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女性農業経営者として、3児の母として、時に「キクラゲの妖精」として。生産、加工、販売に向き合う原動力は

女性農業経営者として、3児の母として、時に「キクラゲの妖精」として。生産、加工、販売に向き合う原動力は

「愛知県豊川市に、キクラゲの妖精がいるらしい」、「女性農業者で、全国を飛び回ってキクラゲを販売しているらしい」。そんな気になるうわさを聞きつけた筆者。これはもう、会いに行くしかない!
ということで今回は「キクラゲの妖精けっぴー」こと、キクラゲ生産者の喚田恵子(よびた・けいこ)さんに、これまでの奮闘やキクラゲへの思いについてインタビューしてきました!

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喚田恵子さんプロフィール

愛知県豊川市出身のキクラゲ生産者で3児の母。
「キクラゲの妖精けっぴー」に扮(ふん)し、自ら店頭に立ってキクラゲを販売する。
キクラゲの生産・販売の他6次産業化にも力を入れており、キクラゲを使ったスイーツを振る舞う「甘味処よび田屋」を構えるなど、キクラゲの魅力やポテンシャルを広く伝えている。

就労支援の一環で携わったキクラゲ栽培のトリコに

ナス男:現在の栽培作物や規模を教えてください。

喚田さん:キクラゲのハウス約330平方メートルで、キクラゲと白キクラゲを生産しています。私と従業員さんが4名、加えてパートさん数名と就労支援の方で栽培に当たっており、出荷量はキクラゲが30t、白キクラゲが1〜2tくらいでしょうか。
JAに出荷している他、6次産業化で自社での販売にも力を入れています。

ナス男:キクラゲ栽培を始める前は、何をされていたのですか?

喚田さん:B型就労支援の会社で働いていました。
夫の親族がキクラゲ栽培をしていて、そのつながりで就労支援の一環としてキクラゲの栽培や出荷調整などに携わったことがきっかけです。

栽培面だけでなく、栄養豊富なところとか、キクラゲの全部が面白くて「キクラゲを自分でも広めたい!」と思うように。そこで夫の協力も得て、2020年に融資を受けてハウスを建てて栽培を始めました。

こだわりのキクラゲ栽培で失敗も……

ナス男:すごい行動力!
国産のキクラゲって珍しいと思うのですが、栽培面でこだわりはありますか?

喚田さん:国産のオガクズや米ぬか、ふすまや大豆の胚芽などを自ら仕入れて、菌床から自社で生産しています。菌床から自社で作っている所は、全国でもほとんどないですね。
全てを自分たちの手で作ったキクラゲは、肉厚で歯ごたえがプリプリしているのが特徴です。

菌床を作る機械を自社で所有


ナス男:キクラゲ栽培で苦労はありましたか?

喚田さん:それはもう、たくさんありましたね。特に、農薬不使用での栽培なので、2021年に見舞われたキノコバエの大量発生には泣かされました。
まめにハウス内を掃除したり、ダメな菌床を入れ替えたりなどの基本的な対策は当時からやってはいたんですけどね……。

そこでは傷モノになってしまい、一見大丈夫そうに見えるキクラゲにも、卵を産み付けられている可能性があったので、泣く泣く全部の菌床を廃棄しました。

ナス男:それはきつい……。その挫折から、どのように立ち上がったのですか?

喚田さん:私を含め従業員全員が、より危機意識を持って初期発生の発見に注力するようになりましたね。それこそ、日本一環境がいいキクラゲハウスにするくらいに。
キクラゲハウスの掃除をより徹底して、少しでも菌床にカビや虫を見つけたら、まだ新しい菌床だとしても廃棄するようにしました。

まだ使えそうな菌床でも廃棄する徹底ぶり。並々ならぬ意志が伝わってくる

キクラゲを広めるために6次産業化

ナス男:こだわったキクラゲ栽培に加えて、6次産業化にも積極的に取り組まれていると聞きました。6次産業化には、どのような理由があったのですか?

喚田さん:キクラゲって中華料理屋さんに行けば出てくるものというイメージが強い反面、一般の消費者の方には他の料理に使うイメージがないから手に取ってもらいにくいという難点がありました。

そのため、まずは「いろいろな料理やスイーツにも使えるよ!」ということをもっと知ってもらいたかったんです。乾燥機を購入して乾燥キクラゲを作ったり、OEM(外部受注生産)でキクラゲの佃煮を作ったり、加工品にも力を入れています。

ナス男:たしかにキクラゲって、どうやって使ったらいいかイマイチ分からないですものね。
以前私も「きくらげラー油」を買わせていただきましたが、ご飯にのせて食べたら、おいしすぎてすぐになくなっちゃいました!

