福島県大玉村のちょうど良い“田舎感”と多彩な農作物が育つ環境
福島県の中央部に位置する大玉村は、日本百名山の一つ、安達太良山の裾野に広がる人口約8,700人の小さな村です。日本の原風景が広がる農村地帯では、肥沃な土壌と豊富な水資源、寒暖差の大きい気候を生かし、コシヒカリをはじめとした高品質な米の他、野菜、イチゴ、ソバ、和牛、果樹と多彩な農畜産物が育まれています。
地理的に見ても福島県随一の商業都市・郡山市から車で30分の好立地にあり、田舎らしくも閉塞感や生活インフラの不便さがないことが大玉村の特徴です。また、大玉村の美しい景観と子育て支援の充実などにより、昭和50年から45年間人口が増え続けています。14歳以下の年少人口比率は県内トップです。
任期3年の中で就農計画をしっかり立てることができる大玉村地域おこし協力隊
多彩な農畜産物の産地である大玉村では、農業分野における地域おこし協力隊を募集しています。新規就農においては、一定期間研修を受けた後、作付け品目を決め、計画書を事前に立ててから就農をするのが一般的です。しかし、短期間の研修では自分にどの作物があっているのか、営農スタイルは独立、雇用、兼業、どれが向いているのかを把握するのは難しいのが実情です。いざ、就農をしてみたけれど理想と現実とのギャップに悩む人も少なくありません。
そこで大玉村では、地域おこし協力隊の任期3年間をかけて自分らしい営農スタイルを見つけてほしいという思いから、あえて作物を限定しない方法で隊員を募集。隊員は地域農業に携わりながら大玉村農業振興公社の業務を担い、受け入れ先農家で農業のノウハウを学びます。
「地域に溶け込みながら自分らしい農業を見つけ、一緒に就農計画を立てることを目的としています。こうすることで定住を促し、就農後のミスマッチを防ぐ狙いがあります」と、話すのは大玉村農業振興公社の遠藤 和弥(えんどう・かずや)さんです。農家を支援する公社の事業を担うことでさまざまな視点から地域農業を学ぶことができるのも、大玉村ならではの地域おこし協力隊制度と言えます。
その大玉村で和牛の繁殖農家を営んでいるのが鈴木 宏尚(すずき・ひろなお)さんです。若手畜産農家として地域の畜産業を牽引する鈴木さんに、畜産業のやりがいについてお話を伺いました。
副業で畜産に携われるシステムを作り、和牛を“育てる”喜びを共有したい!
現在、29歳の鈴木さんは23歳で祖父が営む繁殖農家を継承しました。高齢であることや後継者がいないことで離農を考えるようになった祖父の思いを知り、家業を潰したくない思いで脱サラをして就農。家畜市場でアルバイトを積みながら畜産を学び、現在は繁殖用の母牛21頭と生まれた子牛6頭を飼育しています。
「家業と言っても畜産に関しては知識も経験もゼロだったので、就農当時はとにかく勉強の日々でした。県内外の畜産農家と積極的に交流し、血統構成や飼育方法など情報収集に努めました。それは就農7年目を迎えた今も変わりません。なぜならどれだけ情報を持っているかが畜産経営を左右するからです」
高齢や担い手不足に加え、資材高騰から利益を出せず、離農する畜産農家が後を立たない昨今、次世代の畜産農家を育てることは急務です。鈴木さんはこの危機的状況を救うべく、今後は就農を志す地域おこし協力隊や新規就農者の受け入れ先農家になる予定です。
「自分が努力し、頑張ることは大前提。その上で今、考えているのが新しい畜産業のシステムです。生き物相手の畜産は365日、休みがないことが実情ですが、例えば繁殖牛1頭でも利益が出せる仕組みであれば副業でも畜産に携わることができます。規模拡大ではなく、担い手の分母を増やすことがこれからの畜産を支えると考えます」
鈴木さんは畜産業の魅力を「手をかけてきたことが結果に出ること」と、話します。結果とは子牛がいくらで売れたかということであり、高値で売れた時はそれまでの苦労や努力が報われると言葉を続けます。
