だだちゃ豆とは?
だだちゃ豆は枝豆の一種で、山形県庄内地方の鶴岡市で栽培・育成されてきた在来の茶毛枝豆系統の総称です。鶴岡市の白山地域が発祥とされています。さやのうぶ毛が茶色く、2粒入りが多いことが特徴です。甘みとうまみが豊かで味と香りが良いことで全国的に名が知られています。
だだちゃ豆・茶豆・枝豆の違い
枝豆は、種皮やさやのうぶ毛の色の違いにより、大きく分けて青豆(白毛豆)、茶豆、黒豆の3種類があり、だだちゃ豆は茶豆に分類されます。枝豆と大豆は同じ豆で、未熟なものが枝豆(野菜)、熟したものが大豆(豆類)になりますが、近年、枝豆の専用品種が育成され、枝豆品種は400以上に上るといわれています。
その名の由来は所説あり
だだちゃ豆の名称の由来には、所説あります。ひとつは、庄内地方の方言で一家の主を「ダダチャ」と呼び、風味の良いこの豆を「豆の王様」という意味で、だだちゃ豆というようになったという説。他にも、これを献上された殿様が、「これはどこのダダチャの豆か」と尋ねたことからその名が付いたという説などがありますが、茶豆に由来するわけではないようです。
夏が旬、8月8日はだだちゃ豆の日
だだちゃ豆の収穫時期は、7月下旬~9月上旬です。出回り時期が約1カ月間と短く、夏の風物詩ともいえる農産物です。だだちゃ豆は、山形県鶴岡地域から出荷され、県内の直売所や物産店、全国各地のスーパーの店頭に並び、ネット通販などでも購入できます。
緑黄色野菜かつたんぱく質が豊富
「畑の肉」といわれる大豆と同様に、枝豆には良質のたんぱく質が多く含まれています。緑黄色野菜であることから葉酸などのビタミン類、食物繊維、カルシウムや鉄などのミネラル類も豊富です。特にだだちゃ豆は、機能成分のオルニチンやGABA、うまみ成分であるアミノ酸の一種のアラニンが豊富に含まれていることが近年の研究で分かっています。
だだちゃ豆と呼べるのは鶴岡産のみ
だだちゃ豆の商標は、地元食品メーカーが取得していたものを、JA鶴岡が使用契約を取り交わし、1997年に鶴岡地域だだちゃ豆生産者組織連絡協議会(以下、協議会/合同事務局:鶴岡市、JA鶴岡)を設立して、地域特産物としての品質特性保持とブランディングに努めています。
協議会では、だだちゃ豆の定義を、鶴岡地域に実在する茶毛在来種枝豆で、特有の風味を呈するものとし、品種系統として、早生甘露、早生白山、白山、晩生甘露、尾浦、平田、小真木の8つを設定しています。JA鶴岡ではこのうち6品種系統を認定し、収穫時期は7月下旬~9月上旬としています。鶴岡地域に住所を有する農業者が、地域内の農地で協議会が認定する枝豆を栽培し販売する場合にのみ、だだちゃ豆と表示することができます。
だだちゃ豆の栽培方法
だだちゃ豆は、枝豆の一種なので基本的な栽培方法は枝豆と同じです。豆類は移殖を嫌うため、植え付けがうまくいかないと枯らしてしまう可能性があるので、初心者には種から育てるのがおすすめです。鉢やプランターで栽培することもできます。だだちゃ豆は商標登録をされているため、種は「茶豆」「だだ茶豆」「茶枝豆」という名称で販売されています。
種まき
一般的なまきどきは、4~5月に早生品種、5~6月に中生品種、6~7月に晩生品種を用います。50~60cm幅の畝に、株間を20~30cmあけて、タネを数粒ずつ2~3cmの深さにまきます。苗は本葉が2枚になったら1~2本に間引きます。
間引きした苗は、根元に土寄せをして風に耐えられるようにします。草丈が30cmほどになったら再度、土寄せをすると良いでしょう。
追肥は、生育状況を見て、草勢が弱い場合は、窒素成分を20~30g/10㎡を与えます。液肥を施用すると高い効果が期待できます。
摘心・水やり
夏の高温期、葉茎の伸びがおう盛になりそうな場合は、摘心すると実が育ちやすくなります。本葉5~6枚に摘心すると倒伏しにくく、脇芽も伸びて収量が増えます。
水やりは、土壌を乾燥させないように適切なタイミングで行います。
収穫する
収穫適期の目安は、さやが十分に膨らみ、濃緑でツヤがあり、株の上部と下部にわずかな未熟なさやがあるころです。株ごと引き抜くか、成熟したさやを摘んで収穫します。枝豆の収穫適期は3~5日間と短いので、早めの収穫を心掛けましょう。
だだちゃ豆の食べ方
だだちゃ豆は、さやを枝から外して、茹でて食べます。風味を逃さないために、購入後すぐに下茹でしておきましょう。そのまま食べてもおいしく、料理にも手軽に使えます。
下茹での方法
1.枝付きの場合は枝から外し、さやの付け根をハサミでカットする
2.ボウルなどに入れて水洗いして、軽く水気を切り、重量の4%ほどの塩をまんべんなくまぶす
3.鍋にたっぷりの水を沸騰させ、さやを入れて4~5分茹でる
4.茹で上がったら、ザルに上げて水気を飛ばす
