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「あなたの本当の強みはこれです」、農家の挑戦を応援するデザイナーの提案

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

「あなたの本当の強みはこれです」、農家の挑戦を応援するデザイナーの提案

農産物をブランド化しようと思うと、パッケージのデザインやロゴをどうすべきかが課題になる。デザイン次第で、商品の印象が変わる可能性もあるからだ。農業分野を主な対象にデザインの仕事を手がけるアグリエール(東京都台東区)の代表、浅野恭弘(あさの・のりひろ)さんに取材した。

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被災した故郷を見て農業へ関心

もともと浅野さんはブランディングからデザインまで手がけるTOYBOX(トイボックス、東京都台東区)で働いていた。大手飲料メーカーなどを顧客に持つ会社だ。そこに約10年勤めた後、独立して株式会社アグリエールを設立した。両社はいまも仕事で連携する関係にある。

独立のきっかけは、西日本に深刻な被害をもたらした2018年の集中豪雨。被災した故郷の愛媛県を訪ねた浅野さんは、復興が進まない様を目の当たりにして、仕事を通して何かふるさとの力になれないかと考えた。

浅野恭弘さん

浅野恭弘さん

そのとき地元の人と交流する中で、テーマとして浮上したのが農業だった。収益性の低さや担い手不足などさまざまな課題を抱えている一方、課題を乗り越えようとたくさんの人がチャレンジしていることを知った。

浅野さんは当初独立する考えはなく、TOYBOX社の新規事業にするつもりだったが、模索するうちにプランが変わった。会社が期待するようなデザイン料を、農家は負担できないかもしれないからだ。独立した方が、農家向けの仕事を引き受けやすくなると判断した。

2020年の新型コロナの流行で、会社の仕事が大幅に減ったことも、浅野さんの背中を押した。「これを機会に自分で新しいことをやってみよう」。そう決意し、アグリエールを立ち上げた。2021年5月のことだ。

商品の信頼感を表現するデザイン

浅野さんは独立して以降、農業法人や農業分野に参入した企業などを相手に10数件のデザインを手がけてきた。その制作のプロセスをたどっていくと、ブランディングにとって何が大切なのかが浮き彫りになる。

その一つが、養豚の加須畜産(埼玉県加須市)だ。同社は畜産物の加工・販売会社などに原料の豚肉を提供して事業を伸ばしてきた。自社ブランドの商品もつくりたいと考え、浅野さんにブランディングやデザインを発注した。

浅野さんは加須畜産との打ち合わせを通して、同社が高い飼育技術を持ち、手間をかけて豚を育てていることを知った。それが販売先への信頼にもつながり、長期的な取引につながっていることを理解した。

加須畜産のために作成したデザイン

加須畜産のために制作したデザイン(画像提供:アグリエール)

加須畜産へのヒアリングを踏まえて、キーワードとして浮かび上がったのが「しっかりしている」や「信頼感」。それを表すために、「伝統」をイメージさせるデザインにしようと考えた。選んだモチーフは西洋の紋章だ。

ブランド名を「花咲牧場」にすることはあらかじめ決まっていた。そこで豚や花の線描のイラストの下に「HANASAKI PORK」と書き、それを円形の帯でぐるっと囲んでエンブレムのようなデザインに仕上げた。

さらに表現を試みたのが、商品の「手づくり感」。

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