「飼育環境や餌の配合、量、血統構成を考えた人工授精などさまざま要因が重なり、子牛の価値は決まります。そのためにも情報収集は必要不可欠。畜産はすぐに結果が出ない難しさはありますが、手をかけ、努力した分だけ牛は応えてくれます。新たな担い手と育てる楽しさを共有し、共に大玉村の畜産を盛り上げていきたいですね」と、抱負を語る鈴木さんが“師匠”として慕っている方がいます。その名も鈴木 廣直(すずき・ひろなお)さん。漢字は異なりますが鈴木さんの名前は廣直さんからいただいたそうです。
全国肉用牛振興基金協会が主催する肉用牛枝肉共励会で農林水産大臣賞、全農肉牛枝肉共励会では最高位の名誉賞と、これまで数々の賞に輝いた経歴を持つ廣直さんは、鈴木さんにとって人生の師としても尊敬する存在です。ベテランから若い世代と、幅広い年代のファーマーが活躍する大玉村は、新規就農者をさまざま視点、経験で就農へと導く環境が整っています。
伝統を守りつつ、新しいことにもチャレンジしていきたいという鈴木さんの挑戦はまだ始まったばかり。今後の活躍に期待が寄せられます。
中山間地の土地利用を実現したい。現・地域おこし協力隊員に聞く、大玉村の魅力
現在、大玉村で就農を目指し、地域おこし協力隊として活動しているのが飛田 惟織(とびた・いおり)さんです。茨城県出身の飛田さんの実家は水稲と干し芋を手掛ける農家ですが、大玉村で水稲とソバを栽培する祖父が離農すると聞き、この地にやってきました。
「現役大学院生の私は、大学院には受かったものの、その先のことを考えられずにいました。そんな時、毎年数回訪れていた大玉村での暮らしを思い出し、農業を通じて、祖父の農場を継承・発展させたいと思ったことが移住のきっかけです」
大学院生としてメタン発酵システムなどの研究をしながら大玉村への移住を決意した飛田さんは、情報収集をする中で同村の地域おこし協力隊募集を目にします。自身の就農はもちろん、大玉村のこれからの農業を考えるまたとないチャンスと捉え、隊員に就任。現在は大玉村農業振興公社の事業を担いながら祖父の畑を手伝い、自身が目指す農業を模索中。1日も早い就農を目指しています。
「もともとルーツがあった大玉村への移住に不安はありませんでした。困っていることといえば、やりたいことがたくさんあること(笑)。なかなか絞れないのでこれからいろいろな農業の現場を手伝うことで、自分らしい営農スタイルを見つけたいと思っています」
自然との共存をテーマに地域農業との関わりを考えている飛田さんは、中山間地の土地利用がこれからの農業には必要という思いがあります。
「畑には作物を栽培する以外にもいろいろな使い方があると思うんです。例えば農業体験などのアクティビティ、屋外コンサートやアート作品の展示など、芸術祭を開催するのも楽しそうです。自然というかけがえのない財産を活かし、大玉村の魅力を農業をフックに発信していきたいですね」
「やりたいことがたくさんあることが悩み」と、話す飛田さんですが、その全てを実現できる可能性を秘めているのが大玉村。斬新かつ、魅力的なアイデアは、飛田さんの就農と共に近い将来必ず実現することでしょう。<地域おこし協力隊の活動を発信している飛田さんのSNSはこちら>
「人が優しく、暮らしやすいところ」と、飛田さんが語る大玉村では、引き続き地域おこし協力隊を募集しています。暮らしながら自分らしい農業、営農スタイルを見つけることができる同村の制度はなんとも懐が深く、農業を志す人にとって理想の制度と言えるでしょう。ぜひ、大玉村で理想の農業を実現してみませんか?“大いなる田舎”があなたの挑戦を待っています!
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大玉村役場 産業建設部産業課
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福島県安達郡大玉村玉井字星内70番地
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