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農業者の経営改善を支援する奈良市の取り組み ~新装開店「なら農業マネジメントアカデミー」を振り返る~

佐川 友彦

ライター:

農業者の経営改善を支援する奈良市の取り組み ~新装開店「なら農業マネジメントアカデミー」を振り返る~

奈良市では令和4年度、5年度に市内の農業者の経営支援策とした「なら農業応援塾」を開催してきました。稼げる農業を目指し、販路拡大をテーマとしたシリーズの研修です。筆者も昨年度は講師として手伝わせていただきました。今年度は「なら農業マネジメントアカデミー」とリニューアルし、これまでの販路拡大の講座に加え、「経営改善コース」が新設されました。販路拡大に取り組む中で、注文対応や発送管理、需要に応えるための規模拡大などには、経営の内面、いわば業務改善に取り組む必要があるとの声が過去の受講者から挙がったことが、ひとつのきっかけとなりました。

実は難しい農業者の経営改善

作業計画を作成して進捗管理をしたり、働きやすい環境を作って従業員を増やしたり、スマートな農業管理ツールでデータ活用したり・・取り組みたいことは山のようにある一方、そのような改善に取り組むための時間も予算もノウハウもないのが農業現場の実情です。生産技術は十分に流通している業界ですが、注文管理や人事労務、会計管理など、間接業務の実務ノウハウはまだまだ整理されていません。仕組みや管理体制が整備されないまま販路拡大や規模拡大だけ進めれば、管理リスクも比例して大きくなってしまいます。経営管理や間接業務については行政や民間からの支援ノウハウも不足しており、問題は顕在化しているものの放置されてしまっているのが現状です。

そのような課題感から、私は栃木県宇都宮市にある個人経営の梨農園「阿部梨園」で、従業員の立場から経営改善を推進してきた経験をもとに、農業者の経営支援を支援しています。今回の「経営改善コース」は、そのようなこれまでの知見を最大限に動員し、奈良市の農業者のみなさんに経営改善に取り組んでもらう実践型の研修です。

経営改善コースの意義

経営改善コースでは、4回の座学と視察研修を通して、経営改善の進め方について学びます。並行して自農園の経営課題を分析し、改善プランを立て、受講期間中に改善活動を実践していくプログラムになっています。インプット型の学びで課題や改善手法を知り、実践しながら学びをスキルとして定着させていく、学びと実践が対になっていることで効果を生む特徴がある研修です。

研修の仕組み

講座内でお互いの課題や悩みを共有しつつ、工夫やコツなどのノウハウも共有していきます。共有・発表の機会があることで、個人では投げ出してしまいがちな改善活動を、受講者全体で団体戦として継続していきます。普段は伺い知れないお互いの経営の内面について分かち合うことで、農業者同士の連帯も生まれていきます。

先日、改善活動の最終発表会が無事終わりました。ユニークな改善策やすばらしい変化が多数見られ、私も大いに励まされました。発表に向けて適度なプレッシャーを感じながら改善に取り組んだり、成果を資料にまとめたりする過程で、1人ひとりの経営やマネジメントに対する意識が大きく変わった様子も感じ取ることができました。詳しくは以下の受講者のコメントをご覧ください。

受講者の声①上岡農園 上岡沙耶さん

上岡沙耶さん。自然や生き物が好きで以前からいくつかの農園で働いてきたそう。夫・龍麻さんとの結婚を機に上岡農園の仲間に入りました

上岡農園では茶や米を栽培しています。雇用就農と家族経営の農家では自分の役割が違うということに気づきこれからの目標や指針に迷っていたころ、なら農業マネジメントアカデミーの存在を知り農業経営について学びたいと思い受講しました。

講座では、改善アイデアシートに書き出したり参加者の方と会話したりする中で、自分の課題が整理できました。先の大きな目標ばかり考えるのではなく、今できることがたくさんあり、小さな改善を積み重ねることで、個人としても農園としても成長できると気づきました。

