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「アーリーキャノン」で安定供給を実現!鳥取のブロッコリー栽培の事例紹介

「アーリーキャノン」で安定供給を実現!鳥取のブロッコリー栽培の事例紹介

2024年、これまでの品種や作型が通用しないという声が多く聞かれるようになりました。そんな中、高温期のブロッコリー栽培において耐病性と耐暑性に優れる早生品種「アーリーキャノン」が安定供給の鍵となっています。この品種は、安定供給を実現し、地域のブランド価値を向上させています。JA鳥取中央とJA鳥取西部の導入事例を通じて、「アーリーキャノン」がどのように生産者の課題を解決し、品質向上に貢献しているかを探ります。生産者の努力と創意工夫が、地域の農業を支える重要な要素となっています。

耐暑性や生産・出荷計画でもメリットを発揮!JA鳥取中央導入事例

JA鳥取中央産地概要

JA鳥取中央の管轄地域である鳥取県中部では、1970年代からブロッコリー栽培が始まり、2007年には「琴浦ブロッコリー生産部」が設立されました。

琴浦ブロッコリー生産部 役員小前雄一(こまえゆういち)さん(左)、同生産部の手嶋正一(てしままさかず)さん(右)、 JA鳥取中央北栄営農センター園芸課 中村敬一(なかむらけいいち)さん(中央)

「琴浦ブロッコリー」の特徴の一つに、発泡スチロールを使った氷詰め出荷が挙げられます。この方法により、流通過程における死花の発生など、ロスを最小限に抑えられることから、流通業者から高い評価を受けています。

発泡スチロールを使った氷詰め出荷の様子

また、この取り組みは産地全体の鮮度に対する意識を高め、大規模生産者を中心に冷蔵設備の導入が進むなど、さらなる安定供給と品質向上を実現しています。こうした努力の積み重ねにより、 「琴浦ブロッコリー」のブランド価値は年々、向上しています。今回は、琴浦ブロッコリー生産部の手嶋さんと小前さんに「アーリーキャノン」の生産現場の声を伺いました。

導入の経緯と評価

根こぶ病の耐病性以外でもメリットを発揮する「アーリーキャノン」

琴浦ブロッコリー生産部では、近年増加する根こぶ病が課題となっていました。そのような中で、根こぶ病の発病率が特に高まる8月の定植にも対応できる「アーリーキャノン」に注目し、試験を開始しました。複数年に及ぶ試験の結果、「耐暑性がある」「根こぶ病の被害軽減もあってか、初期から生育が安定しているため、他の病気の被害も少ない」、そして、 「幅広い栽培期間に対応可能なため、生産・出荷計画が立てやすい」という三つを評価し、本格導入に至りました。

根こぶ病への耐病性が導入の一番の決め手

手嶋さんは、「アーリーキャノン」を導入した一番の理由に、根こぶ病への耐病性を挙げます。様々な試行錯誤を行った中で、これまで通りの薬剤防除と「アーリーキャノン」を組み合わせたところ、根こぶ病の発生が減少したとのことでした。

さらに、これまでの栽培結果により、耐暑性にも優れ、葉や花蕾の病気の発生も従来品種より少なく品質が安定していることから、本年は10月から12月前半までの幅広い期間で出荷をしています。

一方、小前さんも従来品種での病気増加を受け、 「アーリーキャノン」に切り替えました。その結果、根こぶ病や他の病気の発生が減り、生育も順調に進んでいると言います。また、花蕾の位置が低いことについては、風が強い小前さんの圃場では、むしろ倒伏対策になるので利点となっているとの評価でした。

株間を広めに取ることで、厳しい栽培環境下でも秀品率90%以上!

小前さんは、 「近年、高温の影響により、安定して栽培できる期間が短くなってきている」と言います。手嶋さんも普段は根こぶ病の被害を警戒し灌水を控えて定植していますが、今年はそれだと栽培が難しかったそうです。このように栽培環境がますます難しくなっていることから、品種の特性を把握し、高い秀品率を確保できる栽培時期を見極めて栽培することが重要になっていると、お二人は言います。

また、小前さんの圃場を見ると、通常より広い株間で栽培をしているのに驚かされます。これも病気の発生を抑え、健全な生育を確保するポイントになっているそうです。今年は産地全体が高温や乾燥の影響により品質が厳しい期間もありましたが、小前さんはこれらの工夫により90%以上の秀品率を確保していました。

