田舎の山林を相続するメリット・デメリット
山林を所有することは、メリットよりもデメリットのほうが大きい傾向にあり、相続してから後悔する方も多くおられます。
そのため、資産が手に入るからと後先考えずに相続するのではなく、デメリットもしっかり把握して、後悔のない選択をできるようにしましょう。
山林を相続するメリット
田舎の山林を相続するメリットは、山林の売却や貸し出し、活用事業などによって、収益化できる可能性があることです。
例えば、山に生えている樹木を生かした林業や、キャンプ場経営、太陽光発電の場としての活用などが挙げられます。うまく経営できれば定期的な副収入につながり、山林の立地や状態によっては、好条件で売却できる場合もあるでしょう。
また、売却・活用が難しい場合でも、別荘の建築や山菜栽培、自分専用のキャンプ場にするなど、私有地や趣味として活用することも可能です。
将来的な収益化の見込みや活用予定があれば、相続を検討する価値は十分あるといえるでしょう。
山林を相続するデメリット
田舎の山林を相続するデメリットには、例えば以下のような点が挙げられます。
- 不動産としての価値は低く、売却・収益化が難しい
- 維持管理にかかる労力・コストの負担が大きい
- 土砂崩れや不法投棄などのリスクがある
山林は通常の土地と比べて非常に安く、田舎にある山林の売却相場は1平方メートルあたり100〜300円ほどとされています。不動産としての価値は低く、買い手や貸し手が見つかったとしても、ほとんど利益が出ないケースも珍しくありません。
また、山林には土砂崩れや不法投棄などのリスクがつきものです。状態を維持するためには、定期的に足を運び、清掃や除草、間伐などの管理をおこなう必要があります。専門業者に任せれば手間はありませんが、依頼料は高額になることが予想されるでしょう。
このように田舎の山林は、通常の不動産と比べても所有しているだけで大変な労力やコストがかかる「負の遺産」となるリスクを持っています。収益化の見込みや活用予定がない場合は、相続放棄も視野に入れるべきでしょう。
山林の相続が発生した際に取れる選択肢
山林の相続が発生した際、取れる選択肢は以下の通りです。
- 相続しない(相続放棄)
- 相続して売却・活用
相続前には相続放棄が、相続後には売却・活用が可能となります。
相続しない(相続放棄)
相続する山林のデメリットが大きい場合は、「相続放棄」することをおすすめします。
相続放棄とは、相続財産に対する法的責任を拒否することを指します。相続を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述して受理されれば、面倒な相続手続きや負債を抱えるリスクを避けることが可能です。
相続放棄する場合にはさまざまな注意点があり、例えば以下のような点が挙げられます。
- 全ての財産を相続放棄することになる
- 申請できるのは相続開始から3ヵ月以内
- 死亡保険金などの非課税枠が使えない
- 相続放棄後は相続人には戻れない
- 相続放棄後は後順位に相続権が移る
- 次の相続人に引き渡すまでは管理義務が残る
特に、全ての相続財産を放棄することになる点は要注意です。いらない山林だけを放棄することはできないため、他に相続財産がある場合は、バランスや利益を考慮して検討する必要があります。
引用:裁判所「相続の放棄の申述」
引用:法テラス「相続放棄とは?」
相続して売却・活用
相続した山林の立地や状態によっては、好条件での売却や事業活用ができる可能性があります。
ただし、田舎の山林は需要が少ないため買い手やビジネスアイデアが限られており、見つかったとしても大きな利益は望めないケースがほとんどです。
そのため、収益化目的ではない活用方法を検討することをおすすめします。専用キャンプ場にしたり山菜栽培を楽しんだりと、趣味として山林を利用すれば、家族との時間や一人での休息が充実するでしょう。
ただ、活用しないのであれば、所有し続けるコストや負担を考えて、利益が少なくても売却したほうが放置するよりは断然良い選択肢といえるでしょう。
山林売却の主な相談先としては、以下のような機関・サービスが挙げられます。
- 地元の森林組合
- 不動産会社・買い取り業者
- 山林売買マッチングサイト
もし山林を売却する際は、リビンマッチのような不動産一括査定サイトを利用するのがおすすめです。
リビンマッチであれば、全国約1,700社の不動産会社の中から売却する不動産に適した不動産会社を紹介してもらえます。
山林の売却を検討されるなら、まずリビンマッチを利用してみてはいかがでしょうか。
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山林は相続すべき? 相続放棄の判断基準
田舎の山林を相続放棄する場合、上述したように全ての相続財産を放棄することになるため、他の資産も含めた相続財産全体のバランスを考慮して判断する必要があります。
全ての遺産を相続した際に、マイナスとなる負債よりも、プラスとなる資産のほうが大きい場合は、基本的には相続することをおすすめします。
反対に資産よりも負債のほうが大きい場合や、山林の相続税や固定資産税、維持管理にかかる費用でマイナスになる可能性がある場合は、相続放棄を検討すべきでしょう。
とはいえ、相続や山林についての知識を持たない方が、山林の価値を適切に判断することは難しいのが現実。そのため、一人で悩むのではなく、相続の専門家に相談しながら進めていくのがおすすめです。
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山林の相続税・固定資産税はいくらかかる?
