持った農業者を育成していくことです。

時代の流れとともに日本の産業構造が大きく変わっていく中、「変わらなければいけない。」と危機感を持ちながらあらゆる取組を試行錯誤する、この姿勢こそがこれからの農業の労働力確保に必要とされている姿勢なのかもしれません。

【取材協力】
みやざき農業人材確保支援会議事務局

【労働力確保支援事業に関するお問い合わせ】
株式会社マイファーム
農業労働力確保支援事務局

MAIL:roudouryoku@myfarm.co.jp
TEL:050-3333-9769

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