マイナビ農業TOP > 農家ライフ > 竹とわらで作る、家庭菜園向け踏み込み温床【DIY的半農生活Vol.19】

竹とわらで作る、家庭菜園向け踏み込み温床【DIY的半農生活Vol.19】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

竹とわらで作る、家庭菜園向け踏み込み温床【DIY的半農生活Vol.19】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約5反(50アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。今回は、発酵熱を利用して、気温の低い春先に苗を育てるための踏み込み温床を紹介。竹とわらで囲いを作り、中に落ち葉を積み上げて発酵させると30~40℃の熱が発生し、約1カ月持続する。家庭菜園でも手軽に作れるミニサイズの温床で自前の苗を育てよう。

早春に夏野菜の苗を育てるには

氷点下の寒い朝が続いている。それでも日中は15℃近くまで気温が上がる日もあり、風がなければポカポカとしてかなり暖かい。この時期にそれなりの雪が降ったのはもう7年も前だ。子どもたちが庭で雪だるまを作っている写真を見てそれがわかった。かつては、毎年1回はそんな雪の日があった気がするのだが、その年以来、子どもが興奮するような雪が降る年はない。
気象庁のホームページで我が家から比較的近いつくば市館野の気候変化を見てみると、ここ40年ほどで冬の平均気温が約1℃高くなっている。20年近く野菜作りをしていれば、気候の変化を肌で感じないわけにはいかない。今年も、夏野菜はちょっと早植えしたほうがよさそうだ。夏が暑すぎるので、トマトも、キュウリも、トウモロコシも、8月に入ると良品は望めない。7月中に取りきらないといけない。そのためには、早い時期から苗を作り始めることが重要だ。トマトやキュウリは3月には種をまこう。その前に、春作のキャベツやブロッコリーの苗作りも始めなくてはいけない。

トマトは早めに苗を作って、4月中旬に植え付ければ6~7月に収穫できる

もちろん、この時期に普通に種をまいても気温が低すぎて発芽しない。キャベツの発芽適温は15~30℃、生育適温は15~25℃。トマトは発芽適温25~30℃、生育適温25℃前後である。そのため、一般的な農家ではボイラーなどで加温したハウスで苗を育てるが、私のような家庭菜園愛好家や小規模な有機栽培農家でよくやるのは踏み込み温床である。

踏み込み温床とは

踏み込み温床とは、微生物が有機物を分解するときに放出する発酵熱を利用した加温方法で苗を育てる苗床のこと。この温床で気温が低い時期に育苗を行う。暖房に石油やガスや電気が使われるずっと前から農家の間に伝わってきた技術である。
踏み込み温床の材料として最適なのは、この時期、大量に入手できる落ち葉だ。その落ち葉に、微生物のエサとなる窒素分を適度に含む米ぬかと水を加えることで簡単に発酵する。温床としての役割を終えたあとは極上の落ち葉堆肥(たいひ)になるので、一石二鳥だ。
発酵熱は一時的には50℃を超え、その後30~40℃の発熱が1カ月ほど持続する。最初に高温になるのは酸素が多い状態で好気性発酵するためだ。そして、落ち葉内の酸素が少なくなると嫌気性発酵に移行し、低温での発熱が長続きする。

30~40℃に落ち着いたら育苗を始める

温床は、保温性を高めるためにハウス内に作るのが理想だが、家庭菜園でそれほど大きなハウスを持っている人はあまりいないだろう。でも、ご安心を。露地でも不織布とビニールトンネルで保温すれば、しっかり温度を保って苗を育てられるのだ。そんな手軽なミニ温床の作り方を紹介しよう。

