ずぼら女子・伊藤七の家庭菜園スペック

サツマイモをみんなで収穫
筆者は家庭菜園4年目の30歳です。農業をきちんと学んだ経験はありません。「何となく種をまいて、何となく見守るだけでも野菜ができるのか気になる」という好奇心から、無肥料・無農薬で栽培しています。
種はF1ではなく、固定種を使うことが多いですが、明確なこだわりはありません。「種取り(※)ができたら良いな」という思いがあるため、固定種を好んでいる程度の軽い気持ちです。
※作物が実った後、収穫しないまま一部を放置して、種ができた頃に種を集めて保存し、次の年にまた育てるために準備する作業。例えば、オクラを収穫せずに放置すると、中の白いつぶつぶが次第に黒くなり、そのまま種として使える。
使わせてもらった土地は、数年前まで夏野菜が育てられていた場所です。農薬は使わず、肥料としておがくずや米ぬかを入れていたと聞きました。
土壌酸度は、Ph6.5程度でした。ちょうど良い数値だろうと判断し、肥料は施さずに利用しました。

PHは6~6.5程度
最小限の手入れでも育った作物ランキング

大根の間引き菜
私自身、ずぼらな性格なので、小まめな水やりや雑草取りはしていません。摘心や、間引きなどの風通しを良くする作業も十分とは言えません。そんな中でも、上手く育つ野菜がいくつかありました。
ここからは、基本的には春に栽培を始めて、夏に収穫する春夏の作物に絞って「あまり手が掛からない」「失敗しにくい」という観点でランキングにしました。
私の経験談だけでは心もとないので、山梨県都留市で2012年から農業をしている「はのさち自然農園」の羽野幸(はの・さち)さんの見解も交えて紹介していきます。

はのさち自然農園はのさちさん。2012年春に独立。農薬、除草剤、肥料を使わず、お米の他約20種類の野菜を栽培している。地域のパン屋さんと共に小麦を栽培したり、調味料を作るために大豆の栽培をしたりと、農を起点にした暮らしを楽しんでいる
● 1位:薬味類(小ネギ、シソなど)
● 2位:サツマイモ
● 3位:ツルムラサキ
● 4位:春菊
● 5位:ハーブ類(レモンバーム、ホーリーバジル、ミントなど)
● 6位:オクラ
● 7位:カボチャ
● 8位:ミニトマト
● 9位:ナス
● 10位:ピーマン
第1位:薬味類(小ネギ、シソ)

小ネギパッケージ
薬味類はよく育ちました。匂いが強く、植物自体が虫除けになるからでしょうか。夕飯前にささっと収穫して豆腐に散らせば、ちょっと豪華な冷ややっこになります。
しかも植えっぱなしで放置していたら、こぼれ種が発芽したようで、種を植えなくとも翌年も収穫できました。家庭菜園の面白さですね。
第2位:サツマイモ

立派なサツマイモ
サツマイモは、一度植えたらほとんど放置してもたくさん実りました。やったことと言えば、2回ほどツルを土からはがしたことくらい。

サツマイモわらで覆う
周囲にわらを敷いていたこと、畝にはサツマイモのツルが立派に覆い被さっていることからか、雑草もそう多くは生えてきません。
第3位:ツルムラサキ

ツルムラサキを収穫
ツルムラサキは夏の暑い時期でもピンピンしている上に、秋に差し掛かっても収穫できました。葉物が少ない夏にはありがたい。
第4位:春菊
春菊も匂いが強いからか、虫が寄って来ませんでした。春でも夏でも育ちます。
第5位:ハーブ類(レモンバーム、ホーリーバジル、ミントなど)

キホーリーバジルがわんさか
ハーブ類は、芽さえ出てしまえばどんどん増殖する印象です。特にミントは繁殖力が強く、想像以上に広がってしまうことがあるらしく、むしろ注意が必要です。
レモンバームは多年草で、基本的には越冬できるのだそう。しかし私は畑を整備する際に「レモンバームは枯れてしまったな」と思い込み、土に返してしまいました。次回からは越冬させたいです。
第6位:オクラ

可愛い形のダビデの星
オクラも、あまり手を掛けなくとも育ちました。
一般的な六角形のオクラの他、断面が丸い島オクラ、短く太っているダビデの星の3種類を栽培しました。オクラは1日でも収穫が遅れると繊維が固くなり食べられなくなりますが、島オクラは収穫が遅れてもおいしく食べられます。
私のようにずぼらな人には、島オクラが良いかもしれません。

