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木の枝を畑に生かす。ビーンティピ、ウィグワム、バイオネストの作り方【DIY的半農生活Vol.28】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

木の枝を畑に生かす。ビーンティピ、ウィグワム、バイオネストの作り方【DIY的半農生活Vol.28】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約3.5反(35アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。今回は、庭木の剪定(せんてい)などで出る木の枝を畑に生かすアイデアを紹介。トマトの茎やインゲンマメのつるを誘引する支柱、有機物を積み上げて堆肥(たいひ)化するためのコンポスト枠、栽培スペースを囲んで畑をレイアウトするレイズドベッドなど、素朴な自然素材だからこそ畑の景観が素敵になる。

ベリー類の支柱に、木の枝のトレリスやオベリスク

5月はイチゴが豊作だった。数年前、畑の一角に10株ほどの苗を植えて、そのまま放任していたのだが、毎年勝手気ままにランナーが伸びていつの間にか株が増え、たくさんの実をつけるようになったのだ。半野生化しているイチゴだが味は決して悪くない。小学校に通うわが家の子どもたちは、毎朝、赤く熟した実を見つけると、それを口に入れて学校に向かう。

イチゴ_MG_3775

放任イチゴがたくさんの赤い実をつけた

そのイチゴも6月になると終わりだ。そして、次に実をつけるのがラズベリーとベイベリー(ヤマモモ)。それからブラックベリー、ブルーベリーと続き、夏が終わるまで甘酸っぱい実がとり放題だ。そうだ、畑の隅にマルベリー(クワの実)の木も生えていたっけ。おそらく野鳥のフンに混じっていた種が発芽して育ったものだが、マルベリーは成長が早く、気づいたときには私の身長を超えるほど大きくなっていた。これだけたくさんのベリーを収穫するのは大変だ。とてもじゃないが食べ切れない。でも、大丈夫。収穫は妻と子どもたちに手伝ってもらうし、たくさんとれたらジャムやジュースにすればいい。妻にはパウンドケーキも焼いてもらおう。ベリー!ベリー!ベリー! あぁ、なんてすばらしいんだ。

ラズベリー_MG_3861

木の枝のオベリスクにラズベリーを誘引する

これらのベリー類は、イチゴと同じようにほぼ放任でも育つが、実つきをよくするなら剪定をしたほうがいい。特に、ラズベリーとブラックベリーは広範に伸びる枝を支柱に誘引してやらなくてはいけない。その支柱には木の枝を使っている。近くのクリ畑で、早春に剪定が行われるときに出る剪定枝をもらってくるのだ。近くの山や森に落ちている枯れ枝を拾ってきてもいい。その枝を適当な長さに切って、何本かを組み合わせてトレリス(格子状やフェンス状の柵や垣根)やオベリスク(円すいや円柱などの塔状の支柱)にするのだ。市販のまっすぐな緑色の支柱と違い、緩やかに曲がっていたり、枝分かれしていたりする自然な枝が植物になじんで、畑の景観を素敵にしてくれる。
支柱には竹も使いやすいが、木の枝には竹とはまた違う素朴な趣がある。

北米先住民の住居を模したビーンティピとウィグワム

野菜の支柱にも木の枝は使える。その方法のひとつに「ビーンティピ」というのがある。「ビーン(bean)」はマメ、「ティピ(tipi)」は北米の先住民が使っていた円すい状のテントである。つまりビーンティピというのは、竹や木の枝で円すい状に組んだ支柱にマメ(主につるありインゲン)のつるをはわせてテントのように仕立てたものだ。中に小さな子どもが入ることもできる。

ビーンティピの作り方

①枝を用意する

ティピ材料_MG_3871

ビーンティピの支柱に使う、長さ約2.5メートルのクリの枝5本を用意する。

②枝を立てる

ティピ枝を差す_MG_3873

5本のクリの枝をバランスよく円すい形に立てる。中に入れるように1カ所は枝と枝の間隔を広くとっておく。枝は土に30センチほど差して安定させる。

③枝の上部をひもで結ぶ

ティピ結ぶ_MG_3477

5本の枝が1カ所に集まるてっぺんを麻ひもやシュロ縄できつく結ぶ。

④枝の間にひもを渡す

ティピ横ひも_MG_3483

インゲンのつるが絡みやすいように枝の間にひもを渡す。ひもは20~30センチの間隔で支柱の上まで渡していく。支柱の間を広くとった入り口にはひもを渡さない。

⑤完成

ティピ完成_MG_3887

完成。ビーンティピの周りに株間30センチでつるありインゲンの種を1カ所2~3粒まく。つるが繁茂すると緑のテントのようになる。ゴーヤーを植えてもいい。

ビーンティピのような木の枝の支柱は、枝の太さや形状、組み方、また仕立てる野菜によっても見た目が変わる。構造自体はビーンティピとほぼ同じだが、マメではなくトマトなどを仕立てる場合、それを「ウィグワム(wigwam)」と呼んだりもする。これもやはり北米先住民の住居にそういうものがあるのだ。

