メリット① 騒音問題なし!ストレスフリー環境
田舎に引っ越して一番うれしかったのは、子供に「静かにしなさい」と怒らなくて良いこと!我が家から隣の家まで200m以上あるため、いくら騒いでも問題ありません。マンション暮らしの頃は「大声を出さないで」、「叫ばないで」、「ジャンプしないで」などと、しょっちゅう叱らなくてはなりませんでした。生活の中の規制の多さは私にとってストレスの根源でもありました。
都市という環境はかなり大人の都合に準じて設計されていると感じます。密集した住宅地に、規律正しいふるまいを求められる施設や交通機関。海外では電車内が賑やかでスマホ通話もOKみたいな例もけっこうありますが、日本は「静かに」という社会規範が特に強い国です。もともと大人しい子もいる一方で、幼児期をそのルールに当てはめるのは至難の業という場合も多いのではないでしょうか。田舎では「大人しい振る舞いを子供に強いる」という無理がなくなったため、親も子もかなり解放されました。
メリット② 豊かな自然で育む五感
田舎に引っ越してからというもの、子供たちの自然遊びは本当に充実しています。春には野イチゴを摘み、夏は頻繁に海へ。秋は無数のバッタで虫かごをいっぱいにして、冬は凧揚げだ何だと走り回る。畑の土で泥団子を作り、家族で育てたトウモロコシをもぐという、「となりのトトロ」的な原体験を与えてくれます。幼少期は人生において特に重要な成長の時期であり、この時期に五感を活用した体験をすることは心身の発達に大きな影響を与えます。
都会に住んでいたときの我が家の休日と言えばもっぱら、ショッピングモールか公園。遠出してダイナミックな遊びを楽しむこともありましたが、どこまで出掛けられるかは親の体力次第でした。田舎で暮らし始めてからは、前述のように日々の遊びが充実し、一日一日の積み重ねが大きくなったように感じます。
ただし、Youtubeなどの動画やゲーム、スマホの誘惑は田舎も都会も変わりません。小学校中学年くらいになると、外で遊ぶよりも家でゲームがしたくなり、あまり自然と触れ合わないのかもなぁとも懸念しています。
メリット③ 温かい地域の目と異世代間コミュ力
田舎を子供連れで出歩いていると、必ずと言って良いほどおばあちゃんたちから声を掛けられます。ほとんどが「可愛いね~元気やね~。あんた(母)もよう頑張っとるたい」みたいな感じで、親として自己肯定感アゲアゲです。都会で嫌な目に合ったことはないですが、何となく肩身の狭い思いでバスに乗ったり、飲食店に入ったり。周囲に迷惑が掛からないようにとばかり考えて、特にいつ泣くか分からない赤ちゃん時代は、外出すると疲れ果てていました。田舎における「子供は地域の宝」と考える高齢者の多さはとても魅力的です。子供が大事にされることで、子育てもよりポジティブに捉えられるようになりました。これは田舎が子だくさんである要因の一つとなっているのではないか思います。
また、田舎暮らしは異世代間のコミュニケーション能力を伸ばしてくれると感じます。我が家の長男には同級生が2人しかいないので、他の学年も一緒に遊ぶ姿をよく見掛けます。都会育ちの私は小学校の同級生が100人以上居て、他学年と遊ぶことがあまりありませんでした。その点、幅広い年代と関われるのは良いなと思います。上の世代から可愛がられ、下の世代にそれを返すような、そういった関わりの中で思いやりの気持ちを育んだり、異なる視点を持てるようになるでしょう。将来、社会に出たときにも役立つスキルだと思います。
デメリット① 子供の送迎問題
