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まるで地上の楽園に! 野菜と果樹を共存させるポイントとは【畑は小さな大自然vol.112】

まるで地上の楽園に! 野菜と果樹を共存させるポイントとは【畑は小さな大自然vol.112】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。僕の畑ではいたるところに果樹を植えています。一般的には果樹の近くでは野菜は育ちにくいと言われているので、植える場所は明確に分けることが多いです。しかし、僕はどうしても野菜も果樹も共生する空間を築いてみたかったので、実際に混植して実験しました。その中で、本当に野菜の育ちは変わるのか、どの程度離して植えればよいのか、果樹の根元付近でも育つ植物にはどんなものがあるのかなどを調査しています。今回はその実験結果として、野菜と果樹の相性について分かってきたことを紹介します。

なぜ菜園に果樹や樹木を植えてみようと思ったのか

果樹の配置図

そもそもなぜ菜園の中に果樹を植えようと思ったのかというと、僕は自分の畑を地上の楽園のような場所にしたかったからです。菜園の中にさまざまな果樹があり、そこを僕や家族が散策しながら果実をもぎって食べるという風景に憧れていましたし、果樹だけで並べるよりも、バラバラに配置した方がより心地よく美しい空間になるのではと思ってチャレンジしてみました。

畑に果樹を植える5つのメリット

果樹や樹木があることで、畑の居心地はとてもよくなる

実際に果樹を菜園の中に植えてみることで、さまざまなメリットがあることが見えてきたので紹介します。

1. 空間を有効活用できる

野菜だけだとほとんど地表面付近の空間しか使いませんが、果樹を配置することでより立体的な空間活用が可能になります。そうすることで限られた菜園スペースでも効率よく作物を育てられます。

2. 心地よい空気感になる

果樹を多く配置し、それが育つにつれ、自分が思っていた以上に体感的な変化がありました。特に夏場は明らかに以前よりも風が心地よく涼しく感じるのです。
その理由としては、単に木陰が生まれるというだけではなく、気温が高い日ほど葉からの蒸散量が増え、気化する際に周囲から熱を奪うことによって気温が下がることなどが関係しているのではないかと思っています。
そして果樹付近の気温と日なた部分の気温に差ができることによって、空気の移動も起こりやすくなるためそよ風が起き、涼しく感じるのでしょう。この気温調整と風を起こす作用は人にとってだけではなく、野菜が健康的に育っていくためにも大きなメリットとなります。

3. 景観が安定するのでモチベーションを保ちやすい

菜園という場所は野菜が元気に育っている時は良いのですが、うまく育っていない時や、端境期で野菜がほとんど収穫できない時期などは、とても寂しい景観になりがちで、そうなると畑に行くモチベーションが下がってしまいます。しかし、果樹が畑に植わっているだけで景観が保たれますし、花が咲いたり、実がなったりしている時期はとてもテンションが上がります。これらは家庭菜園をしていく上ではとても重要なことだと思っています。

4. 生物多様性が増す

果樹を植えるようになってから、さまざまな鳥が畑にやってくるようになりました。もちろん鳥が果実を食べるというデメリットもありますが、今のところそこまで大きな被害はないですし、それ以上に日々いろんな鳥が畑にやってきて楽しませてくれています。また、中にはイモムシなどの害虫を食べる、益鳥となる鳥もいると思います。

5. 有機資源が増える

特に有機農法や自然農法など有機物資源を用いて畑づくりをする人にとっては、果樹から得られる有機物資源は貴重な畑づくり資材になります。特に落葉果樹の場合は、冬には落ち葉を落としてくれますし、剪定(せんてい)した枝なども燃やして炭や木灰にすることで、土壌改良の資材にできます。

畑に果樹を植える3つのデメリット

実際に畑に果樹を植えてみてあらためて実感した、デメリットとなりうるポイントについても紹介します。

1. 大きくなりすぎると管理が大変

管理の手間自体は野菜よりも少ないのですが、適宜に剪定を行わないと背が高くなりすぎて手入れが大変になることがあります。果樹を植えるときは剪定の仕方も同時に学んでおくことをお勧めします。

2. 収穫まで時間またはお金がかかる

果樹は1年生の苗を植えた場合、そこから収穫まで数年かかるものもあります。3年生の大苗を買うと収穫までは早いですが、価格がだいぶ上がります。また、痩せ地にいきなりたくさん果樹苗を植えて、結局うまく育っていないという人も何人か見てきました。果樹苗の植え付け前には土壌改良をしっかりし、焦らず経験を詰みながら長い目で見て育てていくことをお勧めします。

3. 根元付近で育つ植物が限られる

果樹の根元で育つ植物、範囲、距離

果樹の根元付近は育つことのできる植物が限られてきますし、場所を取るので他の野菜を植えるスペースも狭くなります。最終的にどのくらいまで枝葉が広がるのかを見越した上で果樹を植える本数を決めることをお勧めします。

果樹の根元付近でも栽培できる植物は?

