新たに開所した研修施設・各種制度で新規就農者をサポート
美郷町は石見銀山街道と江の川舟運の結節点として栄えた中山間地域です。

粕渕(かすぶち)地域を中心に、美郷町の主要施設が集まっています
地域農業としては、水稲を中心に白ネギや菌床シイタケなどが栽培されてきました。しかし、高齢化・人口減少による後継者不足、耕作放棄地の増加など、日本の農業が抱える問題は美郷町も例外ではありません。
解決の道を探るべく、同町では約10年前に露地栽培よりも収益性が高い施設園芸に着目し、町営リースハウスを用いた野菜栽培をスタート。中でも近年、健康志向の高まりや包丁不要で食べられる簡単さ、中食(なかしょく)用の飾りなどのニーズからミニトマトの生産が増加。

「サンチェリーピュア」。養液栽培は土耕に比べて収量3~5倍という実績も
美郷町では、このミニトマトを「みさと農業再生プラン」の目玉とし、2025年に新規就農者向けの栽培設備付き研修施設「みさとと。トレーニングファーム」を開所。敷地内にはソーラーパネルを設置し、再生可能エネルギーをハウス内の冷暖房用ヒートポンプなどに活用することで、環境への配慮や光熱費削減につなげています。

研修棟には休憩室やシャワー室を完備。研修ハウスの増設や育苗ハウス新設も計画中
また、栽培方法は「島根型養液栽培(※)」の二期作を採用。安定的に高い水準の収穫量が期待でき、春と秋に2回収穫体験が可能なため技術習得のスピード化が図れると言います。「みさとと。トレーニングファーム」は、「島根県就農準備資金等研修機関」に認定された県内で2例目(地方自治体としては初)の施設としても注目されています。
(※)島根型養液栽培
リサイクル可能な有機質培地(ヤシガラチップ主体)に、生育に応じてかん水・肥料を点滴で用いる栽培方式。培養液の管理は自動化が可能で、作業の省力化や病害虫回避などのメリットがある。
「ミニトマト就農研修制度」の特長は?
「みさとと。トレーニングファーム」を拠点に2年間、ミニトマト生産に関する知識・技術をはじめ、販売・流通や農業経営まで幅広く学びます。また、町内のミニトマト農家での農家研修、島根県立農林大学校での集中講義などのカリキュラムも用意。研修修了後には、ミニトマト農家としての独立はもちろん、雇用就農や半農半Xの選択が可能で、いずれも国・県の支援補助を受けられます。
研修中の生活保障は?
週4日の研修を受けながら、「地域おこし協力隊(会計年度職員)」として月額給与が支給されます。その他、期末手当・通勤手当などの支給、社会保険等の福利厚生も完備。住居は美郷町が紹介、研修期間中の家賃(条件あり)も同町が負担します。
【研修生の声/皐月幹太さん】移住ありきで農業未経験から新たな道へ
お子様の誕生をきっかけに、「どこで何をして暮らしたいか」を考えるようになったと話す皐月幹太さん。

「ミニトマト就農研修制度」研修生の皐月幹太さん
もともと田舎での生活に興味があり、奥様のご両親と縁がある美郷町に家族4人で神戸市から移住しました。「移住ありき」で仕事を探す中、同町の「ミニトマト就農研修制度」の情報を入手。
「決め手になったのは、研修を受けながら給与が支給されること、紹介してもらった真新しい住居に住めること、保育料が無料ということなどです。もちろん農業未経験という不安はありましたが、指導員の山本さんが一から教えてくださるし、農林大学校の講義なども受講できるのですごく心強い。今はトマトの成長を見ながら、農業の楽しさを実感している毎日です」
また当初は、「幼い子どもが地域になじめるだろうか」という心配もあったと言います。しかし、引っ越してすぐに外に飛び出してカエルをつかまえるなど、田舎暮らしにすんなり溶け込んだそう。

「経験・知識がゼロでも大丈夫。充実したカリキュラムが整っています」と皐月さん
「都会と違って、美郷町の人たちはせかせかしていなくて、ありがたいことに家庭菜園なども手伝ってくれます。温かさや余裕みたいなものを感じるんです」。そんな皐月さんの前職は理学療法士。将来はミニトマト農家として独立しつつ、町内の高齢者などを対象に、資格を活かしたサポートができたらと考えているそうです。
【研修生の声/松浦馨さん・望さん】養液栽培の可能性に魅力を感じて
千葉県出身の松浦馨さんと、埼玉県出身の望さんの出会いは北海道の農業大学。

「ミニトマト就農研修制度」研修生の松浦馨さん、望さんご夫婦
卒業後はそれぞれ牧場、大玉トマトの農家に就職しましたが、「若いうちに違う経験をしたい」という思いから、結婚後、山陰エリアでの就農を検討するように。そんな中で見つけたのが、美郷町のミニトマト栽培です。「トマトは土耕栽培しか選択肢がないと思っていたんです。

「就農への熱量があれば、この町ではたくさんの味方が支えてくれます」と松浦馨さん
でも、作業がラクで効率的な養液栽培を美郷町が採用していることを知り、将来的に少人数での営農を考えている私たちにぴったり!と感じました」と望さん。「知らない土地でしたが、不安は全然なかったです」と馨さんも続けます。「ミニトマト就農研修制度がまだ本格始動していない時期に役場を訪ねたんですが、すごく親身に相談に乗ってもらったし、リースハウスがあること、経験や知識が豊富な指導員がおられること、細分化された分かりやすい研修カリキュラムが組まれていることなどが好印象でした」
お二人は週4日研修生として学び、2日間は町内のミニトマト農家でアルバイトをして農業経験を積んでいるそう。

「町の人の温かさ、四季を感じられる環境が美郷町の魅力です」と松浦望さん
研修修了後の目標については、「まずは2人でミニトマト農家としてスタートを切りたい。いずれは、後に続く新規就農者の受け入れも担当したいです」と馨さん。お二人が移住を決めた時にも同じ立場の先輩がいて、「やっていけるかも」という安心につながったからだそうです。松浦さん夫妻は今後の美郷町の農業に欠かせない、頼もしいロールモデルになりそうです。

指導員の山本さんを囲んで。知識が豊富でどんな質問にも的確に答えてくれます
美郷町では「町の農業をリードするスーパースターを輩出したい!」という熱い思いで、就農・定住までの手厚いサポートを整えています。美郷町が本気で取り組む「ミニトマト就農研修制度」について、もっと詳しく知りたい方はこちらへ!

(左から)産業振興課の倉橋さん、漆谷さん、鈴木さん、研修生の3名、指導責任者の山本さん
お問い合わせ
美郷町役場 産業振興課
〒699-4692 島根県邑智郡美郷町粕渕168番地
電話番号:0855-75-1214