給食用の出荷は仲間の農家の紹介がきっかけ
近藤さんは現在43歳。10数年前に妻の美保子(みほこ)さんの実家を継いで農業を始めた。栽培面積は5ヘクタール。育てているのはコマツナやキャベツ、カブ、ネギなど。スーパーの地場野菜の直売コーナーや都内の小中学校の給食向けに出荷している。売り上げの半分を給食向けが占める。
近藤さんが給食用の出荷を始めたのは就農して間もないころ。瑞穂町のベテラン農家から「キャベツを出荷してみないか」と誘われたのがきっかけで、瑞穂町とその西側に隣接する羽村市の合同の給食センターに出し始めた。
数年たったころ、今度は練馬区にある小中学校向けに、卸会社を通してコマツナの出荷がスタートした。これも瑞穂町の農家の紹介がきっかけだ。その後、新宿区や中野区、江東区などの小中学校へも出し始めた。
近藤さんによると、これもスーパーの地場野菜コーナーなども知り合いの農家の紹介がきっかけだったという。本来なら同じ地域で販売を競い合うライバルのはずなのに、なぜ「出してみないか」と誘ってくれるのだろうか。
その点についてたずねると、近藤さんは「出荷量を安定させるため」と答えた。都内の農家は地方と比べると規模が小さく、売り先が期待する量に1軒で応えるのが難しい。そこで仲間を募り、量を確保する。
拡大を見込める給食用の需要
本題である給食の話に移ろう。近藤さんによると、スーパーに出すのと比べて作業効率が高いという。スーパーでは売るのが難しいような大きめのサイズのもののほうが給食センターでの加工が楽になるため、一般的なサイズよりも好まれるからだ。
コマツナだと、スーパー向けより2~3割大きいものを出荷することもあるという。さらに個包装も必要ない。売り上げは重さの総量で決まるため、収穫や梱包の手間が少なくなる分、作業効率が高まる。収穫がピークを迎える時期はとくに農家にとってメリットが大きい。