オクラを割ると種が出てくる
オクラは実から種を取ることも簡単で、翌年以降は種を買わずに栽培できるのもうれしいところです。
第7位:バターナッツカボチャ

バターナッツカボチャを収穫
カボチャも簡単に実りました。ただ、地面をはいつくばるように伸びていくので、面積が必要です。冬まで貯蔵できますので、食糧として心強い存在です。
第8位:ミニトマト

ミニトマトを収穫
いわゆる夏野菜は生命力が強く、問題なく育ちました。作付け以降は水やりもしていません。
第9位:ナス

ナスを収穫
ナスは夏頃~11月ごろまで収穫できました。千葉の房総エリアは比較的温暖な気候なので、夏野菜の終わらせ時が分からなくなるくらいです。
第10位:キュウリ

不ぞろいのキュウリを収穫
ウリハムシに葉っぱを食べられながらも、毎年ちゃんと実ってくれるのがキュウリです。ただ、摘心を適切にできていないせいか、一気に実り過ぎて食べ切れないという問題が出てきます。また、病気のせいなのか、風通しが悪いのか、その後一気に枯れがちです。
自己流で家庭菜園をしていると、摘心のタイミングが難しく感じます。せっかく生えてきたのに切ってしまって良いのか、切る場所はここで良いのか。迷っているうちに植物が大きくなってしまい、結果的に「実が小さいな」「一気に実ができてしまったな」となりがちでした。
ただ、病気や気候(寒さに当たると一晩で枯れることがある)で一気に枯れることもあるので、うまくいかない原因が摘心とは限りません。
ちなみに、あまりメジャーではありませんが、摘心をしないで脇芽も育てながら栽培する農法もありますよ。
プロ農家目線“ずぼらな性格の人におすすめの作物”
上述のランキングを踏まえ、はのさんに「農家さん目線で、ずぼらな性格な人におすすめできる作物はありますか?」と聞いてみました。
・ジャガイモ:種芋から育てることになりますが簡単です。サル、イノシシが好きなので、動物に注意です。
・大葉(シソ):動物に食べられることがあまりなく、葉っぱもシソの実も楽しめるのでおすすめです。
・エダマメ:発芽する時期だけ、鳩が食べに来ます。また、鹿はエダマメが大好きなので、鹿の出るエリアでは対策が必要です。
・ダイコン:葉っぱを多少食べられても、白い部分が育ってくれたらそんなに困りません。間引きもおいしく楽しむことができます。イノシシ、サルは大根が好きなので注意です。
・インゲン豆:つるなしタイプだと、支柱を立てなくても大丈夫です。鹿が大好きな野菜の1つで、私自身も全部食べられた経験があります。サルも好きです。
・ツルムラサキ:夏の葉物が少ない時に大活躍し、虫が付きにくいです。5cmくらいのサイズまでは、幼虫に食べられることもあるので、苗にしてから植えるのもおすすめですよ。つるなしタイプのタネを選ぶと、支柱を立てなくても大丈夫です。鹿がたまに食べることがあります。
・オクラ:こちらも成功しやすいと思います。1箇所に2~3粒をまいて、間引く時は、ハサミでカットすると良いです。引っ張って抜くと、残ったオクラの根っこを傷付けてしまいます。鹿が好きな作物ですね。
私が栽培してきた感覚と近いようで、安心しました。
一度もうまくいかなかった作物

