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育苗にぴったり! 手軽に持ち運べる防虫ネットの作り方

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

育苗にぴったり! 手軽に持ち運べる防虫ネットの作り方

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約5反(50アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。
今回は、育苗時の防虫に活躍する「手軽に持ち運べる防虫ネット」。育苗のたびに畑にトンネルを作る手間が解消され、悪天候時や朝夕の苗の移動も簡単にできる。小さな家庭菜園ならそのまま畑に置いて収穫まで防虫ネットとして使うことも。これでもう虫食い野菜とはおさらば!

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無農薬栽培でも害虫対策はしっかりと

わが家の畑では無農薬、無化学肥料で野菜を作っている。薬剤や化学肥料がいけないというのではない。近所の農家からおすそわけしてもらうそういう野菜や果物はありがたくいただくし、プロがきちんと作ったとれたての作物は、栽培法によらずおいしい。まれに、スーパーや直売所で野菜を買うこともあるけれど、そこで有機かそうじゃないかはあまりこだわらない。鮮度や価格のほうが気になる。とはいっても、農家の畑でじゃんじゃん薬剤をまいているのを見るのはあまり好きになれないけれど。

家庭菜園

無農薬栽培では害虫防除の基本は防虫ネットのトンネルがけ

私がコメや野菜を無農薬、無化学肥料で作っているのは、気持ち的に何となくそうしたいからにすぎない。ささやかなこだわりといってもいい。薬剤にもいろいろあるけれど、それを使ってまで虫食いのないきれいな野菜を作りたいとも思わない。それに、どんな資材でも使わないで済むのならそのほうがいい。なぜなら、コストを抑えられるからだ。

わが家で使っている肥料は、主に米ぬかと鶏ふんだ。コメを作り、ニワトリを飼っていればどちらもタダで手に入る。これに加えて、落ち葉と刈り草と生ゴミと野菜の残渣(ざんさ)でこしらえた堆肥(たいひ)で育まれた土によって、自給用の野菜などは、十分な収量が得られるものだ。

もちろん病気が出ることもあるし、害虫対策もおろそかにはできない。特にキャベツやブロッコリーをはじめとしたアブラナ科の野菜は、育苗の時に対策を何もしなければ、発芽して間もなくチョウやガの仲間が卵を産み付けて、数日後にふ化し、幼虫が葉を食い散らかしてしまう。そうなったらおしまいだ。だから、薬剤は使わないといっても害虫対策はしっかりとやる。もちろん、うまく育苗できた苗を植え付けてからも害虫対策は必須だ。

どこでも苗を育てられ、移動もできる防虫ネット

その育苗時の害虫対策のひとつが、今回紹介する「手軽に持ち運べる防虫ネット」だ。付き合いのある有機農家が使っていたのを見て、まねして作ったのだが、これが実に使い勝手がいいのである。

防虫ネット右向き

水稲用育苗箱に乗せたセルトレーを3枚横に並べてすっぽり覆えるサイズ

私は、キャベツやブロッコリー、ハクサイなどの苗は128穴のセルトレーや3号のポリポットに種をまいて育苗するが、その際にこの防虫ネットをかぶせておくのだ。サイズは1900×400ミリで、128穴のセルトレーなら3枚、3号ポットなら70~80個を覆える。家庭菜園なら十分な量だし、必要に応じてサイズを大きくしたり、小さくしたりしてもいい。これを使っていた有機農家は、同じものをいくつか作ってたくさんの苗を育てていた。

庭や畑でトンネル支柱を使って防虫する方法もあるが、支柱を地面に挿すと移動ができない。「え? そもそも苗を移動する必要あるの?」という声にはこう答える。
秋冬野菜の育苗期間である夏の終わりから秋にかけては、天候が不安定だ。今年のように9月に入っても35℃を超える猛暑日が続いたり、台風や秋雨前線による大雨があったりもする。そんな日に、日差しや雨を遮るもののない庭や畑に放っておかれたのでは、発芽したばかりの弱々しい苗はたまったものではないのである。状況に応じて移動できれば、気温が高い日には木陰に置いたり、雨の強い日には屋根の下に入れたりできる。秋が深まれば、気温が下がる夜間はハウスに入れ、日中は風通しのいい外に出したりもする。地面に支柱を挿す必要がないので、ベランダやウッドデッキで育苗することもできるのだ。

