ラッキョウの育て方
ラッキョウは、ヒガンバナ科ネギ属に属する多年草の野菜です。原産地は中国とチベットのヒマラヤ地方で、日本には9世紀に薬用植物として伝わりました。その後、江戸時代になると食用として広まりました。なお、軟白栽培して早取りしたラッキョウはエシャロット、エシャレットと呼ばれます。
ラッキョウの栽培は比較的簡単で、土壌のえり好みが少なく、堆肥(たいひ)もあまり必要としません。また、冬の寒さにも強い性質があり、連作障害も起こりにくく、菜園初心者でも育てやすい作物です。
ラッキョウの栽培暦
ラッキョウの植え付け、追肥、収穫の時期は、栽培する場所によって異なります。
中間地、暖地、寒冷地に分けて、それぞれの作業時期を見ていきましょう。
中間地で栽培する場合
植え付け:8月中旬~9月上旬
追肥:9月下旬~12月上旬、翌年3月
収穫:3月下旬~4月上旬(エシャレット)、6月(ラッキョウ)
暖地で栽培する場合
植え付け:9月
追肥:10月~12月、翌年2月下旬~3月上旬
収穫:3月~4月上旬(エシャレット)、5月~6月(ラッキョウ)
寒冷地で栽培する場合
植え付け:8月中旬~9月上旬
追肥:9月中旬~11月上旬、翌年3月下旬~4月上旬
収穫:4月中旬~5月上旬(エシャレット)、6月中旬~7月上旬
まず中間地では、植え付けは8月中旬から9月上旬に行います。追肥は9月下旬から12月上旬と翌年3月にかけて行います。エシャレットとして収穫する場合、植え付けは3月下旬から4月上旬、ラッキョウとして収穫する場合は6月になります。
次に暖地の場合、植え付けは9月に行います。追肥は10月から12月と翌年2月下旬から3月上旬にかけて行います。エシャレットの収穫時期は3月から4月上旬、ラッキョウとして収穫する場合は5月から6月になります。
最後に寒冷地では、植え付けは8月中旬から9月上旬に行います。追肥は9月中旬から11月上旬と翌年3月下旬から4月上旬にかけて行います。エシャレットとして収穫する時期は4月中旬から5月上旬、ラッキョウとして収穫する場合は6月中旬から7月上旬となります。
ラッキョウの植え付け
ラッキョウの植え付け時期や、植え付け方法・コツについてわかりやすく解説していきます。
ラッキョウは生命力が高く、雑に植え付けても育ちますが、おいしく奇麗なものを作るために、株間や種球を植え付ける向きなど、いくつかポイントを押さえておきましょう。
植え付け時期
種球の植え付け時期は、地域によって異なります。
ラッキョウの栽培適温は20℃前後なので、真夏の暑い時期を避けて植え付けします。
中間地の場合は8月中旬~9月上旬が植え付けの適期。暖地の場合は9月、寒冷地の場合は8月中旬~9月上旬ごろが適しています。
プランター栽培の場合
◯用意するもの
・ラッキョウの種球
・プランター
・野菜用培養土
・鉢底ネット
・鉢底石
・すのこなど、プランターの土台になるもの
◯プランター栽培の手順
1.プランターに、鉢底ネットを敷き、鉢底石を設置します。
2.培養土を8割くらいまで入れます。
3.鉢を揺らして土をならします。
4.植え付け穴を作り、種球を植え付けます。深さ5cm、株間は5〜7cmほどとりましょう。
5.水やりをします。必要であれば、農薬も散布しましょう。
◯プランター栽培の注意点
プランターを置くときは、すのこやブロックなどの上に置き、通気性を確保しましょう。エアコンの室外機などの近くには置かないようにしてください。
地植えの場合
◯必要なもの
・ラッキョウの種球
・堆肥や腐葉土
・石灰
・緩効性肥料
◯地植えの手順
1.植え付けの2週間前に土作りをします。1平方メートルあたり堆肥2kgと緩効性肥料120g、石灰150gを入れ、よくすき込みましょう。堆肥や肥料を入れた直後に植え付けをすると、根がダメになってしまうことがあるため、時間をおきましょう。
2.畝は一条植えの場合60cm、二条植えの場合80cmの幅にします。
3.立てた畝に植え穴を掘って種球を植えつけます。株間を15cm、条間は40cmにしましょう。
4.たっぷり水やりをします。
◯地植えの注意点
種球を植えるときは、先のとがった方を上向きにして植え付けます。
また、1か所に2~3球植えたり浅植えにしたりすると、小さいサイズのラッキョウを作ることができます。
ラッキョウの栽培管理
ラッキョウは病害虫に強く、痩せた土壌でも育てることのできる栽培しやすい作物です。
栽培管理も特に難しいことはありませんが、ここでは押さえておくべき三つのポイントについて、それぞれわかりやすく解説していきます。
水やり
