牛3,000頭の膨大なデータの手入力とデータ管理に疲弊する毎日
藤本さんは藤本畜産株式会社(以下、藤本畜産)を設立して17年、兵庫県養父市で但馬牛肥育200頭、鹿児島県霧島市で黒毛和牛繁殖一貫2,000頭、黒毛和牛肥育預託1,200頭、合計3,400頭を管理しています。
当初は牛のデータを1頭1頭、エクセルに手入力していたそう。その後、牛の行動管理のためにセンサー搭載の首輪を牛につけてデータ受信し専用ソフトウェアで管理していました。しかし、首輪を装着していない牛のデータはもちろん取得できません。また、電池交換などのメンテナンスが数年ごとに必要で、その都度高額な費用がかかるため、運用面での課題がありました。さらに、飼料や薬品の管理、牧場運営に必要な他のデータの管理ができない点も改善の余地があると感じていた藤本さん。
「子牛の買い付けから繁殖、種付け、分娩、肥育出荷まで、3,400頭分の膨大なデータを毎日手入力する必要があります。なかでも、牛の個体識別番号は1ケタでも間違えるとデータ不整合になり、日々の管理の入力も個体番号の確認作業から始めなければなりません。事務スタッフは常にヒューマンエラーを発生させないよう注意を行き届かせながら入力していました」(藤本さん)
加えて、牛の健康管理、一般作業、イベント作業、在庫管理などのデータは、現場でメモしたものを事務所に持ち帰ったのち事務スタッフが同じ内容を入力する、いわゆる”二度手間”の発生です。
さらに、繁殖牛システムと肥育牛システムが独立していたため、それぞれを立ち上げて入力し、データを照らし合わせながら経営管理をするといった煩わしさもありました。また、システムがクラウド化されていないため、入力が遅れると本社と現場管理にずれが生じることも。正確なデータ入力と管理及び蓄積、省力化が、藤本畜産の長年の課題だったのです。
「繁殖牛・肥育牛管理システム」で牛の繁殖と肥育をワンストップ管理し、戦略的なデータ管理を実現
ある日藤本さんは、約4万頭弱を管理する熊本県の知人に牛の管理システムについて相談。その知人は株式会社南日本情報処理センター(以下、MIC)の「繁殖牛・肥育牛管理システム」を活用していることを知ります。
導入して10年。その使い勝手を聞くと「特定のデータが欲しいとき、事務スタッフに依頼すればすぐに出力できるようなシンプルな仕様。とても管理しやすく重宝している」と太鼓判を押され、「それならば使ってみたい」とシステム採用に前向きになったのだとか。
MICは30年にわたる農畜産業に関わるシステム開発の実績があり、最新のICT技術を融合したシステム提案を行なっています。そのなかのひとつが「繁殖牛・肥育牛管理システム」。MIC・営業の山本正二さんにシステムの詳細をお伺いしました。
「牛の導入・誕生から異動、治療、繁殖、肥育出荷までの流れをワンストップで管理します。繁殖システムでは、年1産を実現するために、種付け、妊娠鑑定、分娩情報を正確に管理します。肥育システムでは、月ごとの出荷予定頭数や、素牛金額、飼料金額、諸経費など1頭単位での正確な原価を把握できます。また、システム管理はクラウド上で行われ、タブレットなどの端末を使って現場でデータを入力し、その内容は事務所でリアルタイムに確認することができます」と山本さん。
「そして、固定資産でもある繁殖牛の減価償却もシステムに組み込まれており、1頭毎の耐用年数に応じて月々の減価償却を自動計算してくれるので、複雑な事務処理をサポートしてくれます。また、本システムはIT導入補助金の対象ツールとして登録できています。導入費用としてうまく活用する農家も多いです」と山本さんからお話をいただきました。
食肉センターとデータ連携し、生産性の向上を図る
藤本さんは、集荷している食肉センター・和牛マスター株式会社の代表池田さんからも「繁殖牛・肥育牛管理システム」の導入をすすめられました。
