一年中美味しい果実が実る町・福島県国見町
緑に囲まれた自然豊かな町・国見町は福島県北部に位置する人口約8,200人の町です。 町のシンボル・阿津賀志山(あつかしやま)は、かつて源頼朝率いる鎌倉軍と奥州藤原氏が戦った奥州合戦の地として知られ、田畑が広がる山の麓では果樹や米が育まれています。
国見町を語るうえで欠かせないのが桃をはじめとした、あんぽ柿、リンゴ、オウトウ、プラム、アンズなどの多彩な果物です。ほぼ1年中美味しい果物が並ぶ国見町のランドマーク「道の駅国見あつかしの郷」には、旬の果物を求め、連日大勢の買い物客で賑わっています。
その中でも桃は、6月下旬から10月上旬まで途切れることなく店頭に並び、シーズンにもなると町内はもとより、福島県内外からその美味しさを求める人で大賑わい!早生(わせ)品種の「はつひめ」を皮切りに、主力品種の「あかつき」、「川中島白桃」、「さくら白桃」などの、さまざまな種類の桃を味わい、楽しむことができます。
しっかりした果肉とジューシーな甘さと香りが特徴の国見町産の桃を育むのは、福島県内で一番長い日照時間です。春と夏は日照時間が長く、冬は北国らしい寒さが続きます。朝と夜の気温の差も相まって、美味しい桃が育まれていきます。
そして何より、国見町の桃を格別な美味しさにするのは、生産者の情熱と技術です。長年に渡って地域農業を牽引する桃農家・佐久間敏雄(さくま・としお)さんに、農業の魅力や、やりがいについてお聞きしました。
新しい営農スタイルを取り入れ、農業を職業の選択肢へ
「やりがいといったら、美味しい果物を食べて元気になってもらうことだね」
と、笑顔で語る佐久間敏雄さんは、営農歴50年以上のベテラン農家です。高校卒業後、家業の養豚業とは別に、地域に導入されつつあった桃とリンゴの植栽を始めたのが果樹農家としての一歩でした。現在は桃260a、リンゴ20a、柿63a、水稲42aを栽培しています。主力の桃は約20品種を栽培。最盛期となる夏場は専門農協への出荷以外に直売所による相対販売のほか、贈答販売も行っています。
「自然相手の農業はその年によって気候が変わり、病害虫への対応も年によって異なります。それらに適切に対応するには経験値と技術が必要です。それが農業の難しさでもあり、面白さでもあります」
と、農業の難しさと面白さを語る佐久間さんは、できる限り自然農法に近い栽培を心がけ、長年の経験をもとに適期を見極めながら摘蕾(てきらい)、摘果、袋がけなどの作業を行っています。その弛みない努力は高収益経営につながり、令和2年には奥様の久子さんとともに農業経営改善部門で福島県農業賞を受賞。名実ともにリーダーとして、地域農業を牽引しています。
その敏雄さんを長年にわたって支える久子さんはいわば経営のマネジメントを担う存在です。袋がけや出荷作業が多忙を極める時期はパートさんを雇用し、指導にあたります。佐久間夫妻はまさに二人三脚で国見町の宝である果樹を支え続けているのです。
「高齢化や後継者不足による担い手不足は年々深刻化しています。産地継承が危ぶまれる今、新たな担い手の育成は必要不可欠です。そのためにはまず、農業を職業の選択肢に入れてもらうことが大切だと思います」
と、話す久子さんは、若い世代には昔ながらのやり方ではなく、新しい農業経営を取り入れながら“効率の良い農業”に取り組んでほしいと言葉を続けます。
「朝から晩まで働くというスタイルは今の時代には合っていません。機械化も取り入れながら休みを取り、しっかり収益を上げる方法を見つけてほしいと思っています」(久子さん)。
その佐久間夫妻のもとで現在、桃栽培を学んでいるのが国見町地域おこし協力隊の山田岳(やまだ・がく)さんです。
国見町の就農に向けた充実のプログラム
東京都出身の山田さんは約13年間、食品メーカーで経理を担当していました。食に直接携わる仕事がしたい思いから農業に興味を抱き、各自治体が主催する体験農業に参加。情報収集をする中で、国見町の地域おこし協力隊の記事を目にしたことが、応募のきっかけと話します。