苗

害虫による食害のないきれいな苗

それに、トンネル支柱を使って被覆するのは、意外と手間がかかるものだ。慣れないとピンと美しく張るのも難しい。ネットの中に害虫の侵入を発見したときなど、開けたり、閉めたりするのも面倒だ。その点、この防虫ネットなら、一度作ってしまえば毎回使いまわしができる。何かあったときに持ち上げればいいので開け閉めも簡単だ。時期をずらして種をまいたセルトレーやポットをあとから入れることもできる。

持ち運びしやすいように軽く作る

材料の木材は、DIYであまった端材があればそれを使えばいいし、ホームセンターで入手するなら厚さ15ミリ、幅45ミリのスギ材がいい。強度は必要ないので、楽に持ち運べるように軽く作るのがポイントだ。ネットには穴があいた防虫ネットや寒冷紗(かんれいしゃ)があれば、その使える部分を利用したり、長いネットを切って使ったりするといい。

持ち運び

とても軽いので力のない女性や高齢者でも楽に持ち運びができる

少ない材料で安く、簡単に作れるのもいいところだ。初めてDIYをするという人でも、1時間程度でできると思う。慣れた人なら30分。道具はノコギリやカナヅチといった手道具でもいいが、電動工具のインパクトドライバーと丸ノコがあれば、より正確に、素早く、安全に作業ができる。農家はもちろん、ちょっとした庭があるような家に暮らしていれば、電動工具は何かと使い道があるので、購入をおすすめする。
では、移動式防虫ネットの作り方を紹介しよう。

持ち運べる防虫ネットの作り方

材料

材料

①スギ 15×45×1900ミリ 2本
②スギ 15×45×400ミリ 2本
③スギ 30×30×1900ミリ 1本
④スギ 30×30×400ミリ 2本
⑤防虫ネットや寒冷紗 1000×2500ミリ程度

各材料は下の写真のように組む。
フレーム

このほか、長さ40ミリのビス、またはくぎ14本を用意。

ビス

通常のビス(右)より細く、頭の部分が小さいスリムビス(左)を使うと木割れしにくい

作り方

1. 各材料は寸法を測って、丸ノコやノコギリで必要なサイズにカットする。
丸ノコ

2. ①と④の材料を写真のように組み合わせ、それぞれ2点ずつビスまたはくぎで固定し、四角い枠を作る。
枠ビス打ち

組み終わると下の写真のような枠が完成。
枠

3. 完成した枠の2つの短辺それぞれの中心に②を垂直に固定する。

柱ビス打ち

ビスかくぎで2点ずつ留める

4. 工程3で固定した②の上部2カ所をつなぐように③を固定する。

5. 完成したフレームに必要なサイズにカットした防虫ネットや寒冷紗をかける。
ネット

6. タッカーという工具で防虫ネットや寒冷紗の裾をフレームに固定する。タッカーはDIY用の大型のホチキスで、100円ショップで工作用のものが手に入る。
まず、長辺の片側の裾を留める。次に、ネットをピンと張った状態で反対の長辺の裾を留める。最後に左右の余ったネットを折り返して短辺を留める。
タッカー

7. 余った余計な部分はカットする。
カッター

8. これで完成。
完成

保温用ビニールや不織布で作ってもOK

今回製作した防虫ネットは、128穴のセルトレー3枚分のサイズだが、サイズは使う人の好みで作ればOK。小さな家庭菜園なら育苗だけではなくそのまま畑に置いて収穫まで防虫に使える。U字ピンを使ってフレームを地面にしっかり固定することもできる。
今回は防虫ネットとして紹介したが、保温用にビニールフィルムや不織布、強い日差しを避けるための遮光ネットを張ってもいいし、風よけにもなる。幅広くアレンジできるのもいいところなのだ。

防虫ネット正面

場所を選ばず設置できるので庭先やベランダでの育苗にも向く

キャベツやブロッコリーなど、いつも虫食いだらけでうまく作れなかったというみなさん、トンネルを作るのが手間に感じていた家庭菜園愛好家のみなさん、この持ち運べる防虫ネットをぜひお試しあれ。簡単、手軽に害虫をシャットアウトできますよ。

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