カミキリムシとはどのような虫?
カミキリムシ、別名テッポウムシとも呼ばれ、コウチュウ目カミキリムシ科に分類される甲虫の総称です。漢字では「天牛(てんぎゅう)」や「髪切虫」と表記され、英語では「longicorn beetle」といいます。
木に穴を開ける習性があり、全世界で約2万種、日本国内だけでも800種が確認されています。成虫は植物の花、花粉、葉、茎、木の皮、樹液などを食べることから、林業や農業分野では害虫として知られています。
カミキリムシの天敵
詳細は後述しますが、カミキリムシにはたくさんの種類が存在し、一概に何が天敵とも言い切れません。それでも、少なくとも虫を捕食する野鳥はカミキリムシにとって最大の敵と言えるでしょう。
特にキツツキの仲間はカミキリムシを好んで食べることが知られています。また、一部の糸状菌(カビ)がカミキリムシに感染することを利用して、生物農薬として使われる事例もあるようです。
カミキリムシは毒をもっていない
おどろおどろしいフォルムと、派手な色合いから、カミキリムシは毒を持っていると誤解されがちです。しかし、カミキリムシは毒を持っておらず、自分から人に対して攻撃を仕掛けることもありません。ただし、かむ力が強力で、種類によっては約1トンもの咬合力を持っていることも。防除の際に触るときは注意しましょう。
カミキリムシが発生する原因とは?
畑や庭の厄介者であるカミキリムシ。
発生原因や、発生しやすい時期を知っておくことで、あらかじめ対策を立てることができます。
また、カミキリムシは種類によって好む植物が異なります。どういった植物にどんな種類のカミキリムシがつきやすいのか、知っておくと良いでしょう。
発生する原因
カミキリムシは明かりに寄ってくる性質を持っています。家庭菜園など、街灯の明かりが目立つところや、家からの明かりが漏れるところでは近寄ってきやすいので特に注意がいるでしょう。
また、カミキリムシは樹皮や茎葉のほか、花の蜜も好む種類がいるため、庭木や果樹、花壇などがある菜園では発生しやすいと言えるでしょう。
発生しやすい時期
カミキリムシは木の中で幼虫が育ち、5月~6月に成虫に羽化します。羽化すると木の幹から成虫が続々と現れるので、成虫の防除はこの時期に行いましょう。
また、成虫は6月~10月にかけて交尾を行い、木の幹の中に卵を産み付けます。
まとめると、カミキリムシは5月から現れ始め10月ごろまで残るので、この時期が発生しやすい時期と言えるでしょう。
カミキリムシの種類別、発生しやすい植物
カミキリムシの種類別に、発生しやすい植物をまとめました。
それぞれどのような特徴があるのかも簡単に解説しますので、見分け方の参考にしてください。
キクスイカミキリ
キクスイカミキリは、キク科の植物に被害を与えることからその名がついています。成虫は主にキク科植物の茎や葉を食べることが知られており、幼虫は植物の内部を食べながら成長し、植物を枯らしてしまいます。表面に成虫が見えず、一見なんともないのに植物が枯れてしまったらこの虫に要注意です。
この虫は4月~6月になると発生します。黒く細長い形をしており、背中に赤い点があるのが特徴です。
ゴマダラカミキリ
ゴマダラカミキリは日本の固有種で、体に点状の模様(ゴマダラ模様)があることからこの名前がついています。成虫の体長は約25ミリから35ミリ程度で、体色は一般に黒基調に白や黄色の斑点が散らばっていることが特徴です。
主な発生時期は、幼虫は7月〜4月、成虫は5月〜7月で、柑橘類の害虫として知られているほか、イチジク・桜・リンゴなども好んで食害します。
ルリカミキリ
ルリカミキリの名前は美しい瑠璃色(青色)の体をしていることから来ています。成虫の体長は9~11ミリと小さく、幼虫のうちは木の幹内で、木を食べて成長します。主な発生時期は4月~10月で、生け垣として植えられるカナメモチ、セイヨウカナメ、果物ではリンゴ、ナシ、桃に集まります。
カミキリムシを駆除する方法
カミキリムシを駆除する方法について、成長段階ごとにまとめました。