「果物が好きということも理由のひとつですが、受け入れ後2カ月の“慣らし期間”や座学研修など、プログラムがしっかりしていたことが決め手になりました」(山田さん)
山田さんが国見町を選ぶ決め手になった国見町の地域おこし協力隊任用後のプログラムは次の通り。
【慣らし期間(約2か月)】
初めての土地での暮らしに慣れるための期間。就任から2カ月間はほ場見学や農業の基礎知識を学ぶための座学研修に参加します。その後、希望作物や受け入れ農家との相性などを考慮し、受け入れ先農家をマッチング。実践的な研修へと移行します。
【慣らし期間終了後~2年目】
慣らし期間を終えた後は、受け入れ農家のもとで徹底的に栽培技術を学びます。剪定(せんてい)から摘蕾、摘花、摘果、収穫までを一貫して学ぶことで、就農に必要なノウハウを身につけていきます。さらに、受け入れ先農家での研修のほか、JAが企画する農業塾や指導会、町が運営するくにみ農業ビジネス訓練所の座学研修、町の農産物PR販売などに参加することで栽培技術を磨きます。
農地探しや任用終了後の住宅、営農に必要な農業器具取得の準備も進めます。
【3年目】任期満了まであと少し!就農準備スタート
引き続き受け入れ先農家で研修を積みながら、就農に向けた準備を行います。
【4年目以降】
地域おこし協力隊としての活動を終え、いよいよファーマーライフが始まります。営農のための資金は、農林水産省の経営開始資金への申請が可能です。加えて、国見町では経営開始支援資金として最大150万円の資金貸し付けを行っています。
慣らし期間中、複数の農家でさまざまな作物を経験した山田さんは、佐久間夫妻の桃の栽培技術と人柄に惹かれました。そして、マッチングの結果、夫妻の元での研修を希望となり、現在、指導を受けながら初めての桃づくりにチャレンジしています。
「非農家出身の私にとって、何もかもが初めての経験。最初は袋がけのための脚立を立てることすらままならない状態でした。そんな私にも1つひとつ丁寧に指導してくれる佐久間さんのおかげで、毎日がとても充実しています」(山田さん)
国見町に“どっぷり”つかって、自分らしい営農スタイルを見つけよう!
地域おこし協力隊をはじめ、就農を志す方を数多く受け入れ、指導にあたってきた佐久間夫妻は、地域おこし協力隊の任期を、知識や技術習得だけではなく、営農のための準備期間にしてほしいと話します。
「見知らぬ土地で農業を始めるにはまず、地域に溶け込むことが大切です。人脈をつくるためには国見町に“どっぷり”つかって、地域の一員になってくださいね」(久子さん)
「ほ場探しや設備など、農業に必要なものはたくさんあります。協力隊として活動する中で知り合いができ、適したほ場を紹介してもらえたり、農業機器や設備を借りられたりすることもあるでしょう。3年間の任用期間をフル活用し、就農に備えてほしいですね」(敏雄さん)
国見町では山田さんに続く、桃栽培の新たな担い手を目的に、令和7年度の地域おこし協力隊を募集しています。
「新規就農を目指す方への支援として、町は研修機会の提供をはじめ情報提供や相談対応、各種制度の紹介、斡旋を通して全力でサポートします。ぜひ、国見町の宝である“桃”を、一緒に守りましょう!」
と、呼びかけるのは国見町産業振興課の吾妻健一(あづま・けんいち)さんです。国見町では移住から定住、就農に至るまで各機関が連携を図り、サポートする体制を整えています。その施策は農業を志す方にとって、きっと力強い味方になることでしょう。
農業という“職業”で、ぜひ、国見町の桃のように、“たわわ”な夢を実現してみませんか?
お問い合せ
福島県国見町産業振興課農林振興係
〒969-1792
福島県伊達郡国見町大字藤田字一丁田二1番7
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