踏み込み温床に必要な落ち葉と囲いの材料

微生物の活動による発酵熱を安定させ、長く持続させるためには、なるべくたくさんの落ち葉を積み上げたほうがいい。そのためには温床もある程度の大きさが必要だ。最低限1立方メートル。畳1枚分くらいの面積で、深さ50~60センチが目安だ。
その囲いの中をいっぱいにするために必要な落ち葉の量は、約50リットルの一般的な容量の収穫コンテナにギュッと詰め込んで40~50箱分。乾いた落ち葉はかさがあるので、雨のあとの濡れた落ち葉のほうが集めやすい。踏み込む際に水をかける手間も省略できる。

落ち葉は、野山や公園、神社など大きな木があるところで集める

温床の囲いは、材料は何でもよいのだが、保温性があるものが理想的だ。よく使われる薄い合板でもいいが、保温性は期待できない。接着剤を使っているため水濡れにも弱く、劣化するとヘニャヘニャになってしまって処分するのに結構困る。トタンは水濡れに強いがやはり保温性はない。
それで、私は竹とわらを使っている。わらを厚く束ねると、その間に含まれる空気が断熱材の役割を果たしてくれるうえに通気性もある。わらは1~2年すれば内側から落ち葉と一緒に腐ってくるが、そのときは堆肥として利用すればいい。竹はそのわらを支える骨組みとして使う。竹もわらも、田舎に暮らしていればタダで容易に手に入るのもいいところだ。

踏み込み温床の作り方

囲いの材料

  • 竹(直径10センチ程度)…長さ2メートル 2本、長さ1メートル 2本
  • スギ角材…45×45×800ミリ 6本
  • わら
  • シュロ縄

囲いの作り方

踏み込み温床を作る場所をやや広めに、深さ20~30センチまで掘る。今回の材料だと約2×1メートルの広さとなる。

掘った地面を平らにならし、踏み込み温床を作る場所に地縄を張る。地縄とはひもやロープで建物などの位置を地面に示すことだが、このときコーナーの直角をきちんと出すことが大切だ。何もない地面に直角を描くには、三平方の定理を使う。3つの辺の比が3:4:5であれば直角三角形になるという法則だ。つまり、最初に基準となる“3”の直線をひとつ決め、その両端を起点に“4”と“5”の直線を引いて交点を出せば(ひもを使うとやりやすい)、3と4の交点が直角になる。
このとき、後工程の都合で、竹の長さよりも10センチほど短い辺の長方形にしておく。2×1メートルの大きさで作る場合は、190×90センチくらいがよいだろう。

手元に3×6(サブロク)合板(※1)など四つ角が直角の板があれば、それを地面に置いて地縄のガイドとしてもよい。角の4カ所にスギ角材の杭を打ち込む。深さは30センチが目安。

※1 3×6尺(910×1820ミリ)の合板のこと。

杭を打ち込みながら角材に水平器を当てて垂直を確認する。

竹は竹割り器またはナタを使って4~6等分に割る。竹割り器を使う場合は、硬い地面に末口(※2)を上にして立て、竹割り器を当てて刃を食い込ませる。ハンドルを両手で持って一気に押し下げると、きれいに等分される。
ナタを使って割る場合は両刃の竹割りナタを使い(片刃だとまっすぐ割れない)、末口に刃を入れて、ナタを押し下げていけばよい。

※2 先端側の切り口。根元側は元口という。

割った竹2本で杭を挟み、シュロ縄できつく結ぶ。まず、短辺の杭の上端から10センチほどのところに写真のように竹を渡す。

竹は水平になるように調整する。

最初に渡した竹を高さの基準にして、ほかの杭にも竹を渡す。

同じようにして、今度は地面から10センチほどの高さに1カ所竹を渡し、それを基準にほかの杭にも竹を渡す。

長辺の中心の位置で、竹の間にスギ角材を打ち込んで補強する。竹とスギ角材はシュロ縄で結ぶ。

杭に渡した竹の間に束ねたわらを挟んでいく。

すべての面にわらを挟んだら、周りに土を寄せて杭の高さの3分の1~半分を埋める。

杭の高さでわらを切りそろえたら完成。

温床を仕込む

落ち葉は収穫コンテナにギュッと詰めて50箱分、米ぬかは約10リットルを用意する。
落ち葉と米ぬかを5~6層にしたいので、まず10箱分の落ち葉を入れるとそれだけで囲いがいっぱいになる。これをひたすら踏み込み、かさを囲いの4分の1から3分の1くらいの高さにする。

