少量の原料米で高い付加価値がつき、フードロス削減にも寄与する「パックごはん」
TMフードラボは、米袋やパッケージ製造を事業とする株式会社マルタカ(1988年創業)のグループ会社として、2017年に設立されました。大阪、東京他主要8都市に拠点を構え、約40年にわたって、米袋のデザイン制作やパッケージ製造を通じて米に関わる事業者や生産農家と真摯に向き合ってきました。
そんな中、代表取締役社長の山澄隆志さんが、次の一手として、米の付加価値を高めて自社の強みも生かした、米を炊いて包装する「パックごはん」のOEM事業の構想を打ち出します。これまでお米を包んできた会社が、お世話になったお米屋さんや生産者さんへ恩返ししたいとの想い、全国の素晴らしいお米をたくさんの方にもっと気軽に食べてほしいとの想いで、パックごはんのOEM加工を始めました。

【工場外観】TMフードラボ炊飯工場はマルタカテクノセンターに併設
大ロット製造が前提の業界のなか、極小ロット製造の実現を目指すことにしました。この背景には、米袋製造を通じて取引してきた米穀店様や生産農家様のリアルな声に耳を傾けてきたマルタカの「事業規模に関係なく、すべてのお米に関わる方の利益を向上させたい」という想いがあります。
ところが、食品製造の知識もノウハウもまったくない、ゼロからのスタートです。
「元々が包装資材の会社から始まっているので、食品の製造・パックごはんのご提案をするには、食の安心・安全の部分でどれだけ信用していただけるかが最大の懸念点でした。そのため、はじめからHACCP(ハサップ)認証工場の取得を目指すことを必須として、一つひとつ勉強を積み重ねていきました。効率的に製造しながらどのように衛生管理をするのか、専門家のご意見も伺い、工場視察も行いました。」(生産工程主任 藤田 敦史さん)
HACCP(ハサップ)とは、食品を安全に製造するためのJFS-B規格で「衛生管理の考え方」のこと。例えば、ごはんやおかゆを加工するときに「どこで菌が入るか」「どんなトラブルが起きるか」をあらかじめチェックして、特に気をつけるポイントをしっかりと管理する方法です。
TMフードラボが取得を検討する2013年付近では任意でしたが、日本では2021年からすべての食品関連の事業者にこのHACCPの考え方を取り入れることが完全義務になりました。このように、当初から衛生的で安心できる商品作りを念頭に置いています。

HACCPJFS-Bの取得は2021年、有機JAS認証は2023年取得
小ロットで美味しく炊飯して真空パックにする仕組み作りは、生産工程主任の藤田さんが構築。炊きあがりの白さを追求するために白度計を導入し、それぞれのお米の成分を分析。水分や加圧の量など試行錯誤を重ねて、完成させました。
原料米の量は、オーダーしやすい60kg(1俵)を極小ロットに設定し、800パックの製造を可能にしました。白米だけでなく、玄米、もち麦・黒米・赤米いずれかのミックス米にも対応。賞味期限は常温で1年間、備蓄用として保存可能です。
2017年に株式会社TMフードラボを設立してから約4年の試行錯誤を重ね、工場を本稼働。
事業者のなかでも、特に小規模事業者や生産農家から「自分たちが作った自慢の米で、オリジナルのごはんパックが作れる」と好評を博しました。約3年間で炊飯実績数は約150万食(※2025年6月までの全期間)、延べ顧客数は約900件(※農家以外も含む)、リピート実績率は79%(※炊飯数比較)と、高い評価を受けています。
また、マルタカのノウハウを生かして複数のオリジナルデザインで包装できるため、さまざまなシーンで活用しているとのこと。
「当初は800個でも多いと感じる生産農家さんもいらっしゃいましたが、現在はほとんどの方が喜んで利用していただいています。年3〜4回リピートするお客様も。備蓄用の他、ふるさと納税、ホテルの売店、ギフト用、ネット販売、ノベルティとして活用する例も多いと聞いています」(藤田さん)

極小ロットでありながら、デザインもオリジナルを追求。ノベルティにもぴったりです。
さらに商品のバラエティを増やすため、2025年1月には新たに「おかゆ加工」の製造も開始します。おかゆ加工は、パックごはん原料米の約3分の1の量となる18kgで800パックを製造でき、原料米が限られるなかでも製品化が可能に。近年の米不足や価格高騰に対する一つの選択肢として、注目されています。

