注目のオメガ3脂肪酸を含んだ新飼料『アマニウム』
岡山県のほぼ中央、吉備高原に位置するイサミ吉備高原牧場は、精肉の小売と卸を営む株式会社イサミが1972年に開設した自社運営牧場です。国産牛肉を手頃な価格で提供するため、オスのホルスタイン種(=乳用牛)を、北海道や地元岡山の酪農家から引き取り育ててきました。経営を向上させるため、数年前から黒毛和牛の肥育もスタート。現在は約500頭のホルスタインを肥育している他、黒毛和牛も約200頭飼育しています。
ホルスタインは8カ月齢から肥育。和牛については母牛も飼育しているため、生後から一貫して育てている
「黒毛和牛も増やしていますが、あくまで主力はホルスタイン種。なんとかしてホルスタインの増体量を上げたい、品質も高めたいと試行錯誤を続ける毎日です。味の面では和牛に敵わないホルスタインですが、食べた人に『おいしい』と言ってもらえるように、納得がいくまで取り組みます」と、牧場の松下久美子さんと宮本多津美さんは話します。
松下さん(左)と宮本さん(右)
畜産の現場で当たり前のように抗生物質が使われていることに、以前から疑問を抱いていたという2人。遺伝子組み換えトウモロコシや、抗生物質を含んだ餌を廃止するなど、牛に優しい飼料への転換に努めてきました。
そんな中出会ったのが白石カルシウムの『アマニウム』でした。原料に使われているアマニ油は肥育促進や肉質向上が期待できるオメガ3脂肪酸を豊富に含んでおり、機能性飼料として注目されはじめています。
国内において輸入物の脂肪酸カルシウムはすでに流通していたものの、臭いがきつく、牛の嗜好性は良くありません。さらにオメガ3脂肪酸は酸化しやすく、飼料としての使用が難しくもありました。一方、食用加工油脂や石鹸の製造・販売で実績のある国内製造メーカーの技術を応用し開発した『アマニウム』は、オメガ3脂肪酸の酸化を独自の技術で抑え、風味をより良くすることに成功しました。
「牛が喜んで食べて、しかも『増体向上』『肉の味が良くなる』と聞いて、これは試してみようと思いました」と、宮本さんは導入の経緯を振り返ります。
こうして『アマニウム』を導入した宮本さん。早速、規定通り配合飼料の1~3%ほどとなるよう、いつもの餌に混ぜて和牛に与えてみました。さて、効果はあったのでしょうか。白石カルシウムの安田亮さんも交えて、『アマニウム』の実力について直接伺いました。
嗅いでみるとほんのり甘く香ばしい『アマニウム』。牛たちにも大好評
出荷月齢が2カ月短縮、肉質も向上って本当?【評価を聞いてみました】
──最初は和牛に与えたということでしたが、評価はどうでしたか?
宮本さん
松下さん
──牛は個体差があると聞きますが、どの牛も高評価が得られたのでしょうか?
宮本さん
安田さん
松下さん
──導入して1年ほどになりますが、その後はいかがですか?
松下さん
安田さん
導入前は牛舎を増築し、飼育数を増やすことを考えていたというイサミ吉備高原牧場では、出荷月齢が2カ月短縮したことにより回転率が上がり、増築の必要が無くなりました。これまでは8カ月齢の牛に与えてきましたが、現在はミルクから餌に切り替わるタイミングのもっと小さな月齢の牛に与えてみたりと、いろいろな方法を試しているところだそうです。
「味を変えたい人、短期肥育にしたい人には『アマニウム』はおすすめです」と宮本さんは太鼓判を押します。
開放的な牛舎では、牛も人間ものびのび過ごせる
優れた飼料が畜産業を活性化する
下町の雰囲気を残す大阪・生野の商店街にあるイサミ本店は、徒歩や自転車で次々に買い物客がやってくる人気のお肉屋さん。松下さんと宮本さんが育てたホルスタインはここで販売されています。
イサミ本店。日中は客足が絶えない
「捌いた瞬間に、質の良さを感じました。味も期待通りで、ホルスタインなのにパサパサしておらず、味もしつこくない。どの部位も同じくらいおいしいですね」と、店舗部長の梶永知二さん。『アマニウム』で育てられたホルスタインは、「和牛でなくても、これで十分じゃないですか」という声が店のスタッフからも上がるほど、評価が高いと話します。
適度にサシの入ったホルスタインのサーロイン。ジューシーでやわらかい
“けもの臭”やくさみもなく、サシも程よく入ったホルスタインの肉はお客様にも好評で、「おいしいね」と言って何度も購入してくれるリピーターが増えているそうです。
「他の生産者の方もぜひ『アマニウム』 を使って良い牛を育てていただきたいです。生産者の個性が反映されたいろいろなタイプのおいしい肉ができることで、消費者の嗜好も多様化して、日本の畜産業がもっと盛り上がるはずです」と梶永さんは話します。
「捌いた肉を牧場に送り、情報を共有しています」と梶永部長
餌代は多少上がるものの、肥育期間が短くなることで結果的にお得だという『アマニウム』。厳しい経営環境にさらされる日本の畜産業にとって、心強いサポーターになってくれることは間違いありません。さらには温室効果ガスの発生を抑えられるという試験結果も得られており、地球にも優しい飼料と言えるでしょう。
「肥育農家はもちろん、レストランなど飲食店の方にも、『ホルスタインでもこんなにおいしくなるんだ』ということを知っていただければと思います」と安田さん。日本の牛肉がもっとおいしくなる日は、すぐそこまで来ています。
左から白石カルシウムの川口さん、同社安田さん、イサミ吉備高原牧場の松下さん、宮本さん、製造メーカーの甲嶋さん
【お問い合わせ】
白石カルシウム株式会社 食品アグリ資材部
〒104-0031
東京都中央区京橋1丁目11番1号
TEL:03-3538-2354
FAX:03-3535-6514