生産現場に忍び寄る麦類赤かび病の影
消費者の国産志向で麦類の需要が高まっています。
生産者が安定的な収量と品質の確保に取り組む一方で、近年の気候変動の影響による病害の多発は現場の大きな悩みです。
主な病害は、赤かび病、うどんこ病、赤さび病、網斑病などですが、その中でも特に赤かび病には注意を払う必要があります。

国産小麦の産地のひとつである群馬県高崎市の麦畑
赤かび病は、フザリウム属菌などによって引き起こされ、穂の一部や全体が赤褐色になり、ピンク色のかびが発生します。
この病害の厄介な点は、麦の収量や品質を低下させるだけでなく、食品安全上の問題となる「かび毒」によるリスクを高めることです。
赤かび病に感染した麦は出荷停止となり、産地と生産者に大きな経済的損失を招くケースも考えられます。

赤かび病は糸状菌の一種に起因する麦類の重要病害
この赤かび病は、小麦や大麦の開花期に高温多湿の気象条件が重なることで発生しやすく、さらに近年は越冬する病原菌の生存率が上昇し、発生時期の早期化や長期化も指摘されています。
現場では、赤かび病によるかび毒発生の不安と、薬剤散布のタイミングや選定の難しさが課題として浮上しています。
麦類用殺菌剤ワークアップフロアブルに注目
産地のJAや各自治体では、気象データや作物の生育状況に基づいて赤かび病の発生リスクを予測し、「病害虫発生予察情報」を発表して適期の防除を呼びかけています。
小麦では開花期、二条大麦では穂揃いから約10日後の殺菌剤の散布が基本ですが、発生が多く見込まれる年には2回目の散布が推奨されるなど、細心の注意が払われています。
こうした背景から、現場では防除効果が高く、作業性の良い資材が求められています。
そのひとつが、北興化学工業株式会社が開発・販売する麦類用殺菌剤「ワークアップフロアブル」です。
メトコナゾールを有効成分として、麦類の赤かび病、赤さび病、うどんこ病、雪腐小粒菌核病などに幅広く効果を発揮し、
特に赤かび病菌が産生するかび毒(デオキシニバレノール:DON、ニバレノール:NIV)の抑制効果が確認されており、食品の安全性確保の面でも注目されています。

「ワークアップ®フロアブル」(500ml)。有効成分メトコナゾールにより、赤かび病に対して高い効果を示し、特に赤かび病が産生するかび毒を低減する働きがある
2009年の発売以来、多くの生産者に支持されてきた製品で信頼性が高く、2019年には無人航空機(ドローン)による散布に適用拡大されました。
省力化と安定した防除効果の両立を可能にする資材として活用が広がっています。
うどんがおいしい群馬県、大型生産者が効果と省力化を実感
群馬県高崎市で小麦と大麦を生産する松本浩幸さん(64)も、新たな麦類の防除剤にワークアップフロアブルを選びました。
群馬県は日照時間が長く乾燥した気候に恵まれ、全国でも屈指の麦の産地。県内では水稲の裏作として大麦・小麦の栽培が盛んに行われています。
松本さんは50歳のときに和牛肥育を米・麦・多品目野菜の栽培へと切り替えました。
約17ヘクタール(うち1ヘクタールは受託)の広大な麦畑を、妻と二人で管理しています。
麦は米の収穫が終わった後の11月に播種し、6月に収穫します。
栽培しているのは、群馬県で育種された小麦品種でうどん用の「きぬの波」と麺・パンに適した「さとのそら」、そして六条大麦です。
全量をJA高崎に出荷し、「きぬの波」は高崎産小麦100%のご当地うどん「高崎うどん」にも使われています。

松本浩幸さんは農家の5代目。代々の酪農から和牛肥育、さらに麦類をはじめとする現在の品目に切り替えた
全国的な赤かび病リスクの高まりを受けて、高崎市でも5年ほど前から赤かび病の防除体系が整備され、松本さんも本格的な対策に取り組むようになりました。
殺菌剤の選定にあたっては、「効果が高く、ドローン散布が可能なもの」を希望し、JAから「ワークアップフロアブル」の紹介を受けました。
「赤かび病の予防には、殺菌剤の適期散布が肝心です」と松本さん。
高崎市から出された情報をもとに、今年は4月20日ごろから大麦の防除を開始し、続いて小麦の防除を4月末から5月の頭にかけて行いました。
ドローンの操縦は松本さん、誘導は妻が担当し、息の合ったコンビで効率的に散布をしています。
住宅地密集地にある圃場では乗用管理機を使い、細長い土地では畔からセット動噴を使うなど、立地に応じた工夫も凝らしています。