田舎の山林相続を検討するにあたり、山林にかかる相続税や固定資産税の金額は、大きな判断材料となります。そのため、あなたが相続する予定の山林にかかる税金はいくらなのか、しっかり把握しておきましょう。
ここでは、山林の相続税・固定資産税はどのように評価するのか、またどの程度かかるのかを具体的な計算例を用いて解説します。
山林の相続税の評価・計算方法
山林の相続税評価方法は区分によって異なり、以下のように「倍率方式」と「宅地比準方式」の2通りに分けられています。田舎に多く見られる純山林や中間山林の場合は「倍率方式(相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率)」を用いて、おおよその相続税を調べることが可能です。
例えば、相続予定の山林が固定資産税評価額100万円・評価倍率4.0倍だった場合、計算式は【100万円×4倍=400万円】。したがって、この山林の相続税評価額は約400万円となります。
なお、計算に用いる固定資産税評価額は、毎年交付される固定資産税納付書に記載されています。宅地とした場合の金額や造成費、評価倍率は地域や地目ごとに定められており「国税庁 路線価図・評価倍率票」から確認可能です。
参考文献:国税庁「山林及び山林の上に存する権利」
山林の固定資産税の評価・計算方法
固定資産税とは、山林や土地などの不動産所有者が、年に1度納付する必要がある税金です。山林の固定資産税は【固定資産税額 = 固定資産税評価額× 1.4%(標準税率)】の計算式で算出可能です。
例えば、相続予定の山林が固定資産税評価額100万円だった場合、計算式は【100万円×1.4%=1.4万円】。したがって、この山林の固定資産税額は年1万4000円となります。
なお、計算に用いる固定資産税評価額は、1平方メートルあたりの公示価格の70%を目安に、市町村によって決定されています。ただ、田舎の山林では公示価格がないケースも多く、通常の土地と比較すると評価額はかなり低めです。
また、固定資産税評価額が30万円以下の場合、固定資産税は非課税になります。面積の小さな山林であれば、固定資産税が免除される可能性は高いといえます。固定資産税評価額は、毎年交付される固定資産税納付書で確認可能です。3年に1度評価替えがおこなわれるため、しっかり確認しておきましょう。
参考文献:総務省「固定資産税の概要」
山林を相続する手続きの流れ2ステップ
ここからは、山林の相続を決めた方に向けて、相続手続きの流れを解説します。
山林を相続した際に必要な手続きは、以下の2ステップです。
- 法務局での相続登記
- 市町村長への届出
1.法務局での相続登記(名義変更)
まずは、山林の所在地域を管轄する法務局にて、相続登記をおこないます。相続登記とは、所有者を被相続人から相続人に名義変更する手続きです。
山林の登記申請時には、山林の固定資産税評価額の0.4%にあたる登録免許税の納付と、以下のような書類が必要になります。
- 被相続人の戸籍謄本・住民票の除票
- 相続人の戸籍謄本・住民票
- 固定資産税評価証明書
- 遺産分割協議書・遺言書など
また、2024年(令和6年)4月1日以降は不動産登記法の改正により、所有権取得を知った日から3年以内の登記が義務付けられます。違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性があるためご注意ください。
参考文献:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」
2.市町村長への届出【90日以内】
山林を相続した場合は、面積にかかわらず、市町村へ届出をすることが森林法により義務付けられています。市町村への届出には、以下のような書類が必要です。
- 森林の土地の所有者届出書
- 土地の位置を示す図面
- 登記事項証明書
- 遺産分割協議書など
なお、提出期限は、被相続人が亡くなった日から90日以内とされており、遺産分割がされていない場合でも期限内の提出が必要です。期限内に届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。
参考文献:
農林水産省「森林の土地の所有者届出制度」
農林水産省「森林の土地の所有者届出制度の概要」
田舎の山林相続は専門家の無料相談を活用して考えよう
本記事では、田舎の山林を相続するメリット・デメリットや判断基準、山林にかかる相続税・固定資産税や手続きの流れなどを解説しました。山林の相続には、子や孫世代まで続く負の遺産となる可能性もあるため、あらゆるケースを想定して決断する必要があります。
しかし、相続や山林に関する知識を持たない方が、一人で適切な判断を下すことは難しいのが現実です。そのため、一人で悩むのではなく、相続の専門家に相談しながら手続きを進めることをおすすめします。
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