受講した内容は夫と共有し、実践できたことで前向きに取り組むことができました。日々のちょっとした違和感を改善できるチャンスだと思い、記録して行動しようと心掛けられるようになりました。これから迷ったときにもこの講座での学びを指針にしてこれからの農業経営に活かしていきたいと思います。

受講者の声②西田農園 西田太郎さん

西田太郎さん。「もっとやれることがあるはず」と農業の可能性を感じ、稼業を継ぐ形で就農しました。現在は白ネギ、ブロッコリー、カブ、長ナスの栽培に取り組んでいます

農業の経営について腰を据えて自主的に考えたり、スキルアップをしたいと思い、講座に参加しました。経営という面では、自己流で突き進んできた部分も多かったのですが、この講座は連続講座ということもあり、雇用、組織づくり、労務環境の改善など、農業経営全般を体系立てて学ぶことができると聞き、一度しっかりと学び、取り入れたいと思い受講させていただきました。

講師の佐川さんが、阿部梨園をサポートしていく中で身を持って経験されたことから、農業の経営を改善していくために必要な考え方を学べました。また、私たち農業者同士が互いに感じる課題を持ち寄ってディスカッションできたことが、大変学びになりました。

農家にとっての実際の経営というものを、生産、販売、労務、会計、その他プライベートとの両立などにジャンル分けし、それぞれのジャンルで小さなアイデアもこぼさずひろい集めることで、改善に結びつけることができるのだなと理解できました。
最終発表会後に佐川さんからいただいたフィードバックを活かし、今後の経営に実践していきたいです。

受講後は、経営という観点からどのように変えていけば良くなるのかを、今までよりも主体的に家族や従業員さんなどとの会話の中で考える場面が増えてきました。また、経営を改善していこうという意識も私の中で高まったと思います。

受講者の声③前田農園 前田奨太さん

前田奨太さん。3年前に脱サラ就農し、トマト・フルーツトマト・キュウリ・水稲を栽培しています。「社会人の頃より何倍も楽しく過ごしています」と前田さん

祖父母が農家だったが勧められず断念し、社会人へ。そんな中、縁あって妻と出会い、結婚と同時に就農しました。
世代交代へ向けて経営の知識や経験等を身に着けていかなくてはならないと思っていた中で講座の話を聞き、是非受講したいと思いました。

講座では、自分が意識していた事の再確認はもちろんのこと、新たな着眼点で知識を得ることもできました。また、違う作物を作っている受講生同士でも共通する事がたくさんあり、共感できました。新しく人と繋がれる事も嬉しかったです。

講座後は、今までは気づかなかった点も見えるようになり、モチベーションがさらに上がりました。自分で行った改善が「ええやん!」と評価されて、なんだか得意げな自分もいます(笑)

経営改善コースの着地点とこれから

経営改善や業務改善は1年で目覚ましい成果につながるとはかぎりません。2年3年と継続して取り組み、体質改善していく必要があります。だからこそグループでの改善活動や行政からの支援が有効です。ステップアップした農業者が今度は教える側になっていってくれれば、地域にノウハウとネットワークが集積されるようになり、地域単位での改善サイクルが回っていきます。自走化にまで至れば理想です。

講座では視察研修として大阪府内のナス農家を訪問しました

スマート農業や有機農業の推進、販路拡大など、地域として取り組むべき施策は様々ですが、いずれの基礎になるのも農業者の経営力です。地域農業を維持・発展させるために必要不可欠な「農業経営の質的向上」をどのように実現すればよいでしょうか。経営改善を支援する奈良市の意欲的な取り組みがみなさんにとって役立つヒントになれば幸いです。

●なら農業マネジメントアカデミーのお問合せ
奈良市農政課
【経営改善コース】農政課 農林経営係(担い手・農地)
【販路拡大コース】農政課 ブランド推進係

〒630-8580 奈良市二条大路南一丁目1-1
TEL:0742-34-5142
MAIL:nousei@city.nara.lg.jp
なら農業マネジメントアカデミーのホームページ

●セミナーについてのお問い合わせ
株式会社マイナビ
メールアドレス:agri-seminar@mynavi.jp

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