減塩に代わる新提案、ポジティブに塩分をなかったことにする
「多くの皆さんがユニークで素晴らしいプレゼンをされる中で、今回優勝することができ、大変嬉しく思っています。皆さんと一緒にフードテックをさらに盛り上げていければと思います」と、最優秀賞の喜びを語る株式会社トイメディカルの竹下英徳さん(同社代表取締役)。
トイメディカルは、日本人の塩分摂取量の多さに対して、減塩という食事制限ではなく、海藻由来のアルギン酸類を活用して塩分を排出するという斬新なアイデアを提案しました。減塩は塩分摂取を減らす効果的な方法ですが、せっかくの食事が味気のないものになることが課題です。
そこで、海藻に含まれるアルギン酸類の「塩分を吸着して体外に排出する効果」に着目。熊本大学との共同研究で、アルギン酸類の配合を検討し、独自技術でスナック菓子や麺類、食肉などさまざまな食品に応用可能な形にすることで、味を損なうことなく塩分摂取量を20〜30%削減できる「零しお(ぜろしお)」を開発しました。これは世界初の試みとして注目されています。
プレゼンでは、減塩の代替策として「塩分の吸収を抑えて、食品や食事のおいしさを保ちながら塩分をなかったことにできる」というコンセプトを分かりやすく伝えることを重視。「特に、なぜ減塩ではなくこの方法が必要なのかを明確に説明することを意識しました」と竹下さん。そこで自身のバックグラウンドにも触れ、「メディカルの分野では、治療のためなら痛みや不便を我慢するのが当たり前の文化があります。しかし、私たちは我慢をしないで笑顔になれる商品を提供したいという思いを込めて、トイメディカルという名前を掲げています」と紹介。今回の提案は、その思いを象徴するものです。
日本の海藻の可能性にも注目しています。「世界では海藻がスーパーフードとして注目されていますが、ここまで海藻を食文化に取り入れている国は日本だけです。この海藻のパワーを活かしたいという思いが、私たちの原点にあります」と熱意を語ります。
「今回、注目していただいたことで、フードメーカーやフードチェーンに私たちの技術を活用していただき、より広く認知されていくことで、食べるだけで健康になれる社会を実現していきたい。また、熊本の海で海藻を育てることで地域活性化にも貢献したいと考えています」と今後の展望を語ります。
最後にフードテックビジネスコンテストの感想を聞くと、竹下さんはコンテスト参加についてその魅力を語ってくれました。