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捨てるものをお土産に変身! 農家の可能性を広げる起業家の挑戦

捨てるものをお土産に変身! 農家の可能性を広げる起業家の挑戦

和歌山県の特産品であるミカン。その栽培過程で生じる廃棄物を使って作られた「みかんくれよん」がリリースされました。開発したのは、一次産業の課題解決に取り組むベンチャー企業、株式会社はまさとです。開発の背景や商品に込めた思い、はまさとが今後取り組んでいきたいことについて、代表取締役の南村真衣(みなみむら・まい)さんに聞きました。

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「みかんくれよん」とは

「みかんくれよん 」は和歌山県の特産品であるミカンの栽培過程で生まれる皮や剪定枝(せんていし)などを使って作られています。全部で5色あり、1年間のミカン栽培の過程を表しています。
夏、間引かれる摘果ミカンを使った「青みかん色」。温州(うんしゅう)ミカンと時期をずらして収穫される雑柑(晩柑)であるジャバラを使った「じゃばら色」。加工品を作る時に出る、完熟ミカンの皮を使った鮮やかな「完熟みかん色」。冬、収穫前に木の健康を保つためにカットされた剪定枝の「みかんの枝色」。役目を終えた木は炭となって畑に戻ることを表した「みかんの炭色」です。

原材料はすべて自然由来。万が一、子どもが口に入れてしまっても安心です。
クレヨンの制作に必要な資金を募るため、クラウドファンディング にも挑戦。100万円以上の支援が集まりました。今後は和歌山県のお土産としても販売を予定しています。
南村さんは「みかんくれよん」を開発したことで「農家さんの営業活動が活発にできることがわかった」と言います。
「今まで農家さんが作ってきた加工品はジュースやジャムなどが多く、食品かその他加工品の売り場に置くことしかできなかったそうなんです。『みかんくれよん』を開発したことで、例えばジュースとクレヨンをセットにして『入学おめでとうセット』を作り、雑貨屋さんにも提案しに行けるようになりました」
さらに、商品の情報だけでなく「これまで廃棄してきたものをアップサイクルできないか」という相談も集まるようになってきたといいます。南村さんは今後もアップサイクルのものづくりにチャレンジし、農家の副業支援につなげていきたいと意気込みを語ります。

発案者は現役の会社員

南村さんは、和歌山市の繊維機械のメーカー「島精機製作所」から出向起業という形で株式会社はまさとを設立しました。きっかけは島精機製作所で勤務していた頃に「社内新規事業創出プログラム」が始まったこと。南村さんはプログラム発足当初、運営事務局のメンバーを務めていました。社内での公募を取りまとめる中で南村さんの中でもやりたい事業が徐々に明確になり、その後自身でも社内新規事業の立案に挑戦。県内一次生産者のサポート事業を目的とした事業を志し、最初に取り組んだのが和歌山県内の一次産品産直販売ECサイト「5STAR MARCHE(ファイブスターマルシェ) 」の立ち上げです。

「もともと一次産業に参入したいという思いはありました。和歌山県はミカンの収穫量が日本一 。ほかにも柿や梅などさまざまな果物が栽培されています。ただ、新たに農業をやるのでは、今いる農家さんと戦うことになってしまうと思いました。そこで、農家さんの販売を支援しようと考え、ECサイトを立ち上げました」
「きっとたくさんの農家が参加してくれるだろう」と思って始めた南村さんですが、最初は4軒しか集まらなかったそう。農家にとっては個人向けに販売するための規格を用意するのが手間だったり、そもそも既存の販路で経営が成り立っているため新しいことに挑戦しようとする農家が少なかったりと、さまざまな課題がありました。販売についてアドバイスしたり、販促のサポートをしたりと地道な試行錯誤を重ね、現在は62軒の農家が登録するまでになりました。

ECサイトが軌道に乗って農家との信頼関係も築くことができ、販売以外の課題を相談されることが増えていったという南村さん。社内新規事業の枠を超えてフルコミットで挑戦したいと思い、はまさとを立ち上げます。初の自社製品が「みかんくれよん」でした。
「剪定したミカンの枝はこれまで廃棄していたが、何かに使えないか?」「ドライフルーツを作るための機械を購入したけど、1年のうち約2カ月しか稼働しない」といった相談を受け、クレヨンの商品開発に至ります。「生産者は自分たちが作ったものから、子どもが使うものが作られることをすごく喜んでくれた」と南村さんは振り返ります。
「昔は畑に遊びに来る子どもがいましたが、最近は減って子どもが農家の仕事を全然知らないそうなんです。有田(ありだ)はミカンの一大産地なのに、ミカンの花がどんなものかも知らない。でもクレヨンを通じて、農業を身近に感じてもらえたらすごくうれしいと。例えば『青みかん色』を使うとき、『夏にチョキチョキとハサミの音がしたら、それは青みかんを間引いてるんだ』と想像してもらえるとか。そういう1年を描ける商品にしたいと考えて設計しました」

CSAで持続的な地域支援を目指す

はまさとの事業 は「5STAR MARCHEの強化」「生産副産物・廃棄物のアップサイクル」のほか、「企業支援型CSA(地域支援型農業)/小規模生産者向け輸出プラットフォーム構築」を柱としています。
現在は企業の協賛を得て、過疎地域の耕作放棄地にレンゲソウをすき込み「れんげ米」を栽培する農家のチャレンジをサポートしています。
「県内外の企業さんと一次産業との関わりについて調査する中で、CSRの予算を確保しても使いきれなかったり、余った分をとりあえず寄付してどうにか使い切ったりするケースがあることを知りました。でもそれだと社員にとって何に使われているのかが見えません。だったらスポンサーとして、地域貢献活動に取り組んでいる人を応援する方がいいのではないかと思いました。
また農業の場合、自然災害の影響も受けますし、有機栽培だと収穫量が安定しないこともあります。CSR費を充てるという考え方なら、成果よりも『その取り組みに協力する』というプロセスが重視されます。今はスポンサーを集めて、企業支援型CSAの仕組みを作っているところです。5STAR MARCHEがBtoCのマッチングだとすれば、企業支援型CSAはBtoBのマッチングに近いですね」

社内新規事業で取り組んできた「販売支援」から、さらに広げて出向起業し、新たなアプローチで一次産業の課題解決を目指す南村さん。「みかんくれよん」はその第一歩。今後のはまさとの取り組みに注目です。

(編集協力:三坂輝プロダクション)

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