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九条ネギとは?普通のネギとの違いや栽培方法、おすすめレシピを解説

sato tomoko

ライター:

九条ネギとは?普通のネギとの違いや栽培方法、おすすめレシピを解説

京都の伝統野菜である「九条ネギ」は、柔らかな葉と甘みのある風味が特徴の葉ネギです。この記事では、白ネギとの違いや歴史、栽培方法、調理に適した切り方を分かりやすく解説。更に、薬味はもちろん、おかずやごはんものなど、さまざまな料理に応用したレシピも紹介します。主に関西で親しまれてきた九条ネギは、今や全国で身近な食材です。その魅力を知って、いろいろな料理で味わってみてください。

九条ネギとは?

2.九条ねぎ
九条ネギは、京都で古くから親しまれてきた伝統的な葉ネギで、「京の伝統野菜」のひとつに認定されています。主に「九条細(浅黄九条)」と「九条太」の2系統があり、それぞれ分けつの数や太さが異なります。

京都で「九条ネギ」と言えば、一般に「九条太ネギ」を指すことが多く、柔らかな葉と芳醇(ほうじゅん)な香りが特徴です。葉の内部にはゼリー状のぬめりがあり、これが甘みの元とされています。一方の「九条細」は細ネギとも呼ばれ、薬味や和え物などに用いられる繊細な品種です。

九条ネギは京都府内を中心に周年栽培されていますが、最もおいしい旬は冬(12〜2月)。寒さに当たることでぬめりが増し、甘みが一層引き立ちます。

九条ネギの歴史

九条ネギの起源は奈良時代にさかのぼります。伏見稲荷大社の建立時に、浪花(現在の大阪)から京都へと原種が持ち込まれたと伝えられています。その後、京都・九条地域で特に品質の高いネギが育ったことから「九条ネギ」と呼ばれるようになりました。

現在は京都府が定める「京の伝統野菜」に認定されている他、環境に配慮した生産方法や品質基準を満たす農産物として「京のブランド産品」の品目にも登録され、京都の食文化を支える重要な存在です。

京都原産だが全国で栽培可能

九条ネギは、もともと京都市南区・九条地区で栽培されていた伝統野菜です。現在では京都府全域で広く栽培されていますが、商標登録されていないため、全国各地でも「九条ネギ」として栽培・販売されています。

京都府産のみが「京の伝統野菜」や「京のブランド産品」として認定されますが、九条ネギ自体は固定種(在来種)の他、その土地に適応させた交配種(F1種)も流通しており、さまざまな地域での栽培が可能です。

白ネギや他の葉ネギとの違い

九条ネギは、京都特産の葉ネギの代表品種で、柔らかな葉と豊かな甘み、香りの高さが際立っています。

ネギは大きく「白ネギ(長ネギ・根深ネギ)」と「葉ネギ(青ネギ)」に分類されます。白ネギは深く土を寄せて軟白栽培し、白く伸びた葉鞘部を食べる品種。一方、葉ネギは土寄せをせず、緑の葉を主に食べる西日本の主力で、株元から複数に分けつするのが特徴です。

葉ネギには、β-カロテン、葉酸、カルシウムなどの栄養素が豊富に含まれ、若採りしたものは「小ネギ」「万能ネギ」としても親しまれています。

また、九条ネギに似た「ワケギ(分葱)」は、ネギとタマネギの雑種で、根元に膨らみがあるのが特徴です。こちらも株元から分けつし、薬味などに使われます。

九条ネギの栽培方法

3.九条ネギの苗
九条ネギの生育適温は20~25℃で、種まきの適期は4月から10月までと比較的幅広く対応できます。種まきから収穫までは丁寧な管理が求められますが、丈夫で育てやすく、家庭菜園やプランター栽培にも適しています。種まきから2〜3カ月で収穫が可能で、根元を残して刈り取れば、繰り返し収穫できるのも魅力です。

種まき

苗床に深さ1cm、間隔15cmのまき溝を作り、種をスジまきして軽く土を掛けます。地植えする場合は、畝に直接スジまきします。種まきから6~7日で発芽します。

間引き

間引きは2回行います。1回目は草丈が7cmほどになった頃に行い、株間を約1.5cmに整えます。2回目は草丈が10cm前後で、株間を3~5cm程度に広げて、生育スペースを確保します。

土作り・植え付け

え付けの2週間前までに、堆肥・苦土石灰・元肥を土に混ぜ込み、よく耕して畝を立てておきます。育てた苗は3~5本ずつ束ね、株間15cmで植え付けます。定植後はたっぷりと水を与えましょう。

水やり・追肥

土の表面が乾いたら、その都度たっぷりと水をやります。追肥は植え付けから1カ月後が目安で、同時に土寄せを行うことで、倒伏を防ぎ、丈夫な株に育ちます。

収穫する

草丈が40cm前後になれば収穫適期です。小ネギとして利用する場合は、30cmほどで抜き取って収穫します。刈り取り収穫の際は、根元を4〜5cm残して切ると、株が再生し、3〜4回ほど繰り返し収穫が可能です。

詳しい栽培方法はこちら
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九条ネギの調理の仕方

柔らかく、辛みも穏やかな九条ネギは、生でも加熱してもおいしくいただけます。緑の葉と白い部分を使い分けながら、調理法に合った切り方を選ぶことで、より風味や食感を引き立てることができます。以下に代表的な切り方とその用途を紹介します。

4.九条ネギの切り方

小口切り:薬味やトッピングに

小口切り(輪切り・写真①)は、ネギを端から薄く切る方法です。このように切ったものは「刻みねぎ」として市販もされています。生のまま使用でき、ネギの香りをそのまま楽しめます。冷ややっこの薬味、麺や汁物のトッピングにぴったりです。

斜め切り:鍋物や炒め物に

斜め切り(写真②)は、端から斜めに包丁を入れる切り方で、表面積が広くなるため香りと味が出やすくなります。鍋物や丼物、炒め物など、加熱調理全般に適しています。薄く切る場合は「斜め薄切り」と呼ばれます。

ぶつ切り:ぬめりと食感を活かして

ぶつ切り(写真③)は、好みの幅でざっくりと切る方法です。九条ネギならではのぬめりや、柔らかな食感を楽しめる切り方で、煮物や焼き物などの加熱調理に向いています。白い部分は焼きネギにすると甘みが引き立ちます。

縦切り:白髪ねぎや巻き料理に

縦切り(写真④)は、 繊維に沿って縦に切る方法で、辛みが抑えられ、煮崩れもしにくくなります。長めにぶつ切りしたネギを2〜8等分に縦割りにしてハムなどで巻けば、前菜にも。縦に細く切る「白髪ねぎ」(写真⑤)は、サラダや麺の薬味にも最適です。

冷凍保存とその調理法

九条ネギは冷凍保存も可能です。あらかじめ用途に応じたサイズに切り、1回分ずつラップに包んで冷凍用保存袋に入れましょう。使う際は凍ったまま調理できます。薬味として使う場合は、温かい料理にそのまま加えれば風味が楽しめます。

九条ネギのおすすめレシピ5選

柔らかな葉と香りの良さが魅力の九条ネギは、薬味だけでなく主役級の一品にも大活躍。ここでは、京風の定番からごはんやおかず、おつまみにもなるアレンジメニューまで、九条ネギの魅力を存分に味わえるレシピを5つご紹介します。旬の時期はもちろん、通年楽しめる万能食材として、ぜひ食卓に取り入れてみてください。

九条ネギのぬた

5.九条ネギのぬた
柔らかな九条ネギをさっと湯がき、白みそ仕立てのぬたに。甘みと酸味のバランスが絶妙な、京風の一品です。

材料(2人分)
・九条ネギ           1~2本分(約100g)
・白みそ            大さじ2
・酢              大さじ1
・砂糖             小さじ1

作り方
1.九条ネギは5〜6cmの長さにぶつ切りし、さっと塩茹でして水に取り、粗熱が取れたら水気を絞る
2.ボウルに白みそ、酢、砂糖を入れてよく混ぜ、ぬたを作る
3.1の九条ネギに2のぬたをあえる

九条ネギのかき揚げ

6.九条ネギのかき揚げ
刻み九条ネギをたっぷり使った、香り高いかき揚げ。サクサク衣に甘みが引き立ち、塩で食べても天つゆで食べても絶品です。

材料(2人分)
・九条ネギ        1〜2本分(約100g)
・ニンジン        30g
・干しエビ        10g
・天ぷら粉        1/2カップ(約50g)
・水           75ml(天ぷら粉の表示に準ずる)
・揚げ油         適量
・塩または天つゆ     適量

作り方
1.九条ネギは5mm幅の小口切りにし、ニンジンは細切りにする
2.ボウルに九条ネギ、ニンジン、干しエビを入れ、薄く天ぷら粉(分量外)をまぶす
3.別のボウルで天ぷら粉と水を軽く混ぜ合わせ、2を加えてざっくり混ぜる
4.油を170~180℃に熱し、3をスプーンですくって油に落とし、上下を返してきつね色になるまで揚げる
5.油をよく切り、塩または天つゆでいただく

九条ネギとじゃこの混ぜご飯

7.九条ネギとじゃこの混ぜご飯
ふわっと香る九条ネギとカリカリじゃこが相性抜群。冷めてもおいしい、優しい味わいの混ぜご飯です。

材料(2人分)
・ご飯          2膳分
・九条ネギ        1/2束分(約50g)
・ちりめんじゃこ     大さじ2
・白ごま         小さじ1
・ごま油         小さじ1
・塩           少々

作り方
1.九条ネギは2mm幅の小口切りにする
2.フライパンにごま油を熱し、ちりめんじゃこを軽く炒める
3.炊きたてまたは温かいご飯に、2と九条ネギ、白ごまを加えてさっくり混ぜる
4.味をみて、塩で調整する

九条ネギと豚肉のしゃぶしゃぶ

8.九条ネギと豚肉のしゃぶゃぶ
九条ネギと豚肉だけのシンプルなしゃぶしゃぶ。九条ネギの甘さと香りが引き立つ、あっさりヘルシーな一品です。

材料(2人分)
・九条ネギ 1~2本分(約100g)
・豚薄切り肉        200g
・だし汁(または湯)      800ml
・ポン酢またはごまだれ     適量

作り方
1.九条ネギは斜め薄切りにし、豚薄切り肉は食べやすい大きさに切る
2.鍋にだし汁または湯を沸かす
3.沸騰したら火を弱め、豚薄切り肉を1枚ずつ広げながら湯にくぐらせ、色が変わったら取り出す
4.続いて九条ネギをさっと湯にくぐらせ、しんなりしたら引き上げる
5.ポン酢またはごまだれに付けていただく

九条ネギの米粉チヂミ

9.九条ネギの米粉チヂミ
米粉でもっちり&カリッと仕上げた九条ネギのチヂミ。香ばしく焼けたネギの甘みと、ごま油の風味が絶妙。付けだれと一緒にどうぞ。

材料(2人分)
・九条ネギ           1〜2本分(約100g)
・米粉             1/2カップ(約50g)
・片栗粉            大さじ1
・卵              1個
・水              60ml
・塩              少々
・ごま油(またはサラダ油)   大さじ1(焼き用)
=たれ=
・しょうゆ           大さじ1
・酢              大さじ1
・ごま油            小さじ1
・白ごま            少々
・一味唐辛子(お好みで)    少々

作り方
1.九条ネギは5~6cmの長さのぶつ切りにする(太い場合は縦半分に割ると良い)
2.ボウルに米粉、片栗粉、卵、水、塩を入れてよく混ぜて生地を作り、九条ネギを加えてざっくりと混ぜ合わせる
3.別のボウルにしょうゆ、酢、ごま油、白ごま、好みで一味唐辛子を混ぜ合わせ、付けだれを作る
4.フライパンにごま油を熱し、生地を流し入れて平らにならし、中火で両面をこんがり焼く
5.食べやすい大きさに切り、付けだれを添える

九条ネギの魅力を食卓に

10.九条ネギの小口切り
京都の伝統野菜として親しまれてきた九条ネギは、柔らかな葉と高い香り、甘みが特徴です。薬味としてはもちろん、主菜やご飯ものにも応用できる万能食材で、旬の冬を中心に一年を通じて楽しめます。

九条ネギをはじめとする葉ネギは西日本で多く栽培され、関西では葉ネギ、関東では白ネギが主流という地域性がありました。しかし現在ではいずれも全国で流通しており、九条ネギも関東のスーパーで見かけることが増え、身近な京野菜となっています。

また、家庭菜園でも育てやすく、冷凍保存もできることから、日常の食卓にも取り入れやすい九条ネギ。切り方や調理法を工夫しながら、地域の風土が育んだ九条ネギの味わいを、ぜひ暮らしの中で楽しんでみてください。

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