ただし、田舎特有の問題もあります。我が家の場合、家から小学校まで歩くと山道で一時間半掛かるので、朝夕送り迎えをしています。通学路にはイノシシやスズメバチが出るため、小学校低学年の子が一人で通うのはかなり心配です。私は長男が小学校に上がるタイミングで正社員からパートに替えたのですが、これはフルタイムサラリーマンだと送迎が間に合わなかったのと、学区内に学童保育がなかったのが大きな理由です。友達と遊ぶにもこれまた歩いて一時間半なので、親の助けなしでは遊びに行くことも困難です。自分で自由に遊びに行けないのは可哀そうにも思います。もちろん田舎でも住宅が密集するエリアや学校近くの住居もあるので、移住を考える場合は詳しく調査しておくと良いでしょう。
正社員からパートという流れでもう一点付け足すならば、田舎では特に住居費が都会に比べ格段に安いです。私自身、子供が小さいうちはパートでも暮らしていけそうという家計シミュレーションをして転職を決めました。ただ、高校、大学と進めば学費がそれなりに必要です。今は子供との時間がうんと増えてうれしいですが、いずれは仕事を増やす必要があると考えています。
デメリット② 習い事、進学、就職の選択肢が狭い
都会にあって田舎にないもの、それは多様な習い事、進学先そして就職口です。例えば私の居住地域には塾がありませんが、街ならば何十軒もあります。街の塾まで行くと時間が掛かり、その分学習時間は削られます。進学先も通える範囲が限られる上、周りの同級生や先輩が少ないことで情報収集が難しくなります。人数が多い学校であれば、「○○先輩みたいになりたい」といった、子供にとって具体的なロールモデルが豊富なのは良いところです。田舎の場合は都会以上に親も協力して情報収集や進路選択に取り組んだ方が良いのではないかと感じています。また、東京大学の合格者に占める東京圏出身者の割合が近年増加傾向にあることが報道されていますが、教育の地域格差は確かに存在します。進学については都市部が圧倒的に有利であると認識しておくことは必要でしょう。
また、田舎には仕事が少ないと言われますが、それはつまり田舎の子供が目にする職業も少ないということです。世の中にどんな仕事があるのか知らないと、その職業に就きたいとは思いません。うちの息子も「中学を卒業したらミカン農家(家業)になる」と言っていたので、これはもっといろんな職業を見せた方が良いと思い外出の機会を増やしました。美術館や博物館といった文化施設、大きな体育館やプールなどのスポーツ施設も身近にないので、できるだけ連れて行きたいなぁと思っています。
デメリット③ 狭い人間関係の苦悩
田舎の人間関係については前回の記事で詳しく紹介しましたが、子供の中でも田舎の閉鎖的な空間には大変な面があると思います。数名の同級生と義務教育の9年間同じクラスという環境では、気の合う子と仲良くするなどとえり好みしている場合ではありません。また、少人数だからいじめがないというわけではありません。人数の多い学校の場合は年度始めのクラス替えで人的環境がいったんリセットされますが、田舎の学校では1学年1クラスがほとんど。いったん人間関係がこじれると厳しい状況が続いてしまいます。
保育園から中学校までほぼ同じメンバーだったため、高校に進学したときは友達の作り方が分からなかった、という話も聞きます。新しい人と出会う機会が極端に少なければ、高校から急に人見知りになったり、なじめなかったりということは仕方ないようにも思います。「高校生なんだから自分でどうにかしなさい」と突き放すのではなく、親や周囲がサポートすることも時に必要でしょう。
田舎にも都市にもそれぞれ無数のメリット・デメリットがあり、単純に比べることはできません。それに良い悪いと言っても多くは絶対的な評価ではなく、個人的な好みのようなものです。もし子育て環境を選べるならば、子供のためと考えるより、親自身が心地良く育児できる場所を探すのが良いのかもしれないと思います。いくら田舎暮らしに利点を感じても、親が大の虫嫌いでいつもイライラしていたらあまり幸せじゃないかもなぁと思うのです。親が楽しそうに子育てしているのが、子供には一番うれしいのではないでしょうか。家族の笑顔のために、自分のことも大切にして居住地を考えてみてください。