地植えの場合、水やりは基本的に必要ありません。晴れた日が続き、土壌が乾燥するようであればさっと水やりしましょう。
プランターの場合は、土の表面が乾いたら、プランターの底から水が染み出るまで水やりしましょう。
いずれの場合も、水やりは朝夕の涼しい時間帯に行いましょう。
施肥
元肥は植え付け2週間前までに、1平方メートルあたり堆肥2kgと緩効性肥料120g、石灰150gを入れ、よく耕しましょう。
ラッキョウの追肥は、植え付けからおよそ2カ月後に行います。このとき、株元に軽く土を寄せてから、1平方メートルあたり一握り(約50g)の緩効性肥料をまきます。
3月の上旬から中旬にかけて株の草勢が落ちている場合は、もう一度追肥を行います。1平方メートルあたり約100gの緩効性肥料をばらまきましょう。
ラッキョウは肥料分が少なくても育つので、追肥は絶対に必要というわけではありません。株の様子を見ながら調整しましょう。
土寄せ
ラッキョウの土寄せは、ラッキョウの成長が盛んな3月から4月ごろに行います。この作業では、株元に土を寄せて、ラッキョウの根本に光が当たらないようにします。
土寄せは中耕も兼ねており、この際に周りの雑草も一緒に抜き取ります。土寄せを行うことで、白くて形の良いラッキョウが育ちます。逆に、土寄せをしないと形が悪くなってしまいます。
ラッキョウの収穫
収穫時期は地域によって差がありますが、6月~7月の晴れた日に行うのが基本。
ラッキョウの地上部が黄色く枯れてきたら収穫です。地上部をつかんで丸ごと掘り起こしましょう。
収穫後は、ラッキョウの葉と根を切り落として、風通しの良い日陰で乾燥させて保管し、なるべく早く料理などに使いましょう。
エシャレットとして
エシャレットとして収穫する場合は、植え付けた年の10月~11月ごろに土寄せを行って、土を10cm以上の厚さに株元に寄せていきます。この土寄せ作業をしないと、エシャレットは軟白になりません。土寄せの際には、茎が曲がらないように丁寧に行うことが重要です。
エシャレットの収穫は、その年の11月~翌年の4月ごろまで行います。適切に土寄せを行うことで、白くて美しいエシャレットが収穫できます。
1年掘りと2年掘り
1年掘り栽培では、ラッキョウを1年間育てて収穫します。この方法では、一つの種球から約10個前後のラッキョウが収穫できます。収穫されるラッキョウの大きさは1個あたり5〜10g程度です。1年掘り栽培は手軽で、家庭菜園にも向いています。
一方、2年掘り栽培では、1年間育てたラッキョウを収穫せずにさらにもう1年育てます。これにより、一つの種球から30個以上の小粒のラッキョウが収穫できます。2年掘りで収穫されるラッキョウは1個あたり3〜4g程度の小さなサイズですが、身が締まって質が良いとされています。しかし、長期間畑を専有することになるのと、小粒なため下処理が大変であるため、家庭では1年掘り栽培の方が扱いやすいかもしれません。
ラッキョウの増やし方
収穫したラッキョウは、次の栽培時に再び植え付けることができます。まず、夏に収穫したラッキョウをよく乾かして保存します。
次に、種球を選ぶ際には病虫害がなく、張りのある充実したものを選びます。特に注意すべきは、紫色がかったラッキョウです。これは栽培中の乾燥や肥料不足が原因である可能性が高いため、除いておきます。
植え付けの手順は通常のラッキョウと変わりません。枯れた皮を取り除き、ラッキョウを一つずつバラバラにしてから植え付けます。自家産種球のほか、市販のものを使ってもよいでしょう。
ラッキョウに発生する病害虫
ラッキョウは比較的病害虫に強い作物ですが、次の病気や害虫に注意しましょう。
気を付けたい主な病害
乾腐病:ラッキョウの球根が腐る病気です。
白色疫病:ラッキョウの葉や茎に白いカビが生える病気です。
黒腐菌核病:ラッキョウの球根が黒く腐る病気です。
黒点葉枯病:葉に黒い斑点が現れ、枯れる病気です。
サビ病:葉にサビのような斑点ができる病気です。
気を付けたい主な害虫
ネダニ(ロビンネダニ):土壌に生息し、ラッキョウの根を食害する害虫です。
ネギアザミウマ:ラッキョウの葉を吸汁して害を与える小さな昆虫です。
特に注意すべきはネダニと乾腐病です。これらは土壌や種球から感染し、被害が拡大します。発生してからの対策は非常に難しいため、事前の防除が重要です。
まとめ
比較的病害虫に強く、栽培しやすいラッキョウ。
エシャレットとして早取りするのもおすすめです。
取れたてのラッキョウやエシャレットはみずみずしく、市販のものとは違った格別な味わいです。
栽培期間が長いのが少々ネックですが、その価値が十分にある野菜です。
ぜひ本記事を参考にして栽培に挑戦してみてくださいね。