もみ殻と米ぬかは元々の役割が全く異なる
もみ殻と米ぬかはどちらもお米のタネの部分から取れるもので、タネの殻の部分がもみ殻、その中に玄米の状態のお米があり、それを精米した時に出る胚芽やぬか層の粉が米ぬかとなります。
役割として、もみ殻は害虫などの敵から大事なタネを守らなければならないため、とにかく丈夫で硬いです。その代わりほとんど栄養は含まれていません。その中の胚芽が新しい命が生まれる場所であり、ぬか層に含まれるさまざまなビタミンやミネラルなどと、胚乳に蓄えられているデンプンを使って成長していきます。
もみ殻と米ぬかはどちらも畑や田んぼづくりの中で使うことができますが、このように元々の役割が全く違いますので、その栄養成分や構造が大きく異なります。それぞれ使