ウィグワムの作り方

①枝とつるを用意する

ウィグワム材料_MG_3895

長さ2メートルほどの枝9本とつるを用意する。つるの長さは適宜。枝やつるは手に入るものなら何でもよいが、今回はわが家の周りで手に入るクワの枝とクズのつるを選んだ。枝は直径1~1.5センチの細くて適度にしなるものが理想である。つるはウィグワムを作る前日に水に浸しておくとやわらかくなる。

②枝を並べる

ウィグワム支柱_MG_3906

ビーンティピと同じようにクワの枝をバランスよく並べる。土には30センチほどの深さで埋める。

③枝の上部をひもで結ぶ

ウィグワム結ぶ_MG_3910

枝が1カ所に集まる上部をひもで結ぶ。麻やシュロなど天然素材のひもが木の枝や畑になじむ。

④つるを巻く

ウィグワムつる_MG_3493

高さの中間地点にクズのつるを巻く。各支柱の内側と外側を交互に通して巻いていく。よくしなる細い枝やアセビのつるなどでもよい。支柱につるを絡めておくことでがっちりして倒れにくくなる。

⑤完成

ウィグワム完成_MG_3915

完成。支柱の根元に1~2株のトマトなどの苗を植えつけ、茎が伸びたららせんを描くようにウィグワムに誘引する。

剪定枝を積み上げた堆肥枠、バイオネスト

自然木の利用法をもうひとつお教えしよう。
「バイオネスト」である。これは木の枝で組んだコンポスト枠で、バイオネストというネーミングはギリシャ語の「bios(命)」と英語の「nest(巣)」を組み合わせた造語である。すべての有機物は、いつか分解されて土に還り、そしてまた新たな命を育む、ということなのであろう。そもそもこのバイオネストは庭木や公園の樹木などを剪定した際に、それをわざわざ別の場所に運んでゴミとして焼却するのではなく、その場で堆肥化することでエコロジカル、かつエコノミカルでサステナブルに処理するアイデアとして生まれたものだ。木の枝を円形に積み上げただけのものだが、庭や公園や畑のランドスケープとして自然になじむのがいい。

バイオネストの作り方

①枝を用意する

バイオネスト材料_MG_3838

枝を用意する。今回は近くのクリ畑で剪定枝をもらってきた。

②太い枝を並べる

バイオネスト太い木_MG_3466

太い枝を円形に並べる。直径は約2メートル。枝がたくさんある場合はもっと大きな円で作るとよい。

③枝を積み上げる

バイオネスト細い木_MG_3469

太い枝の上に細い枝を積み重ねる。枝の形や向きを考えながら、バランスよく積み上げていく。

④細い枝をのせる

バイオネスト枝_MG_3472

さらに細かい枝をのせていく。枝同士が自然に絡むので、じゃんじゃん積んでも崩れにくい。

⑤完成

バイオネスト完成_MG_3857

完成。高さは60センチほど。刈った草や野菜の残渣(ざんさ)、落ち葉などを中に入れていくと半年~1年ほどで堆肥化する。草や落ち葉に比べると木は腐りにくいので、バイオネスト自体は、数年は使い続けられる。

堆肥は、微生物によって有機物が分解されることでできる。家庭菜園愛好家は、効率よく堆肥を作るために、コンポスト箱に落ち葉や草や野菜の残渣や家庭から出る生ゴミなど、身近にある有機物を積み上げて、ときどきフォークで切り返し、微生物による発酵を促してやる。コンポスト箱を使わずに、畑の隅に野菜の残渣や除草した夏草を積み上げているだけの人もいる。もちろん、それでもいいのだが、木の枝が手に入ればバイオネストを作ってみたらどうだろう。木材などでコンポスト箱を作るよりずっと簡単だし、材料費もかからない。無造作に野菜の残渣や草を積み上げておくより、畑の景観もずっと魅力的になるはずだ。

丸太のレイズドベッドで畑をレイアウト

直径10センチ以上の、そこそこ太い丸太であれば、それを並べるだけでレイズドベッドになる。レイズドベッドとは、枠で囲って周囲より高く土を盛った栽培スペースだ。以前、私もそういう丸太のレイズドベッドをいくつか作って栽培スペースと通路を区切り、畑をレイアウトしていたことがある。コンポストやレイズドベッドは市販の木材でも作れるが、木の枝のように自然な曲線でデザインすることはできない。

丸太でレイアウトIMG_1805

丸太を並べてレイズドベッドや通路を作りレイアウトした畑

自然に存在するものの形状に、製材された木材のようにまっすぐで平らなものは、あまり見られない。緩やかに弧を描き、太くなったり、細くなったりしながら枝分かれして形になっている。それは木の枝だけに限らない。火も、水も、石も、生き物も、自然に存在するあらゆるものは曲面のつながりでできている。そういうものは視覚的になぜか心地がいい。木の枝で作るビーンティピやウィグワムやバイオネストが素敵に見えるのはきっとそのせいだ。

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