左側のスモモの下では青シソが育っている

果樹の根元付近は枝葉に日が遮られて日当たりが悪く、湿気がたまりやすいため、多くの植物はうまく育ちません。また、果樹の根や葉から分泌される生育阻害物質が周囲の植物の生育に悪影響を与えることがあるため、これも関係しているのではと思っています。
うちの畑で実践する中で、果樹の根元付近でも問題なく育ちやすい植物がいくつか見えてきたのですが、そのほとんどが地下茎の植物でした。これは僕の推測ですが、地下茎の植物は果樹と同様に根から生育阻害物質を分泌するため、他の植物が分泌する生育阻害物質に対してもいくらか抵抗性があるのではと思っています。それでは具体的な野菜を紹介します。

1. ミョウガ

日陰でも育つ野菜の代表格がミョウガで、ほったらかしでもよく育ちます。しかし育ちすぎると果樹の根元に湿気がたまり、果樹の生育に悪影響が出る可能性もあるので、注意します。

2. ショウガ

根元付近でも育ちますが、完全な日陰だと大きくなりきらないので、果樹の東側か南側に植えるとよいでしょう。

3. 青シソ

青シソは半日陰でも育つ植物ですし、むしろその方が葉が柔らかく育ちます。地下茎の植物ではありませんが、繁殖力が強いので果樹の根元付近でもよく育つようです。
試してはいませんが、似たような植物として赤シソやエゴマも同様に育てられるかもしれません。

4. ハッカ、ミントなどの地下茎ハーブ

これらの植物は日当たりの良いところでは繁殖しすぎることがあります。逆に半日陰になる果樹の根元くらいの方が穏やかに成長してくれますし、葉が硬くなりすぎません。
食用ではありませんが、うちの畑では多年草であるラベンダーセージも樹木の根元に植えていて、毎年花を咲かせてくれます。

5. ニラ

ニラも毎年勝手に果樹の根元から生えてきますし、半日陰でも育ちます。ただ湿気がありすぎると赤サビ病などが発生することがありますので、適宜に株分けなどしてあげるとよいでしょう。

畑に植えるお勧めの果樹

レモンを収穫する子供達

1. レモン、ミカン、ユズなどのかんきつ類

かんきつ類はそこまで大きくなりませんし、生育阻害物質もあまり強くないので、畑に植えるのにお勧めです。常緑なので、冬にも日陰を作りますが、落葉果樹よりも日差しに強いので、西陽が強く入る畑などでは西側に植えてあげるとよいかもしれません。
うちの畑ではレモンの木の下で大根やこぶ高菜などをこぼれ種栽培していますが、問題なく育っています。かんきつ類の多くは自家結実性(自身の花粉で受粉し実をつける性質)を持つので、1本からでも植えられる点もポイントです。

2. スモモ、サクランボ、リンゴなどのバラ科落葉果樹

これらの果樹は落葉樹であり、葉もあまり茂りすぎないので、強い日陰を作らないのが良い点です。ただしバラ科果樹は生育阻害効果が強いので、植物を一緒に植える際は、先ほど紹介した果樹の根元付近で育ちやすい植物を中心にすることをお勧めします。
また、かんきつ類よりもほったらかしにすると背が高くなりやすいので、剪定は適宜行いましょう。バラ科果樹の多くは1本では結実しない自家不和合性の性質を持つので、2本以上植える必要があります。

3. イチジク

イチジクの木

イチジクは落葉樹なので、冬に日陰になりにくい点と、どんな畑でも育てやすいのがポイントです。自家結実性なので1本から植えられ、挿し木で増やすこともできるので家庭菜園にはとてもお勧めです。

4. ブルーベリーやブラックベリーなどのベリー類

ベリー類は他の果樹よりもコンパクトに育てられますし、植え付けから収穫までが比較的早いので、家庭菜園向きの果樹のひとつです。1本からでも実がなりますが、異なる品種を合わせて植えることで、より実のなりが良くなります。

5. フェイジョア

赤い花を咲かせるフェイジョアの木

フェイジョアは一般的にはあまりなじみのない果物ですが、グアバの仲間で、甘酸っぱいキウイやパイナップルなどにも似た味わいのおいしいフルーツです。南米原産の常緑果樹ですが、耐寒性があり、関東以南の畑では地植えで育ちます。
僕はフェイジョアの花の見た目がとても好きなのでそこもお勧めなポイントです。病害虫に強く、剪定も簡単で、大きくなりすぎないので、庭木としても人気があります。

畑の居心地がかなり良くなった

初めて実がなったスモモをみんなで見上げている様子

畑に果樹を植えることにはもちろんデメリットもありますが、果実を食べて楽しむことだけでなく、畑の景観や居心地がかなり良くなったと実感しています。僕自身もまだ数年間の経験しかないので、これからもいろんな野菜との組み合わせを試しながら楽しんでいこうと思っています。果樹を植えるスペースがある人にはぜひチャレンジしてみてほしいです。

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