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メチャ甘いニンニク誕生までの曲折、原動力は「壁にぶつかるのが楽しい」という心意気

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

メチャ甘いニンニク誕生までの曲折、原動力は「壁にぶつかるのが楽しい」という心意気

栽培の腕を磨き、作物の品質をよりよくしたいと農家は当然考える。技術を突き詰めようと思えば、味を褒められても探究が終わることはない。ニンニクの栽培や加工を手がける農業法人「よしだや」(青森県三戸町)の代表、吉田清華(よしだ・さやか)さんの、試行錯誤の連続だった歩みを紹介しよう。

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「これがニンニク?」と驚かれた味

よしだやは面積が2.6ヘクタールで、ニンニクやその加工品を自社サイトで販売している。売り上げが多いのは、外皮を取り除いてバラバラな状態にしたむきニンニクや、おろしニンニク、発酵させた黒にんにくなどだ。

吉田さんに話を聞きたいと思ったのは、キャンプ飯用の調味料「G飯の素(ジーメシノモト)」を取材したのがきっかけだ。ご飯と一緒に炒めるとガーリックライスができる調味料で、メインの材料は吉田さんのニンニク。しょうゆを製造する過程でできる「もろみ」や赤ワインなども使っている。

ニンニク

収穫したてのニンニク

G飯の素はヤマサ醬油の社内ベンチャー、アウトドアオペラ(東京都中央区)が開発し、2023年4月に発売した。代表の松倉広平(まつくら・こうへい)さんによると、吉田さんのニンニクを初めて食べたとき「これがニンニク?」と驚いたという。予想をはるかに上回るおいしさだったのだ。

松倉さんが吉田さんを訪ねたのは2021年11月ごろ。ニンニクの産地として有名な青森の生産者を探しているうち、よしだやのホームページにたどりついた。そのとき吉田さんが試食させてくれたのが、オリーブオイルと塩というシンプルな味付けで、オーブンで焼いたニンニクだった。

「香りが良くて、メチャメチャ甘い。最高の調味料ができる」。一口食べてみてそう確信した松倉さんに対し、吉田さんは栽培のこだわりを語り始めた。それは土づくりに力を入れて、ニンニクの糖度を高めることだった。

たった一口で松倉さんの心をつかんだニンニクだが、ここにいたるまでにはいくつもの曲折があった。もともと栽培の「素人」だった吉田さんは、繰り返し壁にぶつかりながら、時間をかけて手探りで技術を高めてきた。

G飯の素

G飯の素

珍しい水耕栽培からスタート

ここで吉田さんの歩みを振り返ってみよう。鉄工所を経営していた父親がよしだやの前身の「四季菜にんにく生産組合」を設立したのが2002年。知人が開発したニンニクの水耕栽培の技術に注目し、農業参入を決断した。

設立に際し、父親は「手伝ってみないか」と吉田さんを誘った。ちょうどそのころ吉田さんは、ワーキングホリデーで訪れたニュージーランドのブドウ園で働いていて、「農業は面白い」と思い始めていた。

帰国して生産組合に加わった吉田さんは、徐々に栽培と販売の両方を担うようになっていった。2007年に組合から株式会社に衣替えした後、2018年に社名をよしだやに変更するタイミングで吉田さんが代表に就いた。

吉田清華

吉田清華さん

その歩みは試行錯誤の連続だった。そもそも確立された技術と思って始めた水耕栽培だったが、始めてみると期待した通りに育たなかった。

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