過酷さを増す夏の施肥作業、プラ被覆殻問題もドローンで解決へ
以前から夏場の高温は農作業の大きな負担でしたが、近年は地球沸騰化と言われるほどの猛暑で、屋外での作業は年々過酷になっています。一方、水稲栽培では穂肥の時期にあたり、収量や品質を確保するためにはどんなに暑くても追肥は欠かせません。
緩効性肥料のうち、プラスチック等でコーティングされた基肥一発肥料被覆肥料は、作物の生育に合わせて肥効を適切にコントロールできることから、減肥による環境負荷低減や農作業の省力化を可能とする技術として、農業生産現場において広く使用されてきました。しかし、その多くはプラスチック被覆肥料であり、使用後の被覆殻が圃場から海洋に流出することによる、環境への影響が懸念されています。この問題を受けて、肥料関係団体では「2030 年にはプラスチックを使用した被覆肥料に頼らない農業に。」を目標に、プラスチック被覆肥料の代替技術の開発・普及に取り組んでいます。
片倉コープアグリ株式会社では、各種代替技術があるなかで、近年、農業現場で普及が進んでいるドローンに着目。空中散布に適合した肥料を使った施肥作業の省力化に取り組んでいます。そこで使われているのが、液状肥料の「CORON(コロン)」と粒状肥料の「空散追肥306」です。いずれも窒素成分が高いため、タンクへの補給回数が少なくワンフライトで広範囲に散布することができ、夏場の施肥作業の時間と労力を大幅に省力化します。
ドローンを使った肥料散布の実現性
ドローンによる農薬散布が普及する一方で、肥料については農薬よりも散布量が多いため補給回数が多くなるなど、導入にはいくつかの課題がありました。しかし、近年のドローンの進化により、肥料の空中散布が現実的なものになっています。
片倉コープアグリの植田さんは、「近年、ドローンは進化を遂げています。一部の機種では、タンクの積載量が増え、ノズルがアトマイザー方式になり、液滴が手元でコントロールできるようになりました。当社の液肥や粒状肥料もドローン散布に適合可能な銘柄としておすすめしています。」とドローン施肥の実現性を語ります。
また、これまで一発肥料だけで問題がなかった圃場でも、夏の高温により終盤に肥料切れが起こるなどの現象が見られることがあります。同社の高窒素製品で穂肥として使える「CORON」と「空散追肥306」はこうした課題にも対応し、夏場の施肥作業を省力化しながら効果的に行う道筋が見えてきました。
「これらの資材は、農薬散布に使っているドローンがあればすぐに導入できます。追肥作業の負担を圧倒的に省力化し、ドローンの稼働率の向上にもつながります」と植田さん。直近の実証実験で、その効果が明らかになっています。
液肥・粒状肥料で産地のニーズに応じた施肥作業の省力化を実現
あらためて「CORON」と「空散追肥306」の特徴を紹介しましょう。
■「CORON」
「CORON」は、希釈倍率2-5倍(v/v)の高濃度散布でも肥料焼けが発生しにくい窒素液肥です。窒素成分が27%と高いので、肥料タンクへの補給回数が少なく省力的です。機械適合性が高く、農業用ドローンだけでなく、無人ヘリコプターやブームスプレイヤーでも利用することができます。
「高窒素肥料として従来施用されている尿素では、作物を肥料焼けさせないために、溶かして施用する場合は、低濃度まで希釈する必要があります。散布液量が増えるとタンクへの補給回数も増えるためドローン散布は課題となっていました。しかし、CORONは高濃度散布(※)が可能なため、大幅に時短・省力化につながります」と植田さん。
(※)散布時の温度や環境によっては、作物に悪影響を及ぼす場合があります。高温で日照の強い場合など、不適と考えられる条件下では散布は避けて下さい。早朝もしくは夕刻等の涼しい時間帯に散布してください。
新潟県佐渡市のJA佐渡管内の農事組合法人では、夏の高温下での施肥作業の省力化のため、従来は水口からの流し込み肥料(液状肥料「おてがるくんシリーズ」)を利用していました。しかし、2023年は記録的な少雨で流し込み施肥ができず、その解決策としてCORONのドローン散布に着目しました。
減肥に取り組み、特別栽培米を生産する同法人では、無機態窒素の施用量をできるだけ低減することも考えての選択です。
同年の実証実験では、慣行区(窒素1kg/10aを2回施肥)と試験区(窒素0.66kg/10aを1回施肥)、出穂10日前ごろの8月5日に穂肥散布を行った結果、減肥をしたにもかかわらず、約88~96%収量を確保し、追肥作業の時間は半分程度に短縮されました。
この結果を受けて、同組合代表理事からは、「人材確保が難しく、特に繁忙期の農作業に遅れを取り、適期の施肥ができなくなりつつある現状で、夏の暑い盛りに早朝から行う穂肥散布の負担を減らせるのは大きなメリット。近年の気候変動で収量が下がる一方で生産コストは上がるなかで設備機械も次々と更新を迎えている。年間の作業を見直す必要があり、ドローンにはとても大きな期待をしている」とのコメントが寄せられています。
同法人では、ドローンによる農薬散布は外部委託していましたが、2024年度は自社でドローン導入に踏み切りました。肥料散布と農薬散布を内製化して、将来的には受託散布も視野に入れています。
■「空散追肥306」
「空散追肥306」は、金属を腐食させにくく機体への負荷が少ない粒状肥料です。粒形の揃いが良く表面は滑らかなので、精度良く散布することができます。従来の粒状肥料のようにタンク内で粒同士が結合して固まりにくく、施用後は速やかに溶けて作物に吸収されます。窒素成分30%の高濃度で10aあたりの散布時間は3~5分と大幅な省力化を実現。
2021年7月に秋田県で行った実証試験では102aの圃場に肥料41kgを、補給やバッテリー交換や調整も含めて、トータル24分で散布を完了しました。
農林水産省の『担い手農家の経営革新に資する稲作技術カタログ』にも採用され、ユーザーからは、使い勝手の面で「従来の動力散布機などによる穂肥作業をそのままドローン散布に置き換えられる移行しやすさ」が評価されています。
環境配慮と持続可能性をサポート
営業職として現場と向き合ってきた経験もある植田さんは、「農業の現状として、高齢化が進み農業従事者が減少している一方で、1人あたりの経営面積が増えており省力化は喫緊の課題です。それを、今、すでに持っているドローンで解決できるのは大きな一歩です」と話します。
「また、マイクロプラスチック問題に対しては、一般消費者の関心が高まり、生産者側にも環境配慮が求められるようになっています。労働環境と地球環境の両面から生産者を支えられるのがドローンの有効活用だと思います」と言葉を続けます。
記録的な猛暑が続いた2024年の夏。海水温度上昇による地球沸騰化が懸念され、令和5年産の米不足も騒がれ、環境保全と米の安定供給が熱望されました。そのアクションとして「空散追肥306」と「CORON」によるドローン穂肥の期待が高まっています。
地域・産地に特化した肥料の商品数の豊富さにも定評がある片倉コープアグリは、ドローン追肥を取り入れた施肥技術で全国の米づくりをサポートしています。
[商品名]
■『CORON』
https://www.katakuraco-op.com/site_fertilizer/products/b_liquid.html#Coronhttps://www.youtube.com/watch?v=2fKFyuCTuBI
■『空散追肥306』
https://www.katakuraco-op.com/site_fertilizer/products/a_aerialspray.html#Kusan306
[問い合わせ先]
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