マイナビ農業TOP > 農家ライフ > 堆肥作りにはこんな落ち葉が向いている~腐葉土のための落ち葉図鑑~【DIY的半農生活Vol.17】

堆肥作りにはこんな落ち葉が向いている~腐葉土のための落ち葉図鑑~【DIY的半農生活Vol.17】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

堆肥作りにはこんな落ち葉が向いている~腐葉土のための落ち葉図鑑~【DIY的半農生活Vol.17】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約5反(50アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。
今回は、堆肥(たいひ)作りのための落ち葉図鑑。本格的な冬が到来し、山林や公園の木々もすっかり葉を落とした今こそ、落ち葉を集めて堆肥を仕込むとき。落ち葉堆肥や腐葉土と呼ばれる植物性の堆肥は、畑の水はけや水持ちを改善し、多様な微生物を育む土壌改良効果が高い。では、堆肥作りにはどんな落ち葉が向いているのか。入手のしやすさと分解スピードに注目して、代表的な落ち葉の特性を紹介しよう。

twitter twitter twitter

土壌改良効果が高い落ち葉堆肥

今の暮らしを始めた2011年の春、移住してきたこの土地にはちょっと傾いた小さな古民家が1軒建っていただけでほかには何もなかった。土の地面と草があるだけのまっさらな庭だった。その最初の冬に、何もない庭に1本の木を植えた。近くの園芸店で入手したカツラの若木だ。遊び半分で始めた私の田舎暮らしを冷やかしに、はるばる金沢からやってきた古い友人が引っ越しの記念にプレゼントしてくれたのだ。ガーデナーをやっている彼が選んでくれたそのカツラは樹高約2メートル。シンボルツリーにふさわしい樹形の整った本株立ち(※)の木だった。

※ 1本の切り株から複数の幹が育つ樹形。

カツラの木

わが家のシンボルツリーとしてあるカツラの木。まだまだ若い

今年、それから14回目の冬を数え、カツラの木は家の屋根より高く育ち、四方に長く伸びた枝には初夏になると数万の葉が芽吹く。その丸い葉は、水と太陽の光によって酸素を生み出し、夏には心地いい日陰を作ってくれる。そして、晩秋になると鮮やかに黄葉して私たちの目を楽しませてくれたあと、その役目を終えて落葉する。

カツラの黄葉

例年、11月上旬に黄葉し、たくさんの葉を落とす

そうやって庭に積もった落ち葉は、風で飛ばされてしまう前に、竹ぼうきで集めてコンポストビン(堆肥箱)に入れる。それが優れた堆肥の材料になるからだ。落ち葉堆肥や腐葉土と言われるもので、畑に施すと水はけや水持ちが改善され、土壌の小さな生き物を育む。土の団粒構造が発達し、いわゆるふかふかの土ができるのだ。
落ち葉堆肥自体に肥料分は少ないが、有機物が土壌中に増えることで電気的に肥料分を吸着する力が強まり、土を肥沃(ひよく)にする働きもある。加えて、落ち葉堆肥に含まれる栄養分をエサにして微生物が増えると、有機物の分解が進み、それが作物の肥料分になる。山野の草木が自然に育つのは、その表土がこうした落ち葉堆肥でできているからだ。

落ち葉堆肥

コンポストビンに落ち葉を積んで1年熟成させた落ち葉堆肥

そうであれば木々が大量の葉を落とすこの季節に、落ち葉堆肥を仕込まない手はない。そのためにまずはコンポストビンを作るべし。それから、山や森や公園や街路樹のある道端でせっせと落ち葉を集めるのだ。樹木の種類はいろいろあるが、基本的にはどんな落ち葉でも堆肥の材料になる。ただし、葉の硬さや含まれる成分によって分解のしやすさには差がある。半年程度で分解するものもあれば、1年以上かかるものもある。では、どんな木の葉が分解しやすく、また分解しにくいのか、それをお教えしよう。

コンポストビンの作り方はこちら
DIYで簡単にできる! 木製コンポスト箱の作り方【DIY的半農生活Vol.2】
DIYで簡単にできる! 木製コンポスト箱の作り方【DIY的半農生活Vol.2】
茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約5反の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。 今回は、生ゴミや野菜の残さ、雑草…
竹で作るコンポストビンで、自家製堆肥を作ろう【DIY的半農生活Vol.16】
竹で作るコンポストビンで、自家製堆肥を作ろう【DIY的半農生活Vol.16】
茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約5反(50アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。 今回は竹で作るコンポ…

