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農地を相続したら行う手続き方法 登記・届出の書類、相続放棄の流れも解説

Maya Fukuoka

ライター:

農地を相続したら行う手続き方法 登記・届出の書類、相続放棄の流れも解説

農地を相続する際には「法務局への相続登記」と「農業委員会への届出」の2種類の手続きを行う必要があります。

また、農地相続後に農業を続けるか続けないかによって、その後に取れる選択肢が大きく異なるため、相続後の未来も見据えて今のうちから準備しておくことをおすすめします。

本記事では、農地相続の手続き方法や必要な書類・費用、相続放棄の流れなどを詳しく解説します。

農業を継続する場合に相続税が実質免除になる制度や、農業をしない場合の選択肢も紹介していますので、農地を相続予定の方はぜひ最後までご覧ください。

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農地を相続する際の手続き2ステップ

農地を相続する際には、以下二つの手続きを行う必要があります。

  • 法務局での相続登記(名義変更)
  • 農業委員会への届出

それぞれに必要な書類や費用、申請期限も詳しく解説しますので、ぜひ手続きを行う際の参考にしてください。

農地の相続手続き1:法務局での相続登記(名義変更)

まずは、農地の所在地を管轄する法務局にて、農地の所有権取得を知った日から3年以内に相続登記を行います。

相続登記とは、農地所有者を、被相続人から相続人に名義変更する手続きです。相続登記を怠ると、相続した農地の所有者が不明瞭となり、以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 農地の売却ができず、不動産を担保にした融資も受けられない
  • 将来的にその農地の遺産分割協議が難航し、相続トラブルに発展する
  • 共同相続人に借金がある場合、その農地が差し押さえられる

将来的なトラブルを未然に防ぐためにも、農地相続後には必ず相続登記を行いましょう。

相続登記の必要書類・費用

農地の相続登記に必要な書類・費用は以下のとおりです。

必要書類 取得費用 取得場所
被相続人の戸籍附票 300円/1通 本籍地の役所
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本または除籍謄本(遺言書がある場合は、被相続人の死亡がわかる戸籍謄本または除籍謄本のみで可) 450〜750円/1通
相続人全員の戸籍謄本(遺言書がある場合は、相続する人の戸籍謄本のみで可) 450円/1通
相続人全員の印鑑証明書 300円/1通 現住所の役所
農地を相続する人の住民票 300円/1通
農地の固定資産評価証明書 300円~/1通 農地がある地域の役所
登記申請書 専門家に依頼する場合は5〜8万円ほど 自作または専門家へ依頼
遺産分割協議書(遺言書) 専門家に依頼する場合は3〜5万円ほど

また、登録免許税として「固定資産税評価額×0.4%」の支払いが必要になります。

相続登記は自分で行うことも可能ですが、遺産分割協議でもめているケースなどでは、特に多くの書類と時間が必要になり、また精神的にも大きな負担がかかることでしょう。

そのため、一人で抱え込まずに専門家のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。

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参考文献:法務局「相続登記ガイドブック」

相続登記の申請期限

2024年(令和6年)4月1日施行の不動産登記法の改正により、農地の所有権取得を知った日から3年以内の相続登記が義務付けられました。

また、遺産分割協議により農地を取得した場合は、遺産分割協議が成立した日から3年以内が申請期限となります。

正当な理由なく期限内の登記を怠った場合は、10万円以下の過料が科される可能性があるためご注意ください。

参考文献:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」

農地の相続手続き2:農業委員会への届出

相続登記完了後は、各自治体の農業委員会に対して、相続開始を知った日から10カ月以内に農地相続の届出を行います。

農業委員会は、基本的に各市町村に一つずつ設置されていますが、農地面積の大小によっては、農業委員会がない地域や複数ある地域も存在します。

相続した農地を管轄する農業委員会がわからない場合は、市町村役場に問い合わせて確認しましょう。

届出の必要書類・費用

農業委員会への届出に必要な書類・費用は以下のとおりです。

必要書類 取得費用 取得場所
登記事項証明書 480〜600円/1通 法務局
農地法の規定による届出書 無料 農業委員会

届出にかかる費用は、相続登記後に発行する登記事項証明書の費用のみとなります。
必要書類は2種類だけと少なく、作成にも大きな手間はかからないため、農業委員会への届出は自力での手続きも十分可能です。

