開放ハウスでもしっかりCO₂供給、収量もアップ
埼玉県・越谷にある「越谷いちごみらい園」は、令和2年12月に高設いちご栽培システムを販売する株式会社アグリスの子会社である株式会社いちごみらい舎によって設立。いちごを中心とした農作物生産や農産物の加工、いちご観光農園の運営などを行っている。中心となる増森圃場は敷地面積2万平米、作付面積も1万平米を超える広大な農園で、2023年からは観光農園としての営業を開始。1月から5月ごろまで、最大10品種のいちごを食べ比べることができ、休日には1日500人ほどの来園があるという。
「私はもともと九州でいちごの多段式高設栽培システムを扱う会社に勤めていまして、越谷での新たな試みとして『いちごみらい舎』の設立に携わりました。越谷でのいちご栽培は今年で3作目になります」
越谷市では、同市増林地区の市道沿いに「都市型農業」の魅力を支援・発信していく事業を展開。「越谷いちごみらい園」もその一環として進出しており、一般的な5月ごろまで収穫をおこなうハウスのほか、通年で生育を行う周年ハウス棟での栽培も手掛けている。
いちごのハウス栽培において、CO₂の濃度調整は重要事項。CO₂は植物の光合成に必要不可欠だが、閉鎖されているハウス栽培ではCO₂が不足し、生育不良になることがある。そのため、CO₂濃度を外気よりも高めに設定し、効率的に収穫量を増やすことができるCO₂発生装置を導入している農園も多い。
「当園にも化石燃料を燃焼させるタイプのCO₂発生装置を導入しているハウスもあります。ですが、化石燃料を燃焼させるタイプの場合、冬場の締め切ったハウスでは有効ですが、夏の時期の開放したハウスではあまり良い効果を期待できません。また、要はストーブのようなものですから熱も発生します。越谷のような気温が高くなる場所においては、燃焼タイプのCO₂発生装置は不向きだったんです」
そんな中、越谷いちごみらい園では西部技研のC-SAVE Green®の実証実験に参加。夏の暑い時期にも生育が必要な周年ハウス2棟に導入した。
「そもそも、私たちのようないちごの施設栽培の場合、堆肥や微生物の分解などによるCO₂供給が無いため、CO₂は不足します。C-SAVE Green®は、燃焼タイプではないので熱の発生が少なく、ダクトを通して株元に直接CO₂が供給されるため、開放しているハウスでも効果が期待できました。当園では、燃料を燃焼させるタイプ、液化炭酸ガスを使ったタイプも導入していますが、他の方式と比較しても収量にそん色はありません。CO₂発生装置を使わない場合との比較では、明らかに収量が増えますし、果実のツヤや大きさにも差が出ていると思います」
C-SAVE Green®では、ハウスを開放していても濃度600~700ppmのCO₂を必要な株元に安定して供給することができる。機器もキャスターで移動でき、タイマーで動作するため機器の操作などもあまり必要ないという。
「先日、落雷があって安全装置を少し操作したくらいで、普段はあまり操作することはないです。燃焼するタイプの機器は不完全燃焼になっていないかなどを気にしなければならないですし、灯油などの供給メンテナンスが必要になります。そういった面でも電気だけで稼動し、不完全燃焼なども気にしなくていいのは楽ですね」
C-SAVE Green®を導入し、そのさまざまなメリットを実感しているという椎葉さん。運用的なメリットのほかに、脱炭素に適したクリーンな機器であることも、導入の大きな理由だと話す。
「当園の位置づけとして、実践の場であるということも導入の大きな理由のひとつです。SDGsが叫ばれる中、CO₂をたくさん発生させているというのはあまり聞こえのいいものではありません。C-SAVE Green®は、空気中に存在するCO₂を集めて供給しているので、新たにCO₂を発生させているものではなく、脱炭素を目指すクリーンな農業に最適化しています。そのような面でも、C-SAVE Green®を活用することは、大きな意味があると考えています」
独自技術で大気のCO₂を吸着して濃縮・供給、クリーンな農業を実現
外気中のCO₂を集めて作物の株元に供給するクリーンな機器C-SAVE Green®。この機器がどのような経緯で開発されたのか、開発元の西部技研の百武迪亮さんと田ノ上亨さんにも話を聞いた。
