気温上昇によって深刻化する、みかんの「日焼け問題」

静岡市清水区に広がる朝倉さんのみかん畑。ここで栽培している極早生の品種は9月~10月に収穫期を迎えるため、真夏の日焼けは深刻な問題だった
年間を通して温暖で日照時間が長い静岡県は、温州みかんの日本有数の産地です。しかし、地球温暖化の影響により、みかんの日焼け問題は年々深刻化しています。
温州みかん栽培に適した地域の年平均気温は15から18度。
しかし2046年から2055年には、現在の主要産地では栽培が困難になり、代わりに日本海側や南東北の沿岸部まで栽培適地が広がると予測されています。(農林水産省「令和2年地球温暖化影響調査レポート」)
静岡市清水区で温州みかんを栽培する朝倉克年さんも、気温上昇や強い日差しによるみかんの日焼けに苦しんでいました。
朝倉さんが栽培している極早生の品種の収穫時期は温州みかんの中でも早く、9月から10月ごろです。
収穫直前に真夏の日差しを受けるため、日焼け被害は深刻でした。
「私はこの土地で50年ほどみかんを栽培していますが、ひと昔前に比べて気温は間違いなく上昇しています。特に近年の夏の暑さはすさまじい。気温が上昇して日差しが強くなると、みかんの表面が日焼けで硬くなり、中身の水分が抜けて出荷できなくなるんです。日焼けしたみかんは摘果して廃棄しなければならず、その損失がどんどん大きくなっています」

みかん農家の朝倉克年さん。この地で50年間農業を営んでいるが、ここ数年の夏の暑さは異常だという
虫よけだけじゃない。『ホワイトコート』は日焼け対策にも効果あり!
これまでの日焼け対策は、一つひとつの果実に袋をかぶせたり、日の当たる面にテープを貼ったりする手間のかかる作業でした。
しかし広大な農園で何千、何万もの果実にこうした対策を行うには、膨大な時間と労力が必要です。
特に人手不足や高齢化が進む農業現場では、大きな負担となっていました。
そんな中で注目されているのが、炭酸カルシウム水和剤『ホワイトコート』です。
もともとチャノキイロアザミウマ対策用として使用されている農薬ですが、みかんの日焼け軽減にも効果を発揮することが判明しました。
白色の微粒子で果実表面に薄い保護膜を形成し、夏の強い日差しを反射することで、果面の温度上昇を抑えることができるのです。

『ホワイトコート』を散布した後のみかん畑全体の様子。果樹全体にうっすらと雪が積もったように見える
朝倉さんもまた、チャノキイロアザミウマ対策として使用している中で、『ホワイトコート』の日焼け対策の効果に気が付きました。
「7月後半に散布すると8月末頃まで白さが残り、みかんの日焼けを見事に防いでくれるんです。使えば日焼けはかなり抑えられます。効果は明らかで、今ではこの地域のみかん農家の多くが取り入れています。」
散布方法も比較的シンプルです。
『ホワイトコート』を水で希釈し、動力噴霧器でかくはんさせながらみかんの樹全体に吹き付けていきます。
幹や葉の部分にかかっても問題ないので、通常の農薬散布と同様に散布することができるのです。
農家さんの声を受け、メーカーの白石カルシウムでは、チャノキイロアザミウマ対策の登録に加えみかんの日焼け軽減としての農薬登録適用拡大を申請、2024年12月に認められ、日焼け対策用の農薬登録を取得しました。
日焼けによるロス削減だけでなく、作業量を含めたトータルのコスト削減を実現
『ホワイトコート』を開発した白石カルシウム株式会社は、炭酸カルシウムのパイオニアとして、自動車資材や産業資材など、幅広い分野にて製品開発を行っています。
炭酸カルシウムはいわゆる石灰石で、家庭菜園にもよく使われている成分です。『ホワイトコート』を25倍から50倍に希釈して散布すると、果樹に白く付着して、葉や果実からの反射光の波長組成が大きく変化します。
すると、チャノキイロアザミウマが白く覆われた果樹を寄生植物として選好しなくなり、みかんの樹に寄り付きにくくなります。
さらに果樹試験場が実施した試験では、ゆら早生品種に『ホワイトコート』(25倍希釈)を散布した結果、無処理と比べて表面温度が約1.5℃低下し、日焼け発生率が40%超から約20%へ半減したという結果もありました。

