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土壌改良からマルチ、断熱材まで。「もみ殻」徹底活用術【DIY的半農生活Vol.31】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

土壌改良からマルチ、断熱材まで。「もみ殻」徹底活用術【DIY的半農生活Vol.31】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約3.5反(35アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。今年も間もなく稲刈りの季節。そこで大量に出るのが、精米の副産物であるもみ殻だ。多くの稲作農家では処分に困るやっかいものだが、その特性を生かせば、土壌改良やマルチング、堆肥(たいひ)づくりの副資材、イモ類の貯蔵などに広く活用できる。わが家にとっては、暮らしや野菜づくりに欠かせない資材のひとつ。今回は、そのもみ殻の活用法を紹介しよう。

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コメの副産物として大量に出るもみ殻

7月上旬に田んぼの除草を終えた。5月の連休に田植えをしてから、毎朝1時間ほど田んぼに入って田車(※1)を押していたが、イネが大きく育ち、田車が入れなくなったからだ。しかし、この時期まで草を抑えられれば、もうイネが草に負ける心配はない。この先もちらほらとヒエが伸びてくることがあるが、イネより背が高く育つので、すぐにわかる。見つけたら穂が付く前に株元から刈ってしまえば問題ない。あとは9月の収穫を待つばかりだ。

※1 刃のついたローラーを押して歩くことで、泥を攪拌(かくはん)して草を抑える田んぼの除草道具。

稲

7月下旬、田んぼの稲に穂が出てきた。猛暑のためか、例年より生育が早いように感じる

稲刈りはコンバインで行う。近所の農家から使わなくなったものを、ありがたいことにタダで譲ってもらった。40年ほど前のオールドモデルだが、まだまだ元気に働いてくれる。刈り取ったイネは一部をもみのまま貯蔵し、残りはライスセンターで乾燥からもみすり、選別までの一連の作業をやってもらう。このとき大量に出るのがもみ殻だ。

多くの稲作農家では、もみ殻は邪魔者扱いだ。田んぼや畑にまいたり、家畜の敷料として畜産農家に引き取ってもらったりして、どうにかこうにか処理している。でも、私のような家庭菜園愛好家にしてみれば、もみ殻は有用な資材だ。捨てるような感覚で畑にまいてしまうなんてもったいない。土壌改良や堆肥の副資材、野菜のマルチング、保温・断熱資材など、使い道はいくらでもあるのだ。

もみ殻の成分と独特の形状による土壌改良効果

もみ殻は、稲の実であるもみのいちばん外側についている殻で、2枚が合わさって玄米を包んでいる。セルロースやリグニンといった食物繊維を多く含み、一方で窒素はわずか0.5%ほどしかない。C/N比(炭素と窒素の重量比)は70〜80と非常に分解されにくい素材だ。

もみ殻

もみ殻の比重は0.1程度。非常に軽く、硬くて分解されにくい

加えて特徴的なのは、ケイ酸を豊富に含む点だ。ケイ酸は、主に二酸化ケイ素(SiO2)を基盤とする無機成分で、植物体を丈夫にする働きがある。病原菌の感染や虫害、倒伏、乾燥といった環境ストレスに対する耐性を強化し、実際、ケイ酸の施用によりキュウリやイチゴのうどんこ病が抑制できることも報告されている。

ケイ酸はすべての植物にとって必須栄養素というわけではないが、イネにおいては茎の硬さを保つために重要で、もみ殻にも20%近く含まれる。これは身近な有機物のなかでは特に高い数値だ。また、ケイ酸の主成分である二酸化ケイ素は酸化化合物なので、それ以上酸化(=燃焼)することがなく、非常に燃えにくい。そのため、もみ殻を炭化させて「もみ殻くん炭」にしても、ケイ酸は消滅せずに残るので、生で施用した場合とほとんど変わらない効果が期待できる。

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もみ殻くん炭

もみ殻を炭化したもみ殻くん炭

もみ殻の形状にも注目したい。1片は5〜8ミリほどの長さで、船底のように湾曲した形をしている。土にすき込むと、その形状によって土の粒子の間に隙間(すきま)ができ、それが空気や水の通り道となる。また、もみ殻の組織自体も極めて小さな穴や隙間がたくさんある中空構造で、水や空気をため込み、微生物のすみかにもなる。つまり、もみ殻を土壌に施用すると、通気性、排水性、保水性が向上し、微生物の増殖にもつながるというわけだ。野菜の生育に適した団粒構造(※2)の土に近い状態をつくることができるのである。
先述したように、もみ殻は非常に分解されにくいため、その土壌改良効果は長期間にわたって持続する。そしていずれは分解されて腐植となり、長期的に土をふかふかにしていくのだ。

※2 土の粒子が集まって小さな塊(団粒)となり、その塊がさらに集まった状態。通気性、排水性、保水性、保肥性に優れる。

もみ殻形状

独特の舟形が土に隙間をつくり通気性や排水性を向上させる

もみ殻の活用法

土壌改良

もみ殻はその組織と形状により、土にすき込むだけで水はけ、水持ち、通気性を改善する効果がある。
通常、もみ殻のように炭素率の高い有機物を大量にすき込むと、窒素飢餓が発生する恐れがある。窒素飢餓とは、炭素率(C/N比)が高い有機物を施用したときに、微生物が増殖して土中の窒素を奪い、作物の生育に必要な窒素が一時的に不足する現象だ。
もみ殻も施用直後にはある程度は土壌の窒素が奪われるが、主成分が難分解性のセルロースやリグニンであるため、微生物の分解速度が遅く、窒素を急激に消費することは少ないとされている。とはいえ、何事もやりすぎはよくない。もともと水はけのよい畑では、畑が乾きやすくなる心配もある。
目安は1平方メートルあたり250グラム程度(2〜3リットル)。田んぼについていうと、それくらいの量ならイネに悪影響がないことも報告されている。施用後の作付けは、2週間以上おいて土を落ち着かせることで、窒素飢餓のリスクは少なくなる。