西部技研ではこれまで、ハニカム成形+吸着材添着・担持技術を中心にした空調や除湿などの装置を製造・販売してきており、農機具への参入はC-SAVE Green®が初めて。同社では大気中の処理したいガスを吸脱着することができる機能性ハニカムのローター化技術を保有しており、C-SAVE Green®はその技術を用いて大気中のCO₂を吸着し、作物に供給している。
「ハニカムをローター化する私たちのコア技術を使って、例えば除湿などの機器を生産してきましたが、吸着材を変えることでCO₂を除去する研究を進めていました。その技術を応用して、農業分野でCO₂供給をクリーンに行うことができるC-SAVE Green®を開発しました。通常、ハウス栽培ではCO₂濃度が下がっていく一方です。C-SAVE Green®では、大気中のCO₂濃度400ppmよりも高い、600~700ppmのCO₂を直接株元に送ることができます。株元に送るのでハウスを開放していても影響は少ないですし、燃焼式のように熱が発生せず、常温かつ局所施用で送ることができることもメリットです」
農業経営においては、コスト面も気になるところ。導入に関しては各種補助金などを使うことで抑えることができ、ランニングコストに関しても他方式と同程度に抑えることができているという。
「ランニングコストも、旧来の燃焼式と変わらない程度まで下げることができました。メンテナンスも3年に1回、ローターの洗浄をしていただくだけで、普段のメンテナンスは基本的に必要ありません。電気で駆動するので、燃焼式などのように燃料供給の手間もありません。ローターの交換は5年に1回を推奨していますが、本体自体は農機具としてなるべく長くお使いいただけるように設計しています」
近年、さまざまな企業でSDGsへの取り組みが盛んになっているが、農業においても例外ではない。特に脱炭素への取り組みは急務のひとつとも考えられている。
「環境に配慮しながら農業を推し進めていきたい法人農家の方に、ぜひお勧めしたいと考えています。農水省も推進している『みどりの食糧システム戦略』の中で、カーボンニュートラルに対応することを目指しており、園芸施設については2050年までに化石燃料を使用しない施設への完全移行を目指すとされています。そういった流れの中で、私たちの技術や機器が貢献できればと考えています」
実証実験を重ねて、いちご以外の作物にも活用を
C-SAVE Green®を導入し、さまざまなメリットを実感したいちごみらい舎の椎葉さん。これからもC-SAVE Green®を活用して、収量アップなどのさらなる飛躍を図る。
「やはり環境に優しいという点、そして暑い時期のハウスを開放した状態でも効果を期待できるところは、大きなポイントだと思います。特に法人化している大型農場などは、今後、環境に配慮した農業を実践できているかどうかも非常に重要なポイントになってきます。そういう面でも非常に導入のメリットは高いのではないでしょうか。私たちも今後、しっかりとCO₂コントロールをして、収量のアップや果実の質を上げていきたいと思います」(椎葉さん)
西部技研では、C-SAVE Green®をさらに活用し、今後はいちご以外の作物にも対応できるようにしていく予定だ。
「実証実験で複数年のデータが取れているものはいちごですが、今後もいろいろな作物を試してみて、活用していただける作物の範囲をどんどん広げていきたいですね。作物によって、どこにCO₂を施用させることが良いのか変わってくるので、その最適解をきちんと確認しながら、多くの農家の方に貢献できるように努めていきたいと思います」(百武さん、田ノ上さん)
新技術によってCO₂供給機器に革命を起こし、クリーンな農業を実現するC-SAVE Green®。興味を持たれた方は、西部技研まで問い合わせてみてはいかがだろうか。
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製品紹介:大気中二酸化炭素(CO2)濃縮・供給装置
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