たねの森の種たち
一方で、何度チャレンジしても上手くいかなかった作物もいくつかありました。独断と偏見で、難易度順に紹介していきます。
● 第1位:キャベツ
● 第2位:ブロッコリー
● 第3位:ミズナ
● 第4位:ベビーリーフ
● 第5位:ニンジン
第1位:キャベツ
キャベツは、うまく育つ気配が全くしませんでした。ポットに種をまき、軽くネットを掛けていましたが、芽が出ては葉っぱを食べられることの繰り返し。5cmくらい芽が出て以降、成長する様子を見ることはできませんでした。
キャベツは価格の高騰が続いていますが、1玉数百円で購入できるなら安く感じるほど、私には難易度が高く感じられます。
第2位:ブロッコリー
ブロッコリーもキャベツとほとんど同じく、上手くいくイメージが湧きませんでした。一度だけ秋に種を直播きしたことがありましたが、その時は小さなブロッコリーがひとつだけ実りました。サラダに入っている1かけくらいの大きさです。
秋冬であれば、可能性があるのかもしれません。
何もしないと虫たちが食べに来ます。確実に収穫したい!ということであれば、ネットをするのは1つの有効な手段です。ネットをしていても食べられることはありますが、物理的にブロックすることができるので、何もしないよりはスカスカにならないです。
ネットをしないで栽培する時は、キャベツやブロッコリーを食べに来た幼虫たちを1匹ずつ取り除くことを実施しました。たくさんの幼虫を取り続けて感じたのは、孵化する前に卵を見つけて取り除く方が、幼虫を取り除くよりも楽だということです。
第3位:ミズナ
ミズナは葉がスカスカになり、おいしく食べることはできませんでした。
第4位:ベビーリーフ

虫食いのベビーリーフ
ベビーリーフもミズナと同じく、葉が食べられてしまいました。
第5位:ニンジン

ニンジンを収穫
ニンジンは何度種まきをしてもうまく育ちませんでした。虫食いではなく、そもそもほとんど発芽しなかったのです。理由は、ニンジンを発芽させるには、一定期間湿り気を保たなければならないからだと思います。
私はずぼらなので、「水やりを小まめにしなければ」と分かっていても、足りない日があったのだと思います。
運よく成長したニンジンも、親指ほどの太さにしかなりませんでした。ずぼらな無肥料・無農薬栽培には適さないのかもしれません。
また、芽が出るまでの約5日間は、まいた部分が乾いていない状態をキープできていますか?私も基本的に水やりはしないですが、ニンジンだけは芽が出るまで毎日水やりをしています。
土を掛け過ぎていませんか?土の掛け過ぎも発芽しにくくなることにつながります。
これらの条件を満たすと芽が出る確率は、ぐっと上がると思います。
実際のところ、鎮圧の作業は全くしていませんでした。むしろ「土を被せすぎない方が良い」というイメージがあり、ふわっと被せていたくらいです。水もこまめにあげられなかったので、うまくいかない要因は複数あったことを再確認しました。
農家さん目線の“ずぼらな性格の人には難易度が高い作物”は?
約4年の農作業を経験し、手を掛けないで育てることが難しい品目もいくつかあることが分かりました。プロの目線で、ずぼらな性格の人には向かない作物について質問をぶつけてみました。
小さなうちは、虫に食べられるので、直播より苗にしてから植えるのがおすすめです。
寒さに弱く、霜に当たると枯れてしまうことがあります。朝の最低気温が低くなる前の日に、寒さ対策が必要です。
また、キャベツやブロッコリーは畑が肥えていないと結球に至りません。時期的に虫が多いので難しいです。特にブロッコリーは作物に幼虫が入ってしまうと、見つけるのが大変です。
夏野菜は芽を出すのが意外と難しいこと、やはりキャベツやブロッコリーは難易度が高いことが分かりました。
ただし、その年の天候、地域ごとの気候、耕作している畑の土の質によって状態が異なるので、うまくいった原因やうまくいかなかった原因を特定するのは難しいものです。
畑の歴史(耕作放棄地だった期間、慣行栽培だった期間など)によっても異なるため、ご自身の実態に即して参考してみてくださいね!
これから心掛けたいこと

カボチャの芽
特に力を入れる作物を決めて、それだけは上手に育つようにしたいです。ハーブティーが好きで、いつかハーブを使った事業もしたいので、ホーリーバジルに力を入れようかと考えています。
キャベツやブロッコリーは大人しく秋冬に栽培したり、うまくいかない場合は種ではなく苗を購入したり、ずぼらな自分に合ったやり方を探っていきたいです。葉物は水耕栽培にもチャレンジしてみたいですね。
今までは「種からやりたい」「固定種が良い」と頭でっかちなこだわりがあったのですが、もうちょっと緩めていきたいです。
まとめ
半農半Xの暮らしの中で「育ちやすい作物」「難しい作物」についていろいろと感じていましたが、農家さんの意見と一致している部分も多くてうれしかったです。
私のようにずぼらな性格の人は、失敗の少ない作物からチャレンジしたり、苗を購入して作物を育てると気楽かもしれません。今からなら種まきも苗からの栽培も間に合うはず。夏野菜の栽培を楽しんでいきましょう!