米、畜産、野菜、果樹。多彩な農畜産物が育つ福島県石川町
福島県中通り地域の南に位置する石川町は、阿武隈川流域の平坦地と阿武隈高地につながる山間地からなる、豊かな自然に包まれたまちです。澄んだ空気は清々しく、町内に広がる田んぼや畑は、懐かしい日本の原風景を感じさせます。
昔ながらの里山の風景を今に残す石川町では、水稲を中心に畜産、野菜、果樹など多彩な農畜産物が育まれています。それは農業を志す人にとってまさに理想郷。“なんでも育つ”からこそ、作付け品目に迷ってしまう新規就農者もいるようです。その石川町で大規模な複合経営を実践しているのが水野谷 正史(みずのや・まさし)さんです。
30歳で就農を決意。きっかけはワークライフバランスへの疑問と東日本大震災

石川町で複合経営を行っている水野谷 正史さん
農業における複合経営とは、2つ以上の生産部門が総合的、複合的に結合されている経営方式です。水野谷さんは水稲9ヘクタールのほか、大豆、トマト、ブロッコリー、メロン、ニラ、トウモロコシなどを2ヘクタールの広大なほ場で栽培しています。同氏が就農したきっかけは、自身のワークライフバランスに疑問を抱いたことでした。
「残業が多かったサラリーマン時代はとにかく忙しく、家族と過ごす時間がありませんでした。このままでいいのかと疑問を感じ、退職したのが30歳のとき。父親が営む農業を手伝いながら転職先を探していました。そんなときに東日本大震災が発生。家業はおろか、福島県の農業そのものが存続の危機に直面しました。農業をイチから立て直す気持ちで就農を決意しました」
家族6人を養うために規模拡大を決意

2ヘクタールのほ場で大豆、トマト、ブロッコリー、メロン、ニラ、トウモロコシなどを栽培
親元就農した水野谷さんは、農業次世代人材投資資金(経営開始型)の補助を得て農業経営をスタート。4人の子供を持つ水野谷さん。両親が営んでいた水稲2ヘクタール、野菜1ヘクタールの規模では家族を養っていくのは難しいと判断し、規模拡大に着手。
「新規就農をするにあたり、新たな作付品目に加えたのがメロンです。もともと父が趣味でやっていたこと、美味しいこと、子供たちが好きなことが選んだ理由です」

とはいえ、周囲にメロンを栽培している農家はなく、水野谷さんは独学で栽培技術を学びはじめます。
「栽培技術が安定せず、1トンくらいをダメにしてしまったこともあります。試行錯誤を繰り返しながらやっと手応えを感じたのは3年ほど前。現在の収穫量は安定しており、3つのハウスで年間約1200個を出荷。直売所や贈答品として個別販売をしています」
年間を通して収入が得られる複合栽培

複合栽培は、生育期間が異なる作物と作物を組み合わせることで、作業をならすことができ、年間を通して収入が得られるのが最大の特長です。その分、単一経営と比べて忙しく、水野谷さんもほぼ毎日ほ場に足を運び、作業を行っています。
「忙しさだけで比較すれば、会社員時代と変わりありません。でも、忙しさの“質”が全く違うんですよね。自分が手をかけた分だけ作物が育ち、収入に直結する達成感があります。また、時間配分も自分で調整できるので、家族との時間も増えました」(水野谷さん)
その水野谷さんを支えているのが妻の文子(ふみこ)さんです。家族経営の水野谷さんは夫婦と両親の4人で全ての作物を栽培、収穫しています。

「石川町は気さくな方が多く、ご近所付き合いも盛ん。子育てもしやすい環境です」(文子さん)
「作物が途切れないので、忙しいことは忙しいです(笑)。でも、主人を見ていると、会社員時代と比べてとても楽しそうに仕事をしているんですよね。就農時は不安もありましたが今は充実した毎日です」
と、文子さん。雇用や法人化をせず、水野谷さんが家族経営にこだわる理由について、お聞きしました。
「規模を拡大する際も、心がけたのは家族でできる範囲ということです。体を動かすことが好きなので、自分でやりたいという思いもありました。万が一、ひとつの作物が不良でも、他の作物で収入をある程度カバーできるよう、しっかり作物に向き合っていくことが私のこだわりです」(水野谷さん)
作物の成長と品質は全て自分にかかっている

会社員から就農した水野谷さんの経営スタイルは、多くの新規就農者の指標になります。農業を志す人に向け、アドバイスをいただきました。
「自然相手の農業は待ったなし。人間の都合で成長を止めることはできません。適期に適切な管理を行うことが基本中の基本。たった数日間でも手を抜くと、収穫量や品質に影響します。全ての責任は自分にあるという覚悟を持って農業に向き合うことが大切です」
手をかけた分だけしっかり応えてくれるのが農業の魅力。4人の子どもを持つ水野谷さん夫妻にとって、それは子育てとよく似ているのかもしれません。
覚悟を持って農業に向き合うことー。それを実践しているからこそ、経営安定につながっていることを、水野谷さんは自身の働く姿から教えてくれました。
関係機関が連携し、就農支援を行う石川町のサポート体制

石川町では、新規就農を希望する人に対し、さまざまな支援を行っています。農政課が中心となって行うのは、就農に関する各種補助制度や研修会への参加、経営・技術支援、農地確保のサポートなど。相談内容に応じて関係機関が連携し、シームレスな支援を行っているのが特徴です。また、移住就農を希望する人には、企画商工課が移住サポートを行っています。
行政のサポートが手厚い石川町なら、目指す営農スタイルがきっと見つかるはず。自然豊かな石川町で、夢を叶えてみませんか?
■お問い合わせ■
石川町役場農政課
〒963-7893 福島県石川郡石川町字長久保185-4
TEL:0247-26-9126