「おわん型容器のパックおかゆ」
自慢の米を「食べやすく」届ける。「おかゆ加工」に込める現場の技術と想い
TMフードラボの製造現場では、少数精鋭で製造を担い、日々改良と品質管理を重ねています。
なかでも生産工程主任の藤田敦史さんは、米の種類や産地、生産者ごとの要望に応じて、水や熱の加減を調整し、最適な炊き上がりを追求してきました。

株式会社TMフードラボ 生産工程主任 藤田 敦史さん
1ロット800パックは、原料加工から3〜4時間ほどで完成。最後は、人の手による目視検品、金属探知機に通して安全面を最終確認してから出荷します。
営業担当を通じてお客様からの感想を聞くたびにより美味しく安全な品質のものをと気が引き締まるのだそうです。
「新たにラインナップに加わったおかゆ加工は、弊社レトルト方式により、とてもなめらかで、くちあたりの良いおかゆに仕上がります。パックごはんと同じで保存期間は1年間と長く、備蓄用や非常食としての利用にも適しています。『加熱する必要がなく、常温でそのまま美味しく食べられる』『なめらかな舌ざわりで、高齢者や子どもにも食べやすい』『カップのまま食べられるので非常時には最適』といった声も実際に多く寄せられています。家庭用はもちろん災害対策や施設給食など、幅広いニーズに対応できそうだと好評いただいています」(藤田さん)

製造技術だけではなく美味しいお米を届けたい、その一心で日々製造しています
「おかゆはもっと水っぽく仕上がるのでは?」と生産農家から懸念されていたそうです。水分を多く含むことで硬くならず、甘さが引き立って、当初のイメージと180度印象が変わる方が多いとのこと。
サンプルは、白米と玄米、5分粥と7分粥から選べ、6パック作る試作品では、実際に味を確かめながら最終決定することができます。もち麦入りなど特別なリクエストがあれば、独自のカスタマイズにも柔軟に対応するようにしています。
「行き届いた管理のもと、精米されたばかりの鮮度がいいお米は、年産に関係なくおいしく仕上がりますが、それでも実際は獲れたての新米を持ち込む生産農家さんが多いと分かりました。『丹精込めて育て上げた美味しい自慢の米を、一番美味しく鮮度のいい状態で食べてもらいたい』という想いを受けとめて、商品に反映できるように意識しています」(研究員 高田 拓弥さん)
「おかゆ加工」は、米が不足する状況でも、生産農家と消費者、双方にメリットがあります。結果としてより多くの消費者に届ける手段になり得る「800個の小ロットおかゆ加工」は、新たに販路開拓を模索する次世代の若い農家から大きな注目を浴びています。
保存期間は常温で1年。災害時に備えるローリングストックとしての新たな提案も
レトルト加工されたおかゆは、常温で長期保存が可能なうえ、電子レンジでの加熱が不要。開封してすぐに食べられるという特長から、災害時の非常食や高齢者施設・保育園などへの導入が期待できます。
TMフードラボでは「普段使いできる非常食」としての価値も訴求し、普段使う食品や日用品を少し多めに備えておき、使った分だけ新しく買い足していく備蓄の方法「ローリングストック」の提案も進めています。食味に違和感がなく、日常的に美味しく食べられることが、継続的な備蓄利用につながると考えているからです。

いつものおかずをちょっとのせて、和風にしたりイタリアン風にしたりと、味のアレンジも楽しむことができます
「現在6000〜8000個の中ロットの問い合わせをいただいています。現在の工場の生産能力とメンバーで、いかに高品質のまま数多く製造する仕組みづくりを整えていきたいです」と、研究員の高田さんは語ります。

株式会社TMフードラボ 研究員 高田 拓弥さん
1ロット800パックで、自由度高く、自慢の米を製品化できるTMフードラボのパックごはんとおかゆ加工。米農家の販路拡大に寄与するだけでなく、今まさに社会課題になっている米不足や価格高騰の一助となる大きな可能性を秘めています。
「生産者の武器を増やしたい」という想いからスタートしたこの取り組みは、着実に広がりを見せています。大事に育てたお米にさらに高い付加価値をつけて販売したい。どんな食味なのか試してみたい。少しでも関心を持った生産農家の方は、まずは1kg・6パックからのサンプル作成で気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

左から)株式会社TMフードラボ 種村英樹さん、藤田さん、高田さん、千葉千紘さん、明神美紀さん、山田呼貴さん
「気になる方はぜひお問い合わせください!」
お問い合わせ
株式会社TMフードラボ
〒619-0215 京都府木津川市梅美台8-1-23
お問い合わせはこちら