果樹試験場で2023年に実施した『ホワイトコート』の散布試験結果
こうした結果を踏まえ、日焼け軽減としての登録適用拡大が認められました。
「農薬の適用拡大が認められたことで、私たちも日焼け対策のための使い方をお伝えできるようになりました。農家の方々にも、より安心して使っていただけるのではないでしょうか」
『ホワイトコート』の安全性について、白石カルシウムの担当者、吉村さんは以下のように語ります。
「農薬登録を得るためには、非常に厳しい審査を通過しなければなりません。『ホワイトコート』を使うことで果実の品質を少しでも低下させる可能性があれば、たとえ日焼け軽減の効果があったとしても、審査は通らなかったでしょう。その厳格さがあるからこそ、農薬登録をとっていることが安全性の保証となり、使用する農家にとっても安心感につながると考えています。例えば、白く覆ってしまうことで光が遮られて、光合成量が減少するのではと心配される方もいますが、果実の生育や糖度などの果実品質には影響がないことが、これまでの試験で確認されています」
ただし、炭酸カルシウムという原料の性質上、散布の際には注意が必要だと、長く販売に携わる沼田さんはいいます。
「炭酸カルシウムは水に溶けない成分なので、沈殿しやすいという性質があります。 そのため、散布の際にはタンク内をかくはんしながら作業する必要があります。また、どの農薬でも同じですが、撒いた後には器具をきれいに洗い流してください」
さらに、撒く時期にも注意が必要です。販売されるみかんに白い粉が付着していると、消費者に不安を与えてしまう可能性があります。そのため、収穫時に『ホワイトコート』が付着していると、出荷前にブラシなどで落とさなければなりません。
そのため、収穫時期から逆算して最後に撒く日を決める必要があります。9月末から10月に収穫を迎える場合には、7月の中下旬から8月初旬を目安に、白斑の残りに注意して散布するといいでしょう。

『ホワイトコート』を散布した後のみかんの果実と葉の様子

収穫直前に『ホワイトコート』がはがれるように、時期を逆算して散布するのがベスト
『ホワイトコート』をチャノキイロアザミウマ対策として使い始めて今年で4年目になる朝倉さんは、日焼けによるロス削減だけでなく、作業量も含めたトータルコストの圧縮につながっていると確信しています。
白石カルシウムが語る、気温上昇に対応する商品開発の展望
現在『ホワイトコート』は、「ゆら早生」や「宮川早生」、「青島温州」などの『みかん』に対して日焼け軽減の農薬登録がされています。
しかし、近年の地球温暖化によって日焼けの影響を受けているのは、『みかん』だけではありません。

白石カルシウム株式会社の吉村康平さん(左)と沼田州平さん(右)
柑橘の生産地は、西日本地域にも広がっています。
今回の取材地でもある静岡県よりもさらに平均気温が高く、今後も深刻な日焼けの影響を受けるでしょう。
沼田さん、吉村さんは、『ホワイトコート』の展望について、以下のように語ります。
「柑橘農家の方々の日焼け対策への労力を抑え、安全においしい柑橘を多くの消費者に届けたいです。そのためにも今後は『ホワイトコート』に限らず、環境変化に適した商品開発を行っていきたいです」
今年の夏も地球温暖化の影響で猛暑が予想されています。みかんの日焼け対策に、労力を抑えて手軽に使える『ホワイトコート』を使ってみてはいかがでしょうか。
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