和牛マスター株式会社は、全国から和牛を集荷する拠点かつ神戸ビーフを代表とする有名ブランド牛の輸出基地。神戸ビーフのアメリカ、ヨーロッパへの輸出を目的として、行政、お肉屋さん、生産者の強い意向のもと、2017年に設立されました。
同社では集荷してから販売までのすべてのデータを、MICの「食肉管理システム」で管理。導入以前は、管理システムと会計システムとは別々だったのが、一元管理してからは少ない事務スタッフで効率的にデータ入力ができ、また収入データなどが一度に見られるようになってとても便利になったと池田さんは話します。
「藤本社長が枝肉を見るために度々本センターに訪れた際に、牛の管理や事務入力が非常に複雑で大変だと相談を受けました。ならば、うちから格付、数量、会計などのデータをまとめて送れるので、それをうまく活用すれば負担が軽減されるのではと。システム同士の連携のしやすさもあり、MICさんのシステムをすすめました」(池田さん)
例えば、と畜したときの格付明細書は通常その都度紙で渡され、農家がそれぞれ持ち帰って自社のシステムやエクセルに手入力してから経営分析するのが通常の流れです。同社ではこれらのデータが毎年蓄積されていくため、農家から特定のデータを求められればすぐに出力や、データで送信することが可能です。
この背景から農家もMICのシステムにすれば、円滑なデータ取り込みが可能になり、その都度手入力する手間が省け、事務作業の合理化につながります。
過去に知人から「繁殖牛・肥育牛管理システム」の使い勝手を聞いていた藤本さん、池田さんからもすすめられたことで「メリットしかない」とすぐに導入を決意します。
「集荷される肉牛の過去データがすべて、和牛マスターに蓄積されています。集荷する農家全体でデータを共有してもらえるのはとてもありがたいし、私たちにとっては大きな財産です。例えば血統データであれば、子牛を買う、つまり仕入れの材料になりますし、また、このようなデータをそのまま自社システムに移行できるのは誤入力の防止になります。ですので、藤本畜産が先駆けてシステムを導入し、うまく活用できていることを他のグループにもアピールし、将来的にグループ全体で相乗効果を高めていきたいと思っています」(藤本さん)
「センターに集まってくれる農家さんすべての経営が良くなってくれたら、おのずと集荷される牛の価値も上がるのでうちとしてもとてもありがたいんです。生産性向上のため、蓄積したデータを存分に活用してほしいですね」(池田さん)
「食肉管理システム」のデータを取り込むことで、いかに上質な牛を育てるか、どう生産効率を高めながら適正な飼育管理を行うかなど、さまざまな分析ができるようになります。
具体的には、系統別に最適な給餌パターンが割り出せるなど多くの分析ができます。飼料や資材が高騰している昨今、「繁殖牛・肥育牛管理システム」導入は長期目線で見るとコスト削減になり、自然と経営状態の安定につながるのだそうです。
後継者を増やしていくために、スマートな経営を
これまでの畜産現場は属人的な作業が多く、いかに効率化かつ省力化できるかが安定経営の課題となっていました。
それゆえ「繁殖牛・肥育牛管理システム」は、データ項目が充実しており、事務作業が複雑な、繁殖肥育一貫で経営する農家にとって大きなメリットがあります。かつ食肉センターのデータと連携することで、より効率的な運用と、より良い飼育管理が実現できるのも魅力といえます。
「畜産の仕事は重労働であるものの、とても魅力的な仕事です。だからこそ後継者が畜産を承継したいと思うような事業にしたい。長い間安定した経営を継続していくには、農家と食肉センターが手を取り合わなければなりません。そのためにMICさんのシステムを利用して、いい牛の育成に貢献していきたいですね」(池田さん)
隣で何度もうなずく藤本さんと山本さん。スマート畜産によってブランド牛がますます盛り上がる未来はそう遠くありません。
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