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生かせば資源! 野菜残渣を使った土づくりと注意点【畑は小さな大自然vol.106】

生かせば資源! 野菜残渣を使った土づくりと注意点【畑は小さな大自然vol.106】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。野菜の収穫期間が終わると大量に野菜残渣(ざんさ)が出ることがありますよね。残渣の処理方法を誤ると、病害虫の温床となって畑全体に拡大させてしまうことがあります。そのリスクを避けるために、残渣を焼却する、ゴミとして出す、土地の隅に野積みしておくなどの処理方法もあるのですが、これは非常にもったいないです。野菜残渣はうまく生かすことで、病害虫のリスクを低くしながらも土づくりの大きな味方になります。今回は野菜残渣を片付けるときの注意点、そしてこれを生かした土づくりのポイントについて解説していきます。

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なぜ野菜残渣は注意が必要なのか

水分量が多いもの、病気になったものは特に注意が必要

野菜残渣とは、栽培の後に収穫せずに残る葉や茎、根の部分のことです。これらの野菜残渣をそのまま畑に放置していたり、野積みしておいたりするだけですと、場合によってはそこが病害虫の温床となり、近くで栽培している野菜や、次作以降の野菜の生育に悪影響を及ぼしてしまうことがあります。残渣が水分を多く含んでいる場合は腐敗しやすいため、特に注意が必要です。腐敗した際に発生するガスやそこで繁殖する病害虫が野菜に生育障害をもたらすためです。
また、病気で枯れてしまった野菜の残渣にも注意が必要です。土壌伝染性の病気ですと、適切に処理をしないと翌年も同じ病気が発生したり、被害を拡大させたりしてしまうこともあります。

残渣を焼いたり、捨てたりするのはもったいない

キャベツの残渣

野菜残渣による病害虫の発生リスクを下げるために、焼却処分する、ゴミとして出す、山や空き地に投げ捨てる、圃場(ほじょう)の空いている場所に野積みしておくという選択肢もあるでしょう。特に土壌伝染性のある病気が発生してしまった残渣を処理するのに、このような手段をとる人は多いと思いますが、僕は基本的にこのような処理の仕方はおすすめしません。
確かに木質化したナスの茎などは分解にとても時間がかかるので、そういった残渣を燃やすのは良い選択肢かと思いますが、それ以外の水分量が多い残渣をわざわざ乾燥させて燃やすのは結構大変です。何よりも野菜残渣は良質な土づくりの資材になりますので、燃やしたり捨てたりしてしまうのはもったいないです。野菜残渣を使って土づくりをすることで、逆に病害虫が発生しにくい土壌環境にしていくことができますので、ぜひ土づくりに生かしてほしいと思います。

野菜残渣を土づくりに生かすメリット

野菜残渣は微生物にとって良い餌になる

野菜残渣が病害虫の温床になりやすいということは、裏を返せばそれだけ微生物や虫にとって良い栄養源であるということです。野菜残渣の置かれているその環境が嫌気的(酸素を含まない状態)であれば病害虫が増えやすくなりますし、好気的(酸素を含んでいる状態)なら善玉菌や有用微生物と言われるような、野菜と相性の良い微生物を増やすことができます。これらの微生物には病害虫を捕食したり、抗生物質や抗虫物質を生み出したりするものも多いため、結果的に病害虫の繁殖しにくい土壌環境を築くことができます。
 

野菜残渣を利用した土づくりの方法と注意点

では具体的な野菜残渣を用いた土づくりの仕方と、それぞれの注意点について解説したいと思います。

土の中にすき込む、埋める

土に漉き込もうとしているとうもろこしの残渣

野菜残渣の処理の仕方としては最も一般的な処理方法かと思います。特に耕運機を持っている場合は、耕運の作業と野菜残渣の切断、土づくりが一遍にできるため、効率的なやり方と言えます。機械がない場合でもスコップで穴を掘り、そこに20~30センチほどの長さにカットした野菜残渣を入れ、土を被せるというやり方で処理することができます。
 