届出の提出期限

農業委員会への届出は、相続開始を知った日から10カ月以内が提出期限となっています。

相続の開始日は一般的に「被相続人の死亡日」とされており、期間はあまり長くないため、余裕を持って手続きを行いましょう。
期限内の届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。

農業を続ける場合は「相続税の納税猶予制度」が受けられる

農地の相続後、引き続き農業経営を行う場合は「相続税の納税猶予制度」が受けられる可能性があります。

相続税の納税猶予制度とは、被相続人から農地を引き継いだ相続人が、一定要件を満たした場合に相続税の納税猶予を受けられる制度です。
相続人が要件を満たしている間は納税猶予が続き、最終的には猶予税額の納付が免除される場合もあるため、農業を続ける方は積極的に利用しましょう。

以下からは、相続税納税猶予制度の適用条件や免除要件、手続きの流れを見ていきましょう。

相続税納税猶予制度の適用条件・免除要件

相続税納税猶予制度を受けるためには「被相続人」「相続人」「農地」ごとに定められた、以下要件➀~➂のいずれかに該当している必要があります。

被相続人の要件 ➀死亡の日まで農業を営んでいた者
➁生前一括贈与(贈与税納税猶予)をした者
➂死亡の日まで特定貸付けまたは認定都市農地貸付け等をしていた者
相続人の要件 ➀相続税の申告期限(相続開始から10カ月以内)までに農業経営を開始し、引き続き農業経営を行う者
➁生前一括贈与(贈与税納税猶予)を受けた者
➂相続税の申告期限までに特定貸付け、または認定都市農地貸付け等を行った者
農地の要件 被相続人が営農していた、または特定貸付け・認定都市農地貸付け等を行っていた農地で、以下のいずれかに該当する農地
➀相続により取得したもので遺産分割がされている農地
➁贈与税納税猶予の対象となっていた農地
➂相続の年に被相続人から生前一括贈与を受けた農地

また、以下要件のいずれかに該当した場合は、納税猶予を受けた相続税額の免除が適用されます。

  • 農地の相続人が死亡した場合
  • 相続人が後継者に生前一括贈与した場合

納税猶予を受けた農地において、相続人が農業経営をやめた場合などは、納税猶予が打ち切られ、猶予税額の全部または一部と利子税の支払いが必要になるため注意が必要です。

参考文献:国税庁「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」

相続税納税猶予制度の申請手続き・期限

相続税納税猶予制度を受けるためには、「相続税の申告」と「納税猶予期間中の継続届出」の手続きが必要になります。

まず、相続開始を知った日から10カ月以内に、税務署にて相続税の申告を行います。この際、以下の必要書類の提出と、納税猶予額と利子税に見合う担保提供が必要です。

  • 被相続人及び相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書または遺言書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続税の納税猶予に関する適格者証明書
  • 担保提供関係書類

また、納税猶予期間中は、3年ごとに「継続届出書」を税務署に提出する必要があります。

継続届出書を提出しなかった場合は納税猶予が打ち切りとなり、猶予税の全額と利子税を納めることになるためご注意ください。

参考文献:国税庁「相続税の申告の際に提出していただく主な書類」

農業をしない人が取れる農地相続の選択肢

「農地は相続するけど農業経営はしない」「相続トラブルなどで農家を続けられなくなった」という場合は、以下のような方法で農地の活用・処分を検討する必要があるでしょう。

