ユーザー車検なら車の維持費を節約できる
わが家には3台の車がある。ファミリーカーであるトヨタの8人乗り4WDと、妻が乗る軽のワンボックスカー。それから、自給自足的暮らしをしていればどうしたって必要になる軽トラックだ。少ないお金でケチな暮らしをしていると言いながら、3台の車はぜいたくと言われるかもしれない。でも、そうではないんだ。古い車を安く手に入れて、大切に乗っているだけなんだ。トヨタの4WDは20年前の車で走行距離は30万キロ、軽のワンボックスカーは17万キロ、軽トラックは11万キロだ。土地の広い田舎に暮らしていれば、都会のように駐車場に高いお金を払う必要もない。多少、維持費はかかるけれど、簡単な整備は自分でやるし、タイヤを交換するときはまだまだ溝が残っている中古タイヤを安く手に入れる。
それから、車を所有していれば2年ごと(新車の場合、初回は購入から3年目)に必ず受けなくてはいけない車検も自分でやる。いわゆる「ユーザー車検」だ。20歳で初めて自分の車を持ってから、ずっとそうしている。それで整備不良による車のトラブルがあったことは、これまで一度もない。自分で車検を受けるというと、難しそうに思う人もいるかもしれないが、じつは専門的な知識や技術はほとんど必要ない。誰でも簡単に受けられるのだ。
今回はこのユーザー車検のメリットや方法について、多くの農家が持っているであろう軽トラックを例に紹介しよう。近々、私の軽トラックも車検を受けなくてはいけないのだ。
ユーザー車検をやる3つのメリット
費用を節約できる
ユーザー車検をやるメリットのひとつは費用を節約できること。
車のディーラーや整備工場に車検を依頼した場合、自動車重量税・自賠責保険料・申請手数料いった法定費用のほかに、店が独自に設定する基本料金や点検・整備費用がかかる。基本料金は業者によって呼び方やカバーする範囲が異なり、料金にも幅がある。点検・整備費用は、交換が必要な部品による。エンジンオイルやライトの電球の交換で、部品代と工賃で数千円~。こまごまとしたものを合わせていくと数万円かかる場合もある。
もちろんユーザー車検でも点検・整備は必要だが、自分でできることもあるし、車検を通すだけであれば、保安基準に適合するように必要最低限の整備をしておけば問題ない。つまり、普段乗っている車に何も問題がなければ法定費用だけで済むのである。
■軽トラックのユーザー車検にかかる法定費用(2024年9月時点)
- 自動車重量税 6600円(新車新規届出から13年未満の車)
- 自賠責保険料 1万7540円(24カ月)
- 申請手数料 2200円(検査手数料1800円+技術情報管理手数料400円)
合計 2万6340円
そもそも車の整備は、必ずしも車検のときに行う必要はない。普段から車に乗っていれば、調子が悪いときには気が付くし、消耗した部品は、その都度交換すればいい。また、車検とは別に12カ月点検、24カ月点検という決められた項目の点検が法律で義務付けられており(受けなくても罰則はない)、それをきちんとしていれば、改めて車検のときに整備する必要はないのだ。なお、業者へ車検を依頼する場合、同時に24カ月点検を行うのが一般的で、点検整備費用に含まれる。
時短になる
2つ目のメリットは短時間でできることだ。
軽自動車の車検は、各都道府県にある軽自動車検査協会で行っている(普通自動車やオートバイは陸運局)。ユーザー車検を受ける場合、協会のホームページにある検査予約システムで希望する日時に予約を入れ、当日に車を持っていけば、書類の作成や待ち時間を入れても車検は1時間程度で終わる。車検を業者に依頼すると、数日車を預けなければならないことが多いが、ユーザー車検なら当日わずか1時間ほどで終わるのである。
スキルが身につく
3つ目のメリットは自分の車に詳しくなれることだ。
ユーザー車検に専門的な知識や技術は必要ないといったが、車検に備えて一通り車をチェックするだけでも、自分の車の状態を詳しく知ることができる。それで、何か不具合が見つかれば、業者に整備をお願いしてもいいのだが、自分でやってみれば知識もつく。どんなことだって最初はだれでも素人だ。でも、何だってやってみればそれなりにできるようになるものである。車検も、整備も、できることがあれば自分でやったほうがいい。どんなスキルでもないよりはあったほうがいい。
ユーザー車検の流れ
改めて、ユーザー車検を受ける際の流れを確認しよう。
①予約を入れる
予約は、車検証の有効期間が満了する日の1カ月前(2025年4月1日以降に受検する場合は2カ月前)より後の日を予約日として設定できる。
予約はなるべく午前中に入れることをおすすめする。検査時間は、平日の9時~10時15分、10時30分~12時、13時~14時15分、14時30分~16時の4つのラウンドに分けられており、希望する時間に予約を入れられるが、できれば9時からの第1ラウンドにする。なぜなら、何か問題があって、車検に通らなかった場合でも、その日のうちに整備をして解決できることが多いからだ。検査は、当日2回まで受け直すことができる。
よく車検で引っ掛かるケースにヘッドライトの光軸のズレがある。この調整は数分あればできる。タイヤの溝が減っていた場合なども、近くのカー用品店に行いけば1時間程度で交換してくれる。14時30分からの第4ラウンドだと、問題があったときに整備して再検査を受ける時間がなくなってしまうのだ。