堆肥化しやすい落ち葉

落ち葉は、主にセルロースやヘミセルロース、リグニンといった成分から構成されており、微生物やミミズ、昆虫の幼虫などの土壌生物による摂食活動などにより分解されて堆肥になる。日本にはおよそ1200種の樹木があると言われているが、それらは広葉樹と針葉樹に大別でき、それぞれ一年中常に緑の葉をつけている常緑樹と、主に気温が低くなる晩秋に葉を落とす落葉樹がある。つまり、落葉広葉樹、常緑広葉樹、落葉針葉樹、常緑針葉樹の4つに分類できるのだ。このうち一般に堆肥化しやすいのは葉が柔らかい落葉広葉樹である。以下に紹介する木は公園や庭木、雑木林、街路樹など、身近によく見られ、入手しやすい落ち葉である。

カツラ

落葉広葉樹
樹高(一般的な大人の木の高さ):10~35メートル
分布:北海道〜九州

カツラの葉

自然のものは山地の渓谷などに点在し、成長すると樹高30メートル、幹は直径2メートルにもなる。葉は、葉柄のつけ根がくぼんだ丸みのあるハート形で、秋の黄葉が美しいことから庭木や公園、街路樹にもよく植えられる。落葉したばかりの葉はカラメルのような甘い香りを放つ。
大木があるところで落ち葉を集めやすく、葉が柔らかいので堆肥化も早い。黄葉は関東の平野部で11月上旬~下旬。

イロハモミジ(カエデ類)

落葉広葉樹
樹高:5~15メートル
分布:東北南部~九州

イロハモミジ

オオモミジやヤマモミジ、ハウチワカエデ、ウリハダカエデなど約30種類のカエデ類が日本に自生しているが、いわゆるモミジと言うと本種をさすことが多い。低山や公園、寺社などで普通に見られる。
関東の平野部であれば、紅葉は11月中旬~下旬で、個体によって赤や黄、オレンジに鮮やかに色づく。
深い切れ込みが入った葉は、柔らかく分解が早いので、堆肥にするとカサが大きく減る。繊維質のある堆肥を作るためには葉が硬めのイチョウなどを混ぜるとよい。

クリ

落葉広葉樹
樹高:4~20メートル
分布:北海道〜九州

クリ

わが家の周りにはクリ畑が多く、借りている畑にも3本のクリの木が生えている。山野の雑木林にも自生し、秋の紅葉を前に9~10月にはイガに包まれた果実を落とす。
11月中旬~下旬に黄葉し、褐色化した葉が落ちる。葉は長さが10~20センチとやや大型で、近くにクリ畑があると大量に集めやすい。
分解は早く、半年程度で堆肥化する。葉を集めているとイガや果実が混じることがあるが、それらの分解には1年以上かかる。堆肥化を早めたい場合は取り除いたほうがよい。

ケヤキ

落葉広葉樹
樹高:10~35メートル
分布:本州~九州

ケヤキ

枝が扇形に広がるので見栄えがよく、街路樹や公園によく植えられている。寺社や古い屋敷には立派な大木も見られる。葉は周囲にギザギザがあり、幅は2~5センチ、長さ3~13センチで、個体によって大きさにばらつきがある。紅葉も赤、黄、オレンジとさまざまで、樹上で、または落葉してすぐに褐色化する。大木が1本あれば大量の落ち葉を集められる。
入手のしやすさ、分解の早さ、繊維質の多さなど、堆肥の材料として非常に適している。

クヌギ

落葉広葉樹
樹高:10~20メートル
分布:本州~九州

クヌギ

まきや炭、シイタケのほだ木などの利用目的で、古くから里山に植えられてきた雑木林を代表する木である。幹から出る樹液には夏になるとカブトムシをはじめとした昆虫が集まり、落ち葉堆肥の材料としてもよく使われる。
葉は細長く、クリに似ているが、クヌギのほうが周囲のギザギザが大きい。庭木や公園で見ることはあまりないが、雑木林がある環境なら集めやすい。分解も早い。

堆肥化にちょっと時間がかかる落ち葉

同じ落葉広葉樹でも、サクラやカキの葉には微生物の活動を抑制する成分が含まれており、分解に少し時間がかかる。また針葉樹の葉にはリグニンという分解しにくい成分が多く含まれ、栄養分も少ないため微生物やミミズが繁殖しにくい。