  • 相続放棄できないか見直す
  • 農地のまま売却・貸し出しする
  • 宅地などに転用して売却・活用する
  • 相続土地国庫帰属制度で国に返却する

農地は所有しているだけでもさまざまなリスクや負担が生じ、農業をしない場合には納税猶予制度も受けられないため、相続税が高額になることも予想されます。
そのため、本当に相続放棄できないのか、相続するなら売却見込みや活用予定は立てられるのかなどを、しっかり見直す必要があるでしょう。

なお、農業をしない場合の農地相続については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はあわせて参考にしてください。

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農地を相続放棄する場合の手続き方法・注意点

農地を相続する負担やデメリットが大きい場合は、相続せずに相続放棄することも選択肢の一つです。相続放棄とは、相続財産に対する権利や義務責任を拒否することを指します。

相続開始を知った日から3カ月以内に申請して受理されれば、相続手続きの手間や負債を抱えるリスクを避けられます。

特に農地相続後に農業経営を行わない場合は、相続税の猶予も受けられず、農地法の規制により売却・活用できない可能性もあるため、必ず検討することをおすすめします。

相続放棄の手続きの流れ

農地を相続放棄する場合、相続開始を知った日から3カ月以内に、被相続人が居住していたエリアの家庭裁判所に申述します。

相続放棄の申述に必要な書類・費用は以下のとおりです。

必要書類 取得費用
相続放棄申述書 収入印紙代800円/申述人1人
連絡用の郵便切手 500円ほど
被相続人の住民票除票または戸籍附票 300円
相続放棄する本人の戸籍謄本 450円
その他書類(被相続人の死亡記載のある戸籍・除籍謄本など) 書類による

申述人の続き柄や相続順位によっては、その他の追加書類が必要なケースもあるためご注意ください。

申述を終えると、相続放棄に関する照会書が裁判所から届くので、必要事項を記入して返送します。無事に受理された場合は、数週間ほどで「相続放棄申述受理通知書」が届き、相続放棄手続きは完了です。

参考文献:裁判所「相続の放棄の申述」

相続放棄する際の注意点

相続放棄を行えば、農地の相続手続きや大きな負担を抱えるリスクを避けられるため、農業経営をしない方にとっては非常に良い選択肢となります。

しかし、相続放棄には注意すべき点がいくつもあるため、長期的な視点を持って慎重な判断を下すことが大切です。例えば以下のような注意点が挙げられます。

  • 全ての財産を相続放棄することになる
  • 申請できるのは相続開始3カ月以内
  • 相続放棄後の撤回は原則できない
  • 死亡保険金・退職金の非課税枠が使えない
  • 相続放棄後は後順位の人に相続権が移る
  • 次の相続人に引き渡すまでは管理義務が残る
  • 相続人全員が放棄した場合は管理人を選任する必要がある

特に「全ての財産を相続放棄することになる」点と、「相続放棄後の撤回は原則できない」点に注意しましょう。

農地の価値や維持管理にかかる負担、その他全ての相続財産をしっかり把握し、資産と負債のバランスを考慮した判断を下す必要があるのです。

しかし、相続放棄に際して、相続や農地の知識を持たない方が適切な判断をすることは難しいのが現実です。そのため、専門家に相談しつつ検討することをおすすめします。

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農地の相続手続きはプロに相談しながら効率的に進めよう

本記事では、農地相続の手続き方法や必要な書類・費用、相続後に取れる選択肢や相続放棄の流れなどを解説しました。

農地を相続する際には「法務局への相続登記」と「農業委員会への届出」の二つの手続きが必要です。

また、相続後に農業を継続する場合は「相続税の納税猶予制度」を利用できる可能性があり、農業をしない場合には「相続放棄」や他の選択肢を検討する必要があります。

相続開始を知った日からの期限がそれぞれ設定されているため、スケジュールに余裕を持って準備を始めましょう。

なお、農業委員会への届出は自力でも手続き可能ですが、相続登記・相続税納税猶予制度・相続放棄の三つは自分一人で行うのは非常に大変な手続きです。そのため、農地相続の専門家によるサポートを受けながら進めることをおすすめします。

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