注意点は、埋めた場所の水はけが悪いと腐敗して、土壌環境を悪化させる原因になってしまうことです。元田んぼの畑や粘土質の土壌では嫌気的な環境になりやすいので、特に注意が必要です。対策としては、まずはその土地全体の周囲に溝を掘るなどして、土地自体の水はけを改善することです。
また、意外と見落としがちですが、その土地の風通しが悪くても土が腐敗しやすくなる原因になります。特に家庭菜園ですと、周囲に生垣やヤブがあることで風通しが悪くなり、病害虫の発生しやすい環境を作ってしまっていることが多いです。生垣やヤブやぶを全て排除するのではなく、何カ所か穴を開けて風の通り道を作ってやるだけでもかなり改善されますので、ぜひやってみてほしいです。
 
また、野菜残渣と一緒に水分の少ない落ち葉や枯れ草、もみ殻くん炭などの炭を混ぜ込んでやることで、空気層を保つことができ、好気的な環境を作りやすくなります。特に粘土質の土壌では炭を入れることがとても有効な土壌改善方法ですので、試してみてください。

もう一つ注意点として、野菜が病気で枯れてしまった場合にこの方法で処理すると、病原菌の胞子を土壌に広げてしまうリスクがあります。特に萎凋(いちょう)病や青枯(あおがれ)病、軟腐(なんぷ)病などの土壌伝染性のある病気では注意が必要となりますので、のちに紹介する堆肥(たいひ)化する方法での処理が無難かと思います。
ちなみにですが、うちの畑ではこの方法はあまり行いません。土壌微生物の働きを最大限生かす場合、極力耕す回数を減らすか、耕すとしても10センチほどまでの深さを推奨しているからです。野菜と共生する微生物の菌糸ネットワークが20センチほどの深さに多いとされているため、これを壊さないようによほど土が痩せている場合を除いてはこの方法は使わないようにしています。

土の上に敷く

畝の上に切り刻んで敷いておくだけでも分解されていく

これはあまり一般的なやり方ではありませんが、ほぼ不耕起で栽培しているうちの畑ではよくやる方法です。野菜残渣を30センチ以下の長さに切り刻んで畝の上に敷いておくことで勝手に分解されて、微生物のエサになっていきます。ナスやオクラの木質化した茎のような硬い部分は、折って畝間に敷いています。すでにある程度土ができている場合は、土の中に有機物をすき込まず、その畑に生える雑草や野菜残渣を切って畝の上に敷いていくだけで、勝手に土づくりが進んでいきますし、これがマルチとして土を保湿・保温・雑草抑制する役割も果たしてくれます。残渣を運び出したり、土を動かしたりするような重労働が少ないので、面積の小さい家庭菜園では有効な方法です。

注意点としては残渣の量が多い場合は敷きすぎると腐敗してしまうことがあるので、その場合は落ち葉や枯れ草と混ぜてから敷くか、余分な残渣は堆肥枠に入れて堆肥化させるとよいです。特にキャベツ、白菜、ブロッコリーなどの残渣は水分量も多く、腐敗しやすいので注意が必要です。

堆肥化させる

うちでは黒土と野菜残渣を混ぜ合わせて堆肥化させている

畑にとって最もリスクの低い処理方法です。もし土壌伝染性の病原菌が残渣内にあったとしても、発酵させて60~70度以上まで温度を上げればほとんどの病原菌は死滅します。特に野菜が病気になってしまった場合は、堆肥化させてから畑に戻すのが無難です。野菜残渣だけだと水分量が多く腐敗しやすいので、うちでは畑の黒土や雑草、家庭の生ごみ、残飯と混ぜて堆肥化させています。
黒土がない場合は、野菜残渣を同量の落ち葉や稲わらなどと混ぜて米ぬかをかけ、踏んで圧縮するやり方がおすすめです。ビニールシートをかけておくと雨による過湿や日射による乾燥から守ることができるので、発酵が安定して進むようになり、温度も上がりやすくなります。
僕はビニールシートがゴミになるのが嫌なのでダンボールを数枚上から被せていますが、この方法でも野ざらしにするより堆肥化が早くなります。

野菜の片付けと土づくりが同時にできる

野菜残渣はなんといっても野菜作りをする限り必ず発生する有機物資材ですので、それを生かさない手はありません。どうせ片付けなければいけないのであれば、ただ処分するのではなく、その特徴を生かして土づくりにつなげてしまえば、一石二鳥以上の効果があり、片付けに対するモチベーションも変わってきます。ぜひ野菜残渣を使って土づくりしてみてください。

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