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おじいちゃん農家が農業事情を訴える姿が大バズり! SNSで人気の「マイヒメおじさん」は作物の品質にこだわる、熟練のプロ農家だった

おじいちゃん農家が農業事情を訴える姿が大バズり! SNSで人気の「マイヒメおじさん」は作物の品質にこだわる、熟練のプロ農家だった

熊本県宇土市でトマトを中心に栽培する小森ファーム。糖度の高いトマトを生産し、無添加の100%トマトジュースなども販売している。とにかく質の高さにこだわったストイックな農家だが、特筆すべきはそれだけではない。「マイヒメおじさん」として自ら出演するSNSのトータルフォロワーは12万人を超え、TikTokに投稿する動画の中には1本で500万回再生を記録するものもあるなど、いまZ世代を中心に人気を集めている演者でもある。

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動画投稿を始め、いきなりZ世代の心をわしづかみ

小森ファームは熊本県宇土市の約48アールの畑でトマトをメインに栽培し、裏作でメロンを育てるほか、約154アールの圃場で大秋柿を家族経営で生産する。

「マイヒメおじさん」として動画に出演し、SNSで人気を集めるのが、小森ファームの前園主である小森公明(こもり・きみあき)さんだ。

農家の家の長男に生まれ、約50年前に就農した公明さん。当時はスイカやメロン、コメや柑橘類を生産していたという。
約30年前に知人の勧めなどもあり、土壌を地床から隔離する隔離栽培に着手。
当時は高品質なメロンを目指していたが、熊本の日照量では難しいことを感じトマトに切り替えたという。

隔離栽培は難しく、挑んでは断念する農家が多い中、公明さんはより良い品質のものを生産したいという思いから試行錯誤を繰り返し、現在でも県内ではほとんど行われていない隔離栽培を続けている。

2013年ごろからは、自社のトマトを使ったトマトジュースを商品として展開。
安心安全なものを作りたいという思いから、無添加の100%のトマトジュースとなっている。直売所やオンライン販売を中心に、伊勢丹などの百貨店でも販売している。

小森ファームが動画投稿を始めたのは、2023年の8月ごろ。
販路先を増やしたいと考えていたものの、物価高騰などもあり手詰まり感があったことから、どうにか多くの人に知ってもらえる方法はないかと考えてのことだった。

息子の小森大将(こもり・だいすけ)さんがSNSに詳しい知人に相談したところ、動画投稿を提案されたという。動画の専門家も交えて方向性を話し合っていくと「公明さんが出演した方がいい」という意見が上がった。

公明さんは自分が出演するとは夢にも思っておらず、最初は恥ずかしくて出たくないと感じたそうだが「公明さんのキャラクターがすごくいいと思う」という専門家の意見に後押しされて出演を決意した。

農家の平均年齢は約68歳。ちょうど68歳(当時)だった公明さんが農家の窮状をユニークに訴える姿が若者に刺さり、初回の動画投稿で早くも、再生数が15万回を超えた。これにより、オンラインショップの注文が激増し、2日で在庫がなくなるほどの反響だったという。

その後も、TikTokを中心にインターネット上で流行した「なぁぜなぁぜ?」というフレーズをもじった動画などが受け、SNSのトータルフォロワーは現在12万人以上を獲得。若い世代を中心に「可愛い」「応援してます」というコメントが寄せられている。主に女性からのコメントの多さに驚いたそうだ。

「始めは(視聴者との)年齢が近い息子が出た方がいいと思ったんだけど、白髪頭のおじさんの方がいいみたいだね」と公明さん。

動画投稿を始めた当初、公明さんはガラケーを使用しており、SNSや動画投稿についての知識は全くなかったというが、最近はスマートフォンに買い換え、未知の世界に悪戦苦闘しながらも自分の動画についたコメントや再生回数などを毎日チェックしているそうだ。

農家の現状や問題を切実に訴えかける動画

農家のSNSはおしゃれな写真や動画のほか、若者向けのダンス動画などが多い中、小森ファームが投稿している動画は、公明さんが農家の窮状や農業の課題についてを語る内容が中心だ。

公明さんが動画を通して伝えたいことは、自社商品の宣伝ももちろんあるが、より多くの人に農家の現状や問題を知ってほしいということもあるのだという。

特に、農家の平均年齢の高さには危機感を抱いており、「このままでは高齢化が進み、10年後には平均年齢78歳。若い世代に見てもらえているチャンスを活用していきたい」と考えているそうだ。

動画制作は、月に1度動画撮影をまとめて行い、3日〜4日に1度のペースで投稿している。

動画作りは公明さん自ら、現役農家として感じていることや課題を提案し、息子夫妻や動画編集のプロも交えながら、幅広い世代に伝わるようなユニークさやはやり言葉の言い回しを交え台本を作成している。「日本の農家は高齢化が進んでいるのは、なしてなして?」といったようなミームも取り入れながら、農家の現状を投げかける内容となっている。

台本を読み込む公明さん

元々演劇部に所属していた経験もあった公明さんは、せりふの読み上げが上手すぎて「本物の農家ではなく、役者なのではないか?」と疑われるコメントもあったのだという。

しかし、現役農家にしかわからない視点などを取り入れ、農家にとっては当たり前でも、世間一般には知られていない内容を伝える動画は「知らなかった」「応援したい」というようなコメントで溢れ、若者の心を確実に動かしているようだ。

真の姿は高クオリティなものを追求するプロの農家

若者から人気を集め、直売所にやってくる女性客からは必ず「可愛い〜」と言われるという公明さんだが、真の姿は“おいしさ”をとことん追求し、高品質を追い求めるストイックなプロの農家だ。根底には、おいしいものを食べて欲しいという気持ちが強くあるという。

インターネット販売で成功していくことは、他と明らかに違う強みを確実に作っていき
、ブランド化していくことが大切だと公明さんは考えている。

小森ファームが作るトマトは「味」と「糖度」に強くこだわっており、通常のトマトの平均糖度は約5度なのに対し、小森ファームのトマトは10度以上を保っている。
品質が高い作物を手掛けているからこそ、SNSから流入したユーザーも一過性のものではなく、リピーターやしっかりとしたファンとなっていく。

引退も視野に入れ始める中で、自分の心行くまま最高品質のものを生産したいという気持ちがあるものの、品質向上と経営の安定というなかなか両立が難しいジレンマを抱えていたという公明さん。

SNSで獲得したファンのおかげで、今後はもっとクオリティ重視の生産に注力ができるかもしれないと希望が見いだせたという。

小森ファームの信念は「皆さんに笑顔を届ける、食べる人を笑顔にする」。
動画投稿を新たな軸として、よりおいしく安心安全なものを届けられるよう、そして自分自身が納得できるような、最高品質に励んでいきたいと話してくれた。

公明さんのそのストイックさや農業に対しての真摯(しんし)な姿勢が、幅広い世代の心を打ったのかもしれない。動画はもちろん、公明さんが作り上げる“最高品質”にも今後注目していきたい。

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