②必要書類をそろえる
予約をしたら必要な書類をそろえよう。
■軽トラックのユーザー車検に必要な書類
- 自動車検査証(車検証)
現在の車検証の原本。 - 軽自動車税(種別割)納税証明書
期限内のものの原本。2023年1月から納付情報は電子化され、軽自動車税納付確認システムに登録されているため、原則は提示の必要なし。ただし提示が必要になるケースもあるため、準備しておくと安心だろう。 - 継続検査申請書
協会のホームページからダウンロードして印刷し、記入例を参考に記入する。 - 自動車重量税納付書
協会のホームページからダウンロードして印刷し、記入例を参考に記入、当日窓口で自動車重量税を収める。 - 軽自動車検査票
当日窓口で入手する。 - 自動車損害賠償責任保険証明書(自賠責保険証)
有効期間が残っている現在の自賠責保険証と、新たに加入した24カ月の自賠責保険証が必要。当日、検査場の敷地内にある出先機関の窓口や、検査場近くの行政書士事務所などでも手続きが可能。 - 点検整備記録簿
12カ月、または24カ月定期点検の内容を記録した用紙。参考資料として提示を求められるが、なくても車検は受けられる。提示がない場合、車検証の備考欄にそのことが記載される(特に問題はない)。用紙に決まった書式はなく、インターネットからもダウンロードできる。
ユーザー車検当日の流れ
当日は予約した検査時間の30分前には協会に着くように向かい、申請手数料の支払いや受付を済ませる。窓口で予約の確認ができると、検査を受けるラインを案内してくれる。
ありがたいのは、ユーザー車検に慣れていない人には、サポートをつけてくれることだ。
「次はスピードメーターの確認です。メーターの針が40キロになったらパッシングをしてくださいね」などと、車の横に人がついて、ひとつひとつ検査方法を案内してくれるのだ。私は、これまで何十回とユーザー車検を受けているが、いまでもサポートをつけてもらっている。ユーザー車検を受ける人の多くは素人で、協会としてもサポートをつけたほうがスムーズに進められるのだろう。そういうわけなので、初めての人でも安心して車検を受けられるのだ。
車検で行われる検査は次のようなものである。
- 車台番号や原動機(エンジン)の型式の確認
- 車体の形状やサイズが軽自動車の規格に収まっているか
- 灯火類、ワイパー、クラクションなどの保安装置やタイヤに問題がないか
- 排気ガスの検査
- サイドスリップ検査(ハンドルをまっすぐ保持した状態で直進した場合、どれくらい左右にずれるか)
- スピードメーター、ヘッドライト、ブレーキの検査
- 下回り検査(オイル漏れやかじ取り装置のがたつきなどのチェック)
いずれも検査コースにいる検査員の目視やテスターによって行われ、ドライバーは表示機やサポートしてくれる人の案内に従って決められたラインをゆっくり進んでいけばいい。
検査の受け方については、協会のホームページに動画付きで詳しく解説されているので、車検を受ける前に目を通しておくと、初めてでもとまどわない。
問題があっても調整・整備して再検査を受ければOK
車検はあくまで車が法律で定められた保安基準に適合しているか確かめる検査で、車の安全性や調子を見るものではない。ちょっと極端に言うと、車検を受けた翌日にブレーキパッドが寿命を迎えるとわかっていても、当日にきちんとブレーキが利けば車検は通るのである。安全に走行するための整備は、車検でチェックするのではなく、12カ月点検や24カ月点検で行うものである。だから、法律で義務付けられている。
すべての検査項目を問題なくクリアできれば、新しい車検証とフロントガラスに貼る検査標章を交付してもらい、車検は終了だ。
再度の検査も可能
仮に何か問題があって検査をクリアできなかった場合でも心配する必要はない。検査官が問題のあった箇所を教えてくれるので調整、整備して再度検査を受ければよい。
軽自動車検査協会や運輸支局の近くには予備検査場といって、車検の事前検査をしてくれる民間の整備工場もあるので、ヘッドライトの光軸の調整や電球の交換などはそこで手早くやってくれる。当日では解決できないような問題であれば、業者に整備を依頼して、後日、改めて車検を受ければいい。その場合、再度検査手数料1800円がかかる。
ちなみに私が、ユーザー車検を1回で通らなかったケースとしては、ヘッドライトの光軸のズレ、さびによる腐食でのフレームの穴あき、ドライブシャフトブーツの破れなどがある。
ヘッドライトの光軸は予備検査場で調整、穴あきはその日のうちに自分で溶接して解決した。ブーツ破れも当日に協会の近くの自動車修理工場で直してもらってクリア。というように、車検を受けることで、定期点検と同様に、自分では気が付かなかった車の問題を見つけることもできるのだ。
自給自足的暮らしとは、必要なものをできるだけ自分で生産してまかなう暮らしである。それは食べ物や住まいなどを作ることだけではない。やれることはなんでもやるということだ。ユーザー車検もそのひとつ。お金を節約できて超簡単! そのうえスキルが身につくのだからやらない手はないのである。