ある程度かさが減ったら、落ち葉の表面全体に薄く米ぬかを振りかける。

全体に水をたっぷりかける。落ち葉を握ったときに指の間から水が滴るくらいの量が目安。

さらにコンテナ10箱分の落ち葉を投入して踏み込み、米ぬか、水を加える。この作業を囲いがいっぱいになるまで繰り返す。

好気性発酵が始まると、落ち葉の中は50℃を超える温度になる。その後1週間程度で嫌気性発酵に移り、30~40℃で安定するので、そうしたら育苗を始める。
1週間経っても発酵が始まらない場合は、水分または米ぬかが足りないことが考えられるので、追加して様子を見る。特に水分は発酵が始まると蒸発して乾いてしまうので、適宜給水が必要だ。

温床で育苗する

培土に種をまいた育苗箱やセルトレーを温床に置き、保温のための不織布をかける。

囲いにトンネル支柱を差し、ビニールトンネルをかける。風で飛ばされないようにしっかりとめる。

育苗中は土が乾かないように毎日苗に水をやることで、温床の給水にもなる。日中気温が高い日は、必要に応じてビニールトンネルを開放するなど、温度管理をすることも重要だ。
温床は1月下旬から2月上旬に1回目を仕込み、これで3月に植えるキャベツやブロッコリーの苗を育てる。4~5月上旬に植えるトマトやキュウリの苗は2月下旬に仕込む2回目の温床で育苗するとよい。

踏み込み温床の4つのメリット

トマトの苗。種は育苗箱にすじまきし、本葉が出始めたころに3号ポットに移植する。根がしっかり回ったら植えつける

農家はもとより、それなりの規模で家庭菜園をやっていれば温床を作るメリットは大きい。
第一に、市販の苗を買うより、育苗したほうがずっとコストを抑えられる。例えばトマトであれば、3号ポットの苗1つで安くとも200円はかかる。しかし、育苗をすれば600円の種から15~20本の苗を育てることができる。単純に考えて約5分の1まで苗にかかるコストを削減できるのだ。
第二に、苗が市販されていない品種や、自家採取した種からも苗を作れる。そもそも本当に自然農法や有機栽培にこだわるのであれば、生育環境のわからない市販の苗を使うわけにはいかない。育苗するのが基本である。
第三に、苗作りの腕が上がれば、市販の苗よりずっといいものができる。植えつけ予定日から逆算して苗を作ることもできる。いざ植え付けしようと苗を買いに行って、欲しい苗がなくて困る、なんて心配もない。
最後に、温床での苗作りは単純に楽しい。発酵が始まった瞬間はいつも興奮する。落ち葉の中に手を入れるとぬくぬくとして温かく、落ち葉を動かすとむわっと湯気が立つ。石油やガスや電気などのエネルギーを使ってボタンひとつでできることに、こうした驚きや感動はない。自らの手足を動かし、自然の力を生かして、何事かをなすということがたまらなく面白いのである。

読者の声を投稿する

関連キーワード

シェアする

関連記事

タイアップ企画

公式SNS

「個人情報の取り扱いについて」の同意

2023年4月3日に「個人情報の取り扱いについて」が改訂されました。
マイナビ農業をご利用いただくには「個人情報の取り扱いについて」の内容をご確認いただき、同意いただく必要がございます。

■変更内容
個人情報の利用目的の以下の項目を追加
(7)行動履歴を会員情報と紐づけて分析した上で以下に活用。

内容に同意してサービスを利用する