喚田さん:ありがとうございます! おかげさまでイベントに出店した際などは完売することが多く、好評をいただいています!

パッケージも目を引くキクラゲの佃煮

甘味処の実店舗を構えて、キクラゲ入りわらび餅をPR

ナス男:そしてやっぱり一番インパクトが強いのは、キクラゲを使ったスイーツの実店舗「甘味処よび田屋」ですよね! 開店された経緯を教えていただけますか?

豊川稲荷(いなり)の表参道に実店舗を出店

喚田さん:6次産業化を進める中で、豊川稲荷の表参道に店舗を構えないかという話をいただきました。ご存じの通り、豊川稲荷は全国から人が来る有名な神社。
キクラゲをPRするには持ってこいの立地ですし、地元の人間として、いつかはこの場所に出店したいと思っていた矢先にお話をいただいたこともあり、勢いで店舗を構えることを決めました。

ナス男:かなりの重い決断だと思いますが、実店舗を出すと決断した時の周りの反応はどうでしたか?

喚田さん:キクラゲ生産や加工品などでてんやわんやでしたし、当時私は妊娠中だったんです。当然、従業員さんにはびっくりされましたね!「え、誰が店舗を回すの?」って(笑)。
でも決めてしまったからには、もう気合ですよ!

融資を受けて資金を集めて、急ピッチで開店準備! 2023年末の豊川稲荷の繁盛期に合わせて、なんとかプレオープンにこぎつけました(笑)。

従業員さんも建築関係の方も、私の意図をくんで協力してくれて、本当に感謝しています。
目下の目標としては、店舗で振る舞っているキクラゲ粉末入りのわらび餅を、豊川稲荷の名物にしたいんですよ!「伊勢神宮に行ったら赤福を食べなきゃ!」というのと同じように、「豊川稲荷といえば、よび田屋のわらび餅」と覚えてもらえるくらいに!

キクラゲ粉末入りのわらび餅

女性農業者としての苦労、今後の目標

ナス男:女性農業者として、そして母親として、大変なことも多いと思いますが、そのバイタリティーはどこから来るのですか?

喚田さん:本当に、つくづく農業って大変だなあと感じています。
深夜までキクラゲの出荷調整をする時もあったり、電話やメール対応に追われる日もあったり。

今はまだ5カ月の娘の育児が中心の生活なので、上の子どもたちに時間を作ってあげられないこともあり、家族に申し訳ないと思うこともあります。
それでも、私の思いを理解してついてきてくれる従業員さんがいて、一緒に働いてくれるパートさんや就労支援の方がいて、近くで支えてくれている家族がいる。

売り上げが上がれば、キクラゲのファンも増えるし、就労支援の方の工賃も上げられる。
みんなの期待に応えたいという思いで、日々試行錯誤しながら突っ走ってます!

ナス男:ありがとうございます。最後に、今後の目標を教えてください。

喚田さん:まずは、よび田屋を繁盛させること! あとは、「豊川の名産品といえばキクラゲ!」と言われるくらい、キクラゲの知名度でナンバーワンになること!
キクラゲ栽培を始めた当時から、キクラゲでナンバーワンになると家族に言っているので、ほんとうにかなえたいです。
あ、一緒に働いてくれる仲間も募集していますので、興味のある方はぜひ!

ナス男:お忙しい中、ありがとうございました!

取材協力・画像提供

木耳のお店オンラインショップ

おまけ

ナス男:ところでずっと気になってるんですけど、キクラゲの妖精キャラが出来上がったきっかけを聞いてもいいですか?

喚田さん:キャラではありません!全くの別人です!
まあきっかけとしては、イベントでキクラゲを手に取ってもらいたかったからですね。
人間の喚田恵子が売り込みするより、キクラゲの妖精けっぴーの方が企業の方や消費者の方からものすごく反響があって!
メディアにもたくさん取り上げてもらえるようになり、「みんなに求められているのはキクラゲの妖精けっぴーだ!」ということで誕生しました。

キャラではないので、みんながスーツのお堅いイベントでも、この姿です。

キクラゲの妖精けっぴーと喚田さんは、似ているようで別人らしい


ナス男:な、なるほど。失礼しました!

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