1.「根こそぎ抜かないと再生する」という誤解

ほとんどの雑草は根元から刈れば再生はしない
一般的に「雑草は根を残すと再生する」と思われがちですが、これは正確ではありません。実際に再生するのは、地下茎や塊茎(かいけい)と呼ばれる特殊な器官を持つ多年生の雑草たちだけです。例えばスギナやチガヤ、セイタカアワダチソウなどですね。
そのためどれが多年生雑草かをきちんと理解していれば、わざわざ大変な思いをして根こそぎ抜いてしまう必要はありません。また、雑草の根は土に残しておくことで、有機物として土壌を豊かにする働きがあります。土中で分解され、微生物の餌となり、最終的には作物が利用できる養分となるのです。
では、多年生雑草の地下茎や塊茎は全て取らないといけないかというと、決してそういうわけではありません。基本的に多年生の雑草は耕作されていない環境で生えやすい草ですので、耕運・草刈り・マルチング・土づくりなどの手入れをしていれば自然と減っていき、一年生雑草が主体の植生に変化していきます。苗の定植や種まきする場所のみ地下茎や塊茎を取り除き、あとは定期的に畑の手入れさえしていけば自然と減っていきます。
2.「雑草があると害虫が増える」という誤解

雑草は害虫の天敵のすみかになる
畑に雑草があると害虫が増えると考えられがちですが、これも必ずしも正しいわけではありません。当たり前ですが、害虫とは野菜などの栽培作物を食害する虫のことを指します。こういった虫は雑草を食べる虫とは異なる場合もありますし、むしろ天敵を増やす働きをしてくれることもあるため、相対的に害虫の割合は抑えられやすくなります。
例えば、クローバーやタンポポなどの花には、テントウムシやハナアブなどの天敵(害虫を捕食する虫)が集まります。天敵温存植物(バンカープランツ)として緑肥植物を植えることがありますが、同じような働きを雑草が担ってくれているのです。
3.「雑草から病気がうつる」という誤解

ホトケノザのうどんこ病は野菜にはほとんど感染しない
雑草が病気の温床になると考える人もいますが、これも誤解に基づいている場合があります。確かに雑草にも病気は発生しますが、その多くは作物には感染しないものです。例えば、シロツメクサやホトケノザによく発生するうどんこ病は、野菜にはほとんど感染しません。植物の病気の多くは、限られた種類の植物にしか感染しない性質があります。
もちろん雑草が成長しすぎて野菜の風通しを阻害すると、結果的に野菜も病気になりやすくはなりますが、完全な除草にこだわらずとも、日当たりと風通しを良くする程度の雑草管理で十分なことも多いのです。
4.「雑草は栄養を奪うので共存できない」という誤解

雑草と共に育つワサビ菜
もちろん雑草も成長するのに土の栄養を吸収しますので、雑草が野菜の周囲で繁殖しすぎると野菜は育ちにくくなります。しかし、雑草も無尽蔵に栄養を吸収し続けるわけではありませんし、野菜も土の栄養を全て必要とするわけではありません。肥料をまいたとしてもその全てを野菜が吸収できるわけではなく、むしろ水に溶けて流れてしまうものも多くあります。この栄養の流出を避けるために、作物の間に植えて栄養を保持してもらう役割として緑肥などが植えられることがありますが、これをキャッチクロップと呼びます。生育の邪魔にならない程度に周囲の雑草を残しておくことで、このキャッチクロップとしての役割を彼らが担ってくれることもあります。
5.「雑草は土の栄養にならない」という誤解

雑草の堆肥(たいひ)はミネラル豊富
取った雑草を畑の外に持ち出したり、ゴミとして捨ててしまったりする人も多いですが、雑草は優れた土の材料になるので非常にもったいないです。多くの雑草は8〜12%程度の粗タンパク質を含み、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウムなどのミネラルをバランスよく含んでいます。もちろん化学肥料などと比べると栄養は少ないですが、繰り返し生えてきて土にこれらの栄養素を補給し続ける効果は馬鹿にできません。また炭素も多く含むため、土壌の団粒化を促進し、土の物理性を大幅に向上してくれます。
植物性主体の土づくりをしている畑は野菜の共生微生物が増えるという研究結果もあるため、栄養の吸収効率のことまで考えると想像以上に雑草での土づくり効果は高いと思っています。
雑草を味方につけて、より楽で持続可能な畑づくりを
今回は雑草にまつわる5つの誤解を元に、雑草を根こそぎとる必要はないという話をしてきました。もちろん放ったらかしにしてよいというわけではありませんが、雑草をただひたすら敵として排除するのではなく、正しい知識をもとにできる限り味方につけることで、より畑の手入れが楽になりますし、雑草の持つ素晴らしいポテンシャルを引き出すことで、より持続可能で効率的な畑づくりにつなげることができるのではないかと思っています。
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