だだちゃ豆の保存方法
だだちゃ豆(枝豆)は、収穫後から風味がどんどん落ちていきます。常温には置かず、湿らせた新聞紙で包んで冷蔵庫へ入れ、できるだけ早く食べましょう。枝付きの方が鮮度が長持ちします。枝付きを入手した場合は、全体を湿らせた新聞紙で包んで冷蔵庫内に立てて置き、2〜3日以内に食べましょう。
冷凍で長期保存
長く保存したい場合は、冷凍がおすすめです。さやごと下茹でをして、水分を取り、よく冷ましてから、冷凍用保存袋に入れて、冷凍庫で約1カ月。解凍は、流水か沸騰したお湯にさっとくぐらせて、そのまま食べたり、調理に使うことができます。
だだちゃ豆おすすめレシピ5選
だだちゃ豆は、味が濃く香り豊かで、栄養たっぷり。その特徴を生かしたお手軽レシピを集めました。
だだちゃ豆のガーリック炒め
ビールのおつまみに好相性のだだちゃ豆を、ガーリックで炒めて香ばしく。うまみの相乗効果で食が進みます。
材料(作りやすい分量)
・だだちゃ豆(さや付き) 150g
・ニンニク 1片
・鷹の爪(輪切り) 適宜
・塩 適宜
・オリーブオイル 大さじ1
作り方
1.だだちゃ豆はさやごと洗って硬めに茹でる(冷凍品の場合は解凍する)
2.ニンニクは皮を向いてスライスする
3.フライパンにオリーブオイルを引いてニンニク、鷹の爪を入れて弱火で熱し、香りが立ったらだだちゃ豆を入れる
4.中火にしてだだちゃ豆をまんべんなく炒め、塩を振って味を整え、火から下ろす
だだちゃ豆でずんだ餅
ずんだは枝豆をつぶして作るあんのこと。山形では、夏に冷凍しただだちゃ豆で、お正月にもよく作られています。
材料(作りやすい分量)
・だだちゃ豆(さや付き) 150g
・切り餅 2~3枚
・砂糖 15g
・塩 少々
・水 適宜
作り方
1.だだちゃ豆はさやごと洗って軟らかめに茹でる(冷凍品の場合は解凍する)
2.だだちゃ豆をさやから取り出し、薄皮をむき、粗く刻んですり鉢ですりつぶす
3.砂糖と塩を加えて調味して、絡めやすい硬さに水で伸ばして、温めた切り餅に絡める
だだちゃ豆さやごとみそ汁
カニ汁の味がするとうわさされていますが、するかしないかは作ってみてのお楽しみ。だしがなくてもうまみが出ることは間違いなし。※さやは食べません。
材料(2人分)
・だだちゃ豆(さや付き) 100g
・水 400cc
・みそ 大さじ2
作り方
1.だだちゃ豆はさやごと洗う(冷凍品は解凍する)
2.鍋に水とだだちゃ豆を入れ柔らかくなるまで煮る
3.みそを加えて、ひと煮立ちさせる
だだちゃ豆とひじきのサラダ(2人分)
和食の副菜の定番、大豆とひじきの煮物を、だだちゃ豆を使ってサラダにアレンジ。ビタミン、ミネラル、たんぱく質がおいしく取れる一皿です。
材料
・だだちゃ豆(さや付き) 70g
・ひじき(乾燥) 大さじ1
・ハム 2枚
・マヨネーズ 大さじ1
・しょうゆ 小さじ1
作り方
1.だだちゃ豆はさやごと洗って茹でて(冷凍品の場合は解凍して)さやから取り出す
2.ひじきはたっぷりの水で戻し(30分ほど)て下茹でし、ハムは半分にして細切りにする
3.ボウルにマヨネーズとしょうゆを混ぜ、だだちゃ豆、ひじき、ハムを加えてあえる
だだちゃ豆の油揚げピザ
生地には大豆製品の油揚げを使い、しらす、チーズ、だだちゃ豆をトッピング。高たんぱく質で、パリパリ食感とだだちゃ豆の濃厚な風味がポイントです。
材料(1人分)
・だだちゃ豆 30粒
・油揚げ 1枚
・しらす干し 15g
・ピザ用チーズ 20g
作り方
1.だだちゃ豆はさやごと洗って茹でて(冷凍品は解凍して)さやから外す
2.油揚げに、ピザ用チーズ、だだちゃ豆、しらすをのせて、オーブントースターで3~4分焼く
3.食べるときに好みでしょうゆやポン酢(いずれも分量外)をかける
旬を逃さず楽しみたい、鶴岡特産の夏の味覚
だだちゃ豆の発祥地、山形県・鶴岡市白山地区は、湯尻川沿いの砂地で、水はけがよく、マメ科植物と共生する根粒菌が好む土壌を有しています。更に、湯尻川の朝もやが豆の葉を包むことでおいしさを増します。このように、だだちゃ豆の香りとうまみには、産地の気候風土が影響しているため、他の地域で栽培しても同じような味にはならないといわれています。
鶴岡地域だだちゃ豆生産者組織連絡協議会では、8月8日を「だだちゃ豆の日」に制定しています。この時期が最旬であることに加えて、「だだちゃ」は「親父(=パパ)」を意味する方言であること、2粒入りでくびれのあるさやの形が数字の8に似ていることが制定の背景です。現在、400以上あるといわれる枝豆品種で、だだちゃ豆になれるのは8品種系統(JA鶴岡では6品種系統)。生産地が限定され、収穫時期は7月下旬から9月上旬と短く、鮮度が命のだだちゃ豆。産地に思いを馳せながら、夏の味覚を楽しんでみてはいかがでしょう。