サクラ類

落葉広葉樹
樹高:4~20メートル
分布:北海道〜沖縄

サクラ

日本には、ヤマザクラやオオシマザクラなど10種の野生種のほかに、ソメイヨシノをはじめ数百の栽培品種があり、日本各地で見られる。
本来、紅葉は11月頃から始まるが、猛暑や少雨などの影響で、色づく前の8~9月に落葉することもある。サクラの葉にはクマリンという芳香成分が含まれており、これが微生物の働きを抑制するため分解が進みにくく、堆肥化には半年から1年ほどかかる。

カキ

落葉広葉樹
樹高:2~10メートル
分布:本州~九州

カキ

奈良時代に中国から持ち込まれたといわれ、その後、多くの栽培品種が作られた。庭木や畑で栽培されるほか、山林で野生種も見られる。葉は幅4~10センチ、長さ7~17センチの卵型でつやがある。
10~11月にオレンジ色に紅葉し、同時に果実も熟してくる。カキの葉には柿渋の主成分であるタンニンが含まれており、その抗酸化作用と抗菌作用によって微生物の活動が抑えられるため分解にはやや時間がかかる。目安は半年から1年。

イチョウ

落葉針葉樹
樹高:10~30メートル
分布:北海道〜沖縄

イチョウ

扇形の葉は針葉ではないが、イチョウは針葉樹とされている。広葉樹と針葉樹の分類は、じつは葉の形状ではなく、被子植物と裸子植物の違いで分けられるからなのだという。その点でイチョウは裸子植物であり、針葉樹の仲間に分類されるのである。
含水率が高いため都市の防火対策として、また強い剪定(せんてい)にも耐えるなどの理由で、日本では街路樹として最も多く植えられている木である。公園や寺社でも大木がよく見られる。
街中でも葉を集めやすいが、葉には抗菌成分が含まれ、微生物の増殖が抑えられるため、分解には1年程度かかる。

スギ

常緑針葉樹
樹高:10~40メートル
分布:本州~九州

スギ

成長が早く、幹がまっすぐ伸びることから建築材として広く利用される。山地に人工林が多く、寺社には樹齢数百年という巨大な古木も見られる。
葉は、細かいとげがらせん状につき、常緑だが古くなると茶色く変色して落葉する。硬く、強い抗菌成分が含まれているため分解には1~2年かかる。生ゴミのような水分の多い材料と混ぜて堆肥化すると腐敗菌の抑制が期待できる。

竹、ササ類

常緑竹類
樹高:1~20メートル(種類による)
分布:北海道~沖縄

竹

本来、竹林は里山の一部として人が手を加えることで維持されてきたが、近年は管理されなくなった放置竹林が問題になっており、その林床には枯れ落ちた竹の葉が大量に積もっている。竹やササの葉は抗菌成分を含んでおり、雑菌の繁殖を抑える効果があることから食材の敷物や包みとして使われ、繊維も多いため分解には1~2年かかる。

どんな落ち葉でも熟成させれば堆肥になる

ということで、一般に入手しやすく堆肥化しやすい葉としにくい葉を厳選して紹介したが、どんな葉であれ、堆肥の材料にならないわけではない。硬く、抗菌成分が含まれるような葉も分解にちょっと時間がかかるというだけで、熟成させれば堆肥としての土壌改良効果は高い。

ここに移住してきた13年前、何もなかったわが家の庭には、今では最初に植えたカツラをはじめ、モモ、サクラ、ヤマボウシ、イロハモミジ、トサミズキ、コナラ、ヒメシャラ、シラカシ、ビワ、イチジクなど、たくさんの木が植わっている。その多くは秋になると紅葉してたくさんの葉を落とす。その日から毎朝、せっせと落ち葉を集めてコンポストビンに入れるのが私の日課である。

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

公式SNS

「個人情報の取り扱いについて」の同意

2023年4月3日に「個人情報の取り扱いについて」が改訂されました。
マイナビ農業をご利用いただくには「個人情報の取り扱いについて」の内容をご確認いただき、同意いただく必要がございます。

■変更内容
個人情報の利用目的の以下の項目を追加
(7)行動履歴を会員情報と紐づけて分析した上で以下に活用。

内容に同意してサービスを利用する