安定出荷や品質向上を実現しブランドの発展にも貢献!JA鳥取西部導入事例

JA鳥取西部産地概要

1969年に西日本のブロッコリー生産の先駆けとして生産が開始された「大山ブロッコリー」の生産地である鳥取西部地区は、大山山麓特有の、水はけがよく肥沃な黒ボク土が広がっている点や気温の面から見ても、ブロッコリーの栽培に非常に適した地域です。

食味が大変よく、産地の徹底した品質管理を重ねた高品質なブロッコリーは、真夏を除き、ほぼ年間を通じ、市場へ安定供給しています。現在は、地理的表示(GI)保護制度と地域団体商標を取得して、そのブランド力をさらに高めています。

出荷を待つ「大山ブロッコリー」

また、 JGAP取得者の推進、味を追求し、硝酸イオン値(苦味・えぐみ)をクリアし、化学肥料を約7割削減したブロッコリー「きらきらみどり」の普及など、実需者や消費者の多様なニーズに応え続けています。今回、 JA鳥取西部ブロッコリー部会の手島弥寿彦さんと同JA竹中悟さんに「アーリーキャノン」の評価を伺いました。

導入の経緯と評価

形がよく花蕾の緑が美しい「アーリーキャノン」

「『アーリーキャノン』を本格導入して、2024年で2年目を迎えます。高冷地の後続として10月からの安定出荷が求められる中、秋の出荷量の安定を目指し、耐暑性に優れた『アーリーキャノン』を導入しました。現在、主力で栽培している他社品種は、病気への強さを評価しているものの、花蕾のドームが低く、色も淡いといった品質の面で課題があります。そこで、高品質なブロッコリーの出荷を目指す生産者が『アーリーキャノン』を選ぶケースもあります」と、竹中さん。手島さんも「『アーリーキャノン』は、形がよく、花蕾の緑が美しい」と言います。

花蕾の位置の低さが、強風の立地で大きなメリットに

収穫作業については、「『アーリーキャノン』は、茎が柔らかく切りやすいという収穫のしやすさが好評な反面、花蕾の位置が低いため作業がやや手間取る場合があります。しかし、重心が低いことから、倒伏に強い点を高く評価しています。」と強風の影響を受けやすい日本海に近い産地ならではの事情も伺え、倒伏に強い品種は大きな利点になっていました。

JA鳥取西部 ブロッコリー部会 手島弥寿彦(てしまやすひこ)さん(左)と同JA 大山営農センターリーダーの竹中悟(たけなかさとる)さん(右)

また、 「アーリーキャノン」は、根こぶ病に対する耐病性を備えていますが、手島さんはさらに防除を徹底しているため、これまで根こぶ病の発生は見られないそうです。さらに他の病気の発生も全般的に少なかったことから、次年度の作付面積の拡大を検討しているとのことでした。

竹中さんによると、 2024年は産地全体が高温と干ばつの影響を受け、出荷開始が遅れるなど大変厳しい条件下での栽培だったそうです。手島さんは、 10月18日から「アーリーキャノン」の出荷を開始しましたが、耐暑性に優れた品種であるものの、花蕾がゆるむ、リーフィーが発生するなどの場面もあったとのことです。そこからも厳しい栽培条件だったことがうかがえます。

JA鳥取西部では、冬の降雪という厳しい条件もありながら、約10カ月間にわたる安定した出荷体制を築いてきました。一方で、初夏や秋口の高温の影響が年々顕著になり、栽培環境は厳しさを増しています。品質のよい「大山ブロッコリー」の安定出荷のため、手島さんは「品種の適性をつかみ、それに合わせた作型、圃場の選択や栽培管理を行うこと、育苗ハウスの高温対策を実施し、良質な苗を生産することなどが、ますます重要になる」と言います。

厳しい栽培環境の中、生産者の試行錯誤は続く

厳しい栽培環境の中でも、生産者の皆さまのたゆまぬ努力と創意工夫により、安定した出荷と品質向上が実現しています。その過程で積み重ねられた試行錯誤が、「アーリーキャノン」とともに地域ブランドの価値を高める原動力となっていることを実感しました。

お問い合わせ
株式会社サカタのタネ 野菜統括部
〒224-0041
神奈川県横浜市都筑区仲町台2-7-1
TEL 045-945-8802

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