栽培面積も生産量も大阪府下トップクラス
「泉州水なす」や「大阪なす(千両なす)」など、なすの生産地として知られている大阪府。中でも123年の歴史を誇るナカスジファームは、ハウス栽培が2.2ha、その他作物の露地栽培が2.2haと大阪府下最大規模の栽培面積を誇り、およそ10種類のなすを年間約150トン生産しています。特に地域の特産品である「大阪なす」に力を入れており、権威ある品評会で受賞歴を重ねるなど、生産量だけでなく質の高さにおいてもトップクラスです。
「このエリアの農業を支えている中心的な存在とも言えるのがナカスジファームです。この規模でしか経験できないことが多々あると感じたことと、何より社長の人柄や経営理念に惹かれました」。
こう語るのは、入社5年目の東條司裟さん。農業大学校で野菜の栽培から販売まで幅広く学ぶ中、農家実習で出会ったのが、4代目社長の中筋秀樹さんでした。
中筋さんは、“農業のあるべき姿を創造する”を理念に掲げ、伝統的な農作物の栽培を伝承するとともに、次世代の農業リーダー育成のために農業塾を企画運営するほか、「農業体験型レクリエーション」と称して、一般の人になすのBBQを楽しんでもらう機会を作るなど、人とのつながりを大事にしながらさまざまな取り組みにチャレンジしています。

東條司裟さん
ナカスジファームでは、なすの他、きゅうりや海老芋など、年間およそ30種類の農作物を栽培しており、40人ほどのスタッフが生産部、販売部、総務部と役割を分担。各々が得意分野を生かし、プロフェッショナルな視点で自らの役割に専念しています。東條さんは、生産部で栽培管理と生産管理を担当。人員配置の計画、肥料や資材の発注などを一任されているとのこと。
微生物の力で根を健全化する「クロスバリュー」
日本農薬が発売した「クロスバリュー」は、農薬ではなく微生物の力で環境ストレスに強い作物を育てるための農業資材です。土壌の水分吸収をサポートし、根の発達を助けるバチルス・リケニフォルミスと、吸収しにくいリン酸を溶かし、養分吸収をサポートするバチルス・ズブチリスの2種類の微生物を含み、作物の根圏で増殖することで根を健全化。植物をより健康的な状態にすることで、収量の安定化や品質向上が期待できるという、まったく新しい資材です。
2023年、日本農薬総合研究所研究員の坂東克哉さんは、中筋社長にクロスバリューの試用を依頼。まずきゅうりでデータを収集することになりました。
クロスバリューを使用したエリアと無処理のエリアの収量を比較。初年は使用エリアの微増に留まりましたが、2024年10月に病害がこのエリアに蔓延。近隣の農家の収量が激減する中、ナカスジファームのクロスバリューを使用したエリアでは、無処理エリアより1割強収量が多く、しかも質の良いきゅうりが収穫できたことから、クロスバリューの効果が明らかになったという結果に至りました。
※上記結果の詳細
●場所:大阪府富田林市(2024年)[社内試験]
●品種:セレクト
●薬剤:クロスバリュー:500倍(50mℓ/ポット)
●処理:8/15 灌注処理
●定植:8/15
●収穫:9/11~12/2
東條さんは、23-24年作でなすの栽培にもクロスバリューの試験的に導入を決めます。驚くほどの劇的な変化はありませんでしたが、「急激な変化を求める資材ではないと考えています。日々、少しずつ良さを実感できることが、土壌にも根にも負担なくじっくりと作用している証拠」だと語る東條さん。「年々気温が上昇しているため、今後はより差を感じるようになるのではないか」とも続けます。
コストパフォーマンスの良さを伝えたい
クロスバリューのさらなる効果として、収穫期後半でも安定した収量が得られることも明らかになりました。
一方、日本農薬技術普及部の森俊之佑さんは、「農薬のように、100%害虫を死滅させるとか、完全除草できるというようなものとは異なり、元々農作物が持っている力を引き出すのがクロスバリューのようなバイオスティミュラントです。これまで90%しか発揮できなかった農作物の力を100%近くにまで高めることを目的としています。もっとも違いがよくわかるのが、元々農地ではなかった場所を農地に転用したとき。こうした土地では土壌の力が弱いため、クロスバリューの効果がより明らかになるのでは。クロスバリューは農作物に直接作用するのではなく、微生物が土の中や農作物の根の環境をより良くしていくものです。大きな変化を短期間でもたらすものではないため、農家にとっては導入に踏み切るのが難しいという現状もあり、これが課題となっています。」と語る森さんに対して、「収量が10%増えることは大きいですよ。他の同様の資材と比べて、コストパフォーマンスが抜群に良い。特にナカスジファームで作っている海老芋は単価が高いですから、積極的に導入を考えています。さらにデータを収集して、効果が明らかになったら、他の農家にも普及していくはずです」と東條さん。
より精度の高い農業管理の実現を目指す
苗の価格が上昇している昨今、計画していた収穫期の終了時まで予定通り収穫できることが理想です。これまでは、“例年”の状況から、各農家の経験と“勘”に頼る部分が多かったのですが、これからはデータの収集と分析による、より効率的な農業に転換していかなければ、持続できないと東條さんは語ります。
続けて、今後のナカスジファームの役目として、東條さんは次世代の農家の育成も重要な柱に掲げています。新規就農者向けの農業塾の開催しかり、農業体験もまた、未来の農家に繋がるためには欠かせない。スキルを身に付けることはもちろん、地域の農家と繋がることで、新規就農へのハードルも下げることができると考えているそうです。

日本農薬総合研究所の坂東克哉さんと東條さん
こうした活動に日本農薬も賛同。坂東さんは協働企業として、ナカスジファームについて、
<取材協力>
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