もみ殻をまく

もみ殻をすきこむ

土壌改良には1平方メートルあたり2~3リットルのもみ殻をまいて、すき込む

育苗用の培養土

わが家では落ち葉や雑草、野菜の残渣(ざんさ)などを積み上げて分解させた堆肥を、そのまま育苗用の培土として使っているが、それにもみ殻を混ぜている。割合は容量で堆肥3に対してもみ殻1。発芽時や育苗期においては根張りをよくするために、特に通気性、排水性、保水性が大切だからだ。

育苗用の培養土

もみ殻を混ぜた育苗培土

マルチング

もみ殻はマルチングにも優れた資材だ。畝や株元を厚く覆うことで、地表に届く光が遮られ、水分の蒸発による乾燥や雑草の発芽を抑えられる。一方で、雨や空気は通すので、もみ殻の下の地面は、適度な湿り気が保たれ、微生物やミミズなどの有用な土壌生物も生息しやすくなる。また株元への泥跳ねが減ることで、土壌病原菌の付着や果実の傷みも防げる。さらに、隙間にできる空気の層が断熱材となり、夏は地温の上昇を抑え、冬は保温効果を発揮する。

もみ殻マルチ

乾燥が苦手なショウガにもみ殻マルチ

扱いやすいのも、もみ殻マルチのいいところだ。ポリフィルムのマルチをたるみなく張るのは慣れないと難しい。じつは私はあまり上手に張れない。手間もかかるし、使い終わったあとにゴミになるのもいやだ。
その点、もみ殻なら必要な場所に敷き詰めるだけで済む。土に接するところからゆっくりと分解が進んでいくが、作物を収穫してマルチとしての必要がなくなれば、そのまま土にすき込んでしまえば土壌改良に役立つ。

もみ殻マルチの効果

  • 雑草抑制
  • 乾燥防止
  • 土壌生物の増殖促進
  • 地温上昇の抑制
  • 保温
  • 泥跳ね防止
  • 作業の効率化
  • ゴミの削減

堆肥やボカシ肥の副資材

堆肥やボカシ肥(栄養価の高い有機物を発酵・分解させた肥料)づくりでは、混ぜ合わせる素材のC/N比を20〜30に調整すると、微生物が効率よく増殖し、分解がスムーズに進む。
その点で、もみ殻のC/N比は70〜80と、堆肥やボカシ肥の材料としては非常に分解しにくいものだ。窒素が0.5%程度で肥料分もほとんどないので、主成分にはならない。

ボカシ肥

ボカシ肥。もみ殻の形がそのまま残るので土壌改良効果も期待できる

しかし、もみ殻のC/N比の高さと形状は副資材として非常に有用だ。堆肥やボカシ肥の主成分に窒素が多い場合、もみ殻はその炭素源としてC/N比の調整に使える。
そして、もみ殻の小さな隙間は微生物のすみかになり、堆肥やボカシ肥の通気性や保水性も向上する。うまく混ぜれば、分解もスムーズに進む。
細かい計算は割愛するが、例えば米ぬか0.5キロ、鶏ふん1キロ、もみ殻1.5キロを加えてボカシ肥をつくると、C/N比25前後の理想的なバランスになる。

敷料

わが家ではヤギとニワトリを飼っているが、その敷料にわらと併せてもみ殻を使っている。空気を含み、ふかふかしているので居心地は悪くないと思う。もみ殻には一定の吸湿性があり、家畜の排せつ物による湿気も吸収してくれる。それをニワトリが引っかき回すことで発酵が促され、いやな臭いはまったくしない。ふんと混じったもみ殻は半年もすれば良質な堆肥に変わっているので、取り出して畑に施用してやる。今年の夏も、そうやってできた土でトマトが豊作だった。

もみ殻をニワトリ小屋の敷料に

ニワトリ小屋の敷料にするとふんと混じり、ニワトリが足で引っかき回して発酵を進めてくれる

保温・断熱

もみ殻は、冬季におけるサトイモやサツマイモの保存資材にも適している。サトイモの保存適温は7〜10℃、サツマイモは13〜15℃といわれているが、もみ殻の断熱効果がそれを可能にしてくれる。畑に深さ50センチほどの穴を掘り、その中にサトイモを並べて、もみ殻で埋めれば適度な温度が保たれる。通気性もあるので蒸れて腐敗することなく、春まで品質を落とさずにサトイモを保存できる。サツマイモは保存適温がやや高いためハウスや倉庫に合板などで枠をつくり、その中にもみ殻を入れて埋めておくといい。

もみ殻で保温

畑に掘った穴にもみ殻を入れてサトイモを保存する

もみ殻の保温・断熱性を生かせるのは、イモの保存だけではない。住宅の断熱材としても利用できる。セルフビルドで建てたわが家は、まさに床下にもみ殻を詰めて断熱している。もともと分解しにくい素材なので、乾燥状態を保てば腐る心配はない。床下のもみ殻の厚みは5センチあり、断熱性能は抜群だ。

畑やって、田んぼやって、ヤギやニワトリ飼って、まきストーブをたいて暮らしていれば、無駄になるものはこれっぽっちも出ない。野菜の残渣はヤギやニワトリのエサとなり、ふんは堆肥に変わり土を肥やす。山や森から切り出された丸太はまきとなって寒い冬を暖めてくれ、残った灰は肥料になる。わらも、ぬかも、そしてもみ殻も不要な副産物ではなく、暮らしや野菜づくりに欠かせない資材なのだ。

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