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農業にもweb3の波が!? 新しい地域おこしに最先端技術を活用する方法

農業にもweb3の波が!? 新しい地域おこしに最先端技術を活用する方法

インターネットで顧客とコミュニケーションをとったり商品を売ったりすることが当たり前の時代になった。農業も例外ではなく、農家が直接消費者に農産物を売る手段として、インターネットは多用されている。しかし、時代はもう少し先を行っているよう? 「web3(ウェブスリー)」と呼ばれる新しいインターネットの手法を使って地域や農業の活性化につなげようとする動きを取材した。

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農家が流行最先端の街でweb3と農業を語る

2024年3月中旬、東京・恵比寿のとあるビルで、「web3」に関する事例発表会があった。恵比寿といえば流行の最先端を行く人々が多く集まる街だが、当日のテーマは意外にも“地域”。イベントのタイトルは「地域のヒト・モノ・コトから探るweb3の可能性」だ。
そしてそのスピーカーの一人として登場したのは、バナナ農家。沖縄でバナナを栽培し、スムージーなどに加工してフードトラックで販売する事業を展開する、株式会社琉球プランテーションズの「まこやん」こと林誠(はやし・まこと)さんだ。林さんは農家の立場から、web3を活用したイベントの様子などを発表した。

そもそもweb3とは

1990年代に普及し始めたインターネットは当初、作られたWebページを私たちユーザーは“閲覧するだけ”だった。この時代は一般的に「Web1.0」と呼ばれる。
その後SNSなどが普及したことで、誰もがインターネット上で発信できる「Web2.0」の時代に。ただ、発信するには大手プラットフォームが運営するシステムを利用することが必要だ。もちろんそこで発信される情報も、そのプラットフォームのシステムで記録される。
そして、今新たな段階である「web3」(Web3.0とも)の時代に突入していると言われる。この段階では情報をユーザー側に分散して記録する「ブロックチェーン」と呼ばれる技術によって、ユーザー同士が直接情報をやり取りしたり、自分自身で情報を管理したりできるようになった。ビットコインに代表される仮想通貨も、政府が管理している一般的な通貨と違い、何らかの組織が管理しているわけではない。

NFTってなに

このweb3の技術を活用した仕組みの一つが「NFT」。「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略で、デジタルデータの唯一性を保証することに使われる。仮想通貨とNFTの違いは、前者が「通貨のように持っている量が大事」なのに対し、NFTは「芸術品のようにどれを持っているのかが大事」であるという点だ。その特性から、オリジナル性が重視されるデジタルアートの分野で活用されることが多い。

林さんはこのNFTを、会社のミッションとして掲げている「しまんちゅバナナで子供たちを笑顔に、沖縄を元気に」を実現するために活用している。

林誠

イベント中、参加者にバナナスムージーを振る舞う林さん

地元を盛り上げるのにNFTを活用

林さんはたまたま友人の紹介でNFTアートの活動をするアーティストと出会ったことをきっかけに、地元の子供たちを巻き込んだイベントを企画。子供たちに色塗り前の線だけ書かれたスケートボードを配り、それを自由に色塗りしてもらい、完成したものをパズルのように組み合わせると、林さんのフードトラックに描かれているキャラクターの「スパンキージュニア」が現れるという仕掛けだ。林さんの友人が経営するアートギャラリーで展示された後、NFT化され分割販売も行われた。こうしたイベントを通じて沖縄の子供たちに沖縄のバナナのことを知ってもらったり、NFTアートで得た収益を地域の活性化に生かしたりしたいと林さんは話す。

林誠

イベントで子供たちが色を塗ったスケートボード(画像提供:林誠

林さんは、読谷村(よみたんそん)の隠れた魅力を観光客にアピールするイベント、「THE GAME(ザ・ゲーム)」にも参画した。 企画したのは林さんの友人で、読谷村で宿泊施設やアクティビティーなどを提供するAirbnb(エアビーアンドビー)のホストをしながら「関係人口の創出」をテーマに地域活性化の活動も行っている松村理恵(まつむら・りえ)さん。イベントの参加者にはあらかじめNFTのキャラクターが送られ、スマホを手にクイズラリーをしながら読谷村を巡る。チェックポイントを通過するごとにキャラクターにアイテムが追加され、コンプリートするとこれまたNFTで特典が送られてくるというイベントだ。チェックポイントは「地元民にとっては日常の場所」だが、観光客にとってはいわゆる観光地とは違う、その土地ならではの魅力的な場所。そこに松村さんは自身の友人を配置し、参加者と地元民とのコミュニケーションも生まれる演出をした。林さんは「バナナおじさん」の格好で、最後のチェックポイントとなったフードトラックで参加者と交流。もちろん参加者は皆、林さんの提供するバナナスムージーも楽しんだ。

松村理恵

松村理恵さん

このようにデジタル技術をリアルなコミュニケーションの中でも生かしたイベントは増えてきている。イベントやコミュニティーに参加することで得られるNFTを発行するなど、参加者たちがリアルにつながる手段としてもweb3の技術は使われている。

web3的につながることが大切

こうしたNFTを用いたイベントが、地域の魅力や農産物の魅力を伝えるきっかけになると松村さんは言う。また、web3の考え方も、これからの地域活性化につながると話す。「いわゆるステキなリゾートホテルは、私たち地元の人間が思う沖縄じゃない。そういう大きな資本が作ったものは“Web2.0”的。web3的な直接のつながりが、観光客と地元民の特別な関係性を作りだし、それがシビックプライド(自分たちの住む地域への誇り)になる」

web3に対して、まだ多くの人が「縁遠いもの」という印象を持っているだろう。しかし、その時代は確実に近づいている。林さんの例のように、農家自身がさまざまな技術や取り組みを積極的に活用し、自身の農産物のアピールやブランディングに活用していく例も今後増えていくかもしれない。

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