それぞれ詳しく解説していきます。
卵の駆除
カミキリムシは木の幹の中に卵を産み付けます。そのとき、樹皮に10~20ミリの丸い傷がつきます。また産卵部は樹液や樹皮の変色があることが多いので、よく観察して見つけましょう。卵には農薬などが効きづらいので、道具を使ってこそぎ落とすと良いでしょう。
幼虫の駆除
幼虫は木の幹に開けた穴の中で成長します。駆除方法は簡単で、穴の中に針金など細長く硬い棒を挿し込んで、突き刺して殺してしまいましょう。また、園芸用のキンチョールなど、カミキリムシの駆除に使える農薬を、穴に向けて噴射しても良いでしょう。
成虫の駆除
成虫の駆除では防虫ネットなどで近寄ってくるカミキリムシの総数を減らしつつ、農薬を散布するのがもっとも効果的です。
また産卵を予防するため、薄めたお酢や草木灰を散布するのも良いでしょう。
カミキリムシの幼虫を防ぐために効果的な対策
病害虫防除において最も大切なのは、被害を未然に防ぐこと。つまり、しっかりした予防が重要です。カミキリムシを作物や樹木に近づけないための、効果的な予防方法を三つ解説します。
防虫ネットを使う
防虫ネットやトンネルネットを使って、カミキリムシの成虫を近づけないことも効果的な予防方法です。
プランター栽培では防虫ネットを、地植え栽培ではトンネルがけを行って、成虫に食害されたり、産卵されたりするのを防ぎましょう。
雑草をこまめに刈る
作物を育てているエリアの雑草はこまめに手入れを行いましょう。
カミキリムシのほか、害虫や病気の原因菌は、雑草の生い茂ったところを好みます。
雑草をこまめに刈り、そもそものすみかをなくすことで、発生数を抑えることができます。
樹勢を強くし弱った枝は剪定(せんてい)する
カミキリムシは、樹勢が弱く抵抗力の低い木に卵を産み付けます。
樹勢の弱っている木には、肥料を与えたり、日当たりを良くしたりなど、手入れの方法を変えてみましょう。
なお、枯れ枝は病害虫発生の原因になります。見つけたら放置せず、取り除きましょう。
また、定期的に木のうろや穴の中に幼虫が潜んでいないか確認するのも良いでしょう。
作物や樹木がカミキリムシの被害に遭った場合の対処法
庭木や果樹がカミキリムシの被害を受けた場合の対処法について解説します。
木の被害を確認する
カミキリムシの被害に気づいたら、まず木全体を見回してどれほどの被害が出ているか確認しましょう。
木の健康状態はどうか。被害箇所はいくつあるのか。また、被害を受けた木の経済的な価値も鑑みて、治療するのか、切り倒すのか、どちらの対処をするのか決めましょう。
被害が軽度の場合
被害を受けた箇所が少なかったり、枝のみだったりした場合は、その部分を剪定しましょう。切り落とした枝や被害箇所は、圃場の外で処分して、カミキリムシが逃げないように注意してください。
剪定後は水やりや施肥を行って樹勢の回復に努めましょう。
また、剪定したあとの切り口には、トップジンMペーストなどの癒合剤を塗って、切り口を保護しましょう。
被害が重度の場合
もし樹木全体に被害が広がっている場合は、樹木医や専門家に相談するのも良いでしょう。
被害が重度だと、木を切り倒さなくてはいけないかもしれません。
木を切り倒す場合は、他の木にカミキリムシが移るのを予防するためにも、切って放置せず、すぐに圃場の外でチッパーにかけたり、燃やせる場合は燃やすなどして処分したほうが良いでしょう。
発生を予防して、カミキリムシの被害を抑えよう
樹木を食い荒らすカミキリムシ。一度大量に発生してしまうと、被害を抑えるのは困難になってしまいます。
雑草を定期的に除草して発生を予防すること、ネットを使ってカミキリムシを寄せ付けないことが重要です。見つけ次第捕殺する、スプレー、殺虫剤などを使って駆除するなど、さまざまな方法を組み合わせて被害を抑えましょう。
樹木を食害するという点から、一般家庭ではあまり関係ないと思いがちですが、サクラや柑橘類など、庭木としてもよく植えられている木にもカミキリムシは発生します。油断せずに、本記事を参考にしてカミキリムシの防除に挑戦してください。