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ナガエツルノゲイトウとはどのような雑草? 特徴や駆除方法を農家が解説

鮫島 理央

ライター:

ナガエツルノゲイトウとはどのような雑草? 特徴や駆除方法を農家が解説

日本の自然環境や農業に深刻な影響を与えているナガエツルノゲイトウ。南アメリカ原産の外来植物で、強力な再生力と広がりやすさから、各地で問題視されています。一度定着すると駆除が困難で、特に水田や水路においては、迅速かつ適切な対策が求められます。本記事では、ナガエツルノゲイトウの特徴から、効果的な防除方法や注意点までを詳しく解説します。ぜひ本記事を参考にして、地域の自然環境を守るための取り組みに役立ててください。

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ナガエツルノゲイトウの特徴とは?

ナガエツルノゲイトウは、南アメリカ原産の多年草で、ナデシコ目ヒユ科に属します。アメリカ合衆国をはじめ、世界各地に広がっていることから「地球上で最悪の侵略的植物」とも呼ばれるほど拡大力・再生力の強い植物。日本には観賞用の水草として持ち込まれましたが、現在では外来種として各地に定着し、さまざまな問題を引き起こしています。

ナガエツルノゲイトウの茎は中空構造になっており、水に浮くことで流れ着いた場所で容易に繁殖します。高さは0.5~1メートルに達し、わずかな根や茎の断片からも再生する驚異的な生命力を持っています。ナガエツルノゲイトウは2005年に特定外来生物に指定され、行政が主体となって駆除が進められていますが、その再生能力の高さから難航しているようです。

ナガエツルノゲイトウが繁殖することの影響や問題点

ナガエツルノゲイトウは、日本の生態系や農業に深刻な影響を与える外来植物です。この植物が繁殖すると在来植物の成長を阻害し、田んぼに侵入し繁茂するとお米の収穫量が減少、場合によっては収穫が不可能になることもあります。

また、水路を塞ぐことで水害のリスクを高め、取水口が詰まることで水田や畑への水の供給ができなくなってしまうことも。さらに、ため池で繁殖すると水面を覆い尽くし、水質が悪化してしまうほか、繁茂したナガエツルノゲイトウが船舶の航行も妨げてしまう可能性があります。

ナガエツルノゲイトウの見分け方

ナガエツルノゲイトウの見分け方は、いくつかの特徴を押さえて行います。
まず、葉は節から1対ずつ付き、先端がややとがっています。茎は中が空洞で、節には短い毛が生え、表面は滑らかです。花は白く小さな球状で、葉のわきから1~4センチの花柄が伸びて咲きます。

似た植物にはツルノゲイトウやアメリカタカサブロウ、タカサブロウ、スベリヒユやシロツメクサなどがありますが、葉や花の形、花柄の有無や色合い、茎の質感などで区別可能です。「ナガエツルノゲイトウかな?」と思った植物がある場合は、写真を撮って地域の農協や行政に相談するようにしましょう。

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ナガエツルノゲイトウを駆除する際の考え方

ナガエツルノゲイトウは非常に強い再生力・繁殖力を持った特定外来生物です。駆除を行う際は、徹底的に根絶することが何よりも大切になります。

早期発見・早期駆除を徹底する

ナガエツルノゲイトウの駆除では、早期発見・早期駆除がとても大切です。繁殖力が非常に強いナガエツルノゲイトウは、放っておくとあたり一面に繁茂してしまうほか、ちぎれた茎や根が水に流され、生息域がどんどん広がっていってしまうおそれがあります。

繁茂したナガエツルノゲイトウを駆除するには大変な労力と金銭がかかってしまいますが、成長初期や小規模群落であれば比較的容易に駆除が可能です。特にナガエツルノゲイトウが発見されている地域や、その近隣地域では、定期的に見回りを行うなど早期発見・早期駆除を心がけましょう。

継続して駆除を実施する

ナガエツルノゲイトウの駆除は、根絶するまで継続する根気強さが必要です。ナガエツルノゲイトウは再生力が非常に強く、少しでも生き残った個体がいれば再び繁殖する恐れがあります。密度が低下したからといって油断せず、完全に取り除くまで対応を続けることが重要です。一度繁殖を許すと再び広がるため、定期的な監視と対応をしなくてはなりません。

周囲へ拡散しないよう対策を講じる

ナガエツルノゲイトウの拡散を防ぐには、早めの対策が必要です。この植物は広がりやすく、放置すると周囲に大きな迷惑をかけます。特に農業用の水路では、下流や他の農地にも広がりやすいため、植物の破片が外に出ていかないよう網を設置するなど、しっかりと対策を講じることが大切です。

ナガエツルノゲイトウを駆除するうえでの注意点

ナガエツルノゲイトウは茎や根の破片から再生し繁殖することから、駆除を行うときもさまざまな点に注意して行わなくてはなりません。

再生力の高さに注意

ナガエツルノゲイトウは非常に再生力が高く、茎は1メートルほどに成長し、枝分かれも頻繁に起こります。短期間で群落が広がり、引き抜いても残った根や茎の断片から再び再生する力があります。駆除が不十分だと再生して再び繁殖するため、完全な駆除が求められます。注意深く取り組まなければ、すぐに元の状態に戻ってしまうリスクが高い植物です。

拡散力の高さに注意

ナガエツルノゲイトウは非常に拡散力が強く、水に浮きやすい中空構造が特徴です。このため、ちぎれた小さな断片からでも再生し、増水や水流によって広範囲に広がるリスクがあります。特に、川や水路での管理が重要で、早期に対応しなければ、あっという間に周辺地域に拡散してしまいます。

特定外来生物に指定されている!

ナガエツルノゲイトウは特定外来生物に指定されており、栽培や保管、運搬、放出などが法律で禁止されています。適切な手続きを経ずにこれらの行為を行うと、法律違反となるため、注意が必要です。この植物は環境に大きな影響を与えるため、厳格な管理が求められています。取り扱いには十分な配慮を行い、法的な規制を順守することが重要です。

駆除する際、事前の手続きが必要

ナガエツルノゲイトウの駆除には、事前に手続きが必要です。地方公共団体が駆除を行う際は、外来生物法に基づく「防除の確認・認定」の手続きを経る必要があります。

地域住民が小規模な駆除を行う場合は、広報誌や回覧板を通じて事前に周知しなくてはなりません。基本的に特定外来生物の運搬は禁止されていますが、小規模な駆除では、防除目的の運搬が事前に公表されていれば実施できます。また、農業に関する駆除の場合は、公表は不要となります。

駆除した植物は、袋に密閉して焼却施設に運ぶか、防除した個体が根付いたり断片が拡散しないよう、袋に入れたまま枯死させます。この際、カラスなどに袋が破られないよう、防鳥ネットを設置するなどして対策するとよいでしょう。

ナガエツルノゲイトウを駆除する主な方法

ナガエツルノゲイトウを駆除する主な方法を三つ紹介します。

水路や河川の場合は、抜き取り・はぎ取りを行う

水路や河川など除草剤を使うことが出来ない場合の駆除には、群落の規模や状況に応じて、抜き取りやはぎ取りを行います。小規模な群落では人力で作業を行いますが、大規模な群落では重機など建設用機械を使って駆除を行います。
抜き取り・はぎ取り駆除は、ナガエツルノゲイトウの成長初期や群落の規模が小さい場合に効果的な方法ですが、駆除時に破片が残らないよう丁寧に除去することが重要です。

また駆除を行う際は、水路や河川の下流側にオイルフェンスやダストフェンスを設置して、下流域への流出を防がなくてはなりません。取り除き陸上に引き上げたナガエツルノゲイトウは、地面に根付いてしまわないように、厚手のブルーシートやアスファルトの上に置くように心がけましょう。

水田や畦畔(けいはん)の場合は除草剤を散布する

水田や畦畔でナガエツルノゲイトウを駆除する際には、除草剤を使用します。実際に除草剤を散布する際は、各都道府県の防除指針に従い、フロルピラウキシフェンベンジルを含んだ水稲用の初中期剤と中後期剤を組み合わせた体系処理を用いましょう。

ナガエツルノゲイトウがまん延している圃場では、水稲収穫後にグリホサートカリウム塩液剤などの非選択性茎葉処理剤を散布することも効果的です。また、畦畔ではラウンドアップなどの非選択性除草剤を使用することで効果的に防除できます。

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水田への侵入・流出を防止する

ナガエツルノゲイトウが水田に侵入し、さらに他の水田や水路に広がるのを防ぐためには、徹底した対策が求められます。まず、かんがい用水を経由して水田に侵入することがあるため、給水栓にネットを取り付けて、ナガエツルノゲイトウの断片が流入するのを防ぎます。さらに、水田で発生した茎の断片が流出し、流域全体に拡散する可能性もあるため、断片を水田から外に出さないよう注意が必要です。

農機に断片が付着している場合、次の作業場所に持ち込まないように、水洗いなどで確実に除去することが大切です。また、田植え前に水を抜く際には、落水口にザルやネットを設置して、茎断片が下流に流れ出るのを防ぎます。これらの対策を講じることで、ナガエツルノゲイトウの広がりを効果的に抑制できます。

ナガエツルノゲイトウの駆除は、根絶するまで続けていくことが大事

ナガエツルノゲイトウは、その強い再生力と拡散力から、日本の農業や自然環境に深刻な影響を及ぼす特定外来生物です。水田や水路での侵入や拡散を防ぐためには、給水栓にネットを取り付ける、農機の洗浄を徹底する、落水時にザルを設置するなど、細心の注意が求められます。さらに、抜き取りや除草剤を使用した駆除も効果的ですが、中途半端な対応では再生を許してしまうため、完全な駆除を目指して取り組むことが重要です。

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