松本さんの広大な麦畑
「麦の防除は大仕事ですが、ワークアップフロアブルは、ドローンで使えるので大幅に省力化でき、この1回の散布で赤かび病をはじめ、うどんこ病や赤さび病の防除もできて助かっています」と松本さん。
ワークアップフロアブルでの防除を開始して以降、うどんこ病はほとんど見なくなり、赤かび病は現在まで一度も発生していません。
以前、乗用管理機での散布で気になっていた車輪の踏み跡も、ドローンで解消されました。
松本さんの麦類はすべてJAを通じての契約栽培。病害で収量を落とすわけにはいきません。
「ワークアップフロアブルは値段、効果、使いやすさのバランスがよく、重要な小麦の開花期を無事に乗り切ることができました」と笑顔を見せます。
産地ぐるみで予防的防除、日本の食の安全を守る
麦類用殺菌剤「ワークアップフロアブル」は、付着性が良く、浸透移行性と耐雨性を備え、収穫7日前まで使用できる点も現場にとっては大きな利点です。
開発メーカーの北興化学工業株式会社ではクレハ株式会社と共にワークアップ普及会を組織し、その情報提供を行い、より効果的な使い方を促進しています。
北興化学工業株式会社東京支店の有田一好さんは、フロアブル剤の利便性について、
「水に混ざりやすくドローンに対応するなど、生産者のニーズに応えた製品になっています」と話します。
松本さんは「10リットルのタンクに1本(500ml)なので分量計算も楽でいい」と、その使い勝手の良さに太鼓判を押します。

有田一好さんは、関東・甲信を担当する技術チームのマネージャー
現在まで赤かび病を出したことのない松本さんも、油断はできません。
赤かび病によって麦類に産生される人体に有害なかび毒は、食の安心・安全を揺るがす問題です。
近年、全国的な気候変動の気温・湿度の上昇で赤かび病が多発する可能性は高く、過去には他県で実際に流通した小麦からかび毒が検出されたというニュースもありました。
「高崎市内の麦はすべてまとめて乾燥・調製されるため、一部でも赤かび病に感染すると全てが台無しです。出荷できなければ収入にならないし、産地全体の評価が落ちてしまいます。だからこそ、防除を徹底しなければなりません」と松本さんは適期の予防的防除の重要さを強調します。
健全な麦づくりに徹底防除とワークアップフロアブル
ワークアップフロアブルを散布して約10日後、松本さんの麦畑では青い穂が穏やかに波を打っていました。
赤かび病の気配は微塵もありません。
松本さんに今後の抱負をたずねると、「一等級の麦を収穫して、収量と品質の向上をはかりたいですね。そのためには初期の防除がとても大切です」と適期防除の重要性を繰り返し、「国産麦の価値を伝え、消費者にもっと使ってもらいたい」という思いを語ってくれました。
こうした現場の声に応えて、資材を提供する北興化学工業株式会社 東京支店の有田一好さんはこう話します。
「食の安全のために赤かび防除は必須です。そこに寄与する資材として安定供給していくのはメーカーの使命。
すでにドローンの登録を取得していますが、今後さらに省力的な散布方法が開発されれば、適用拡大していきたい」と話します。

病害を防ぎ収量・品質を向上させたいという思いはひとつ
風にそよぐ麦穂の健やかな実りは生産者の努力の賜物。頼れる麦類用殺菌剤「ワークアップフロアブル」が、安心な麦づくりと食の安全をしっかりと支えています。
■取材協力
JA高崎
■お問い合わせ
ワークアップ普及会
株式会社クレハ [事務局] 北興化学工業株式会社
〒103-8341 東京都中央区日本橋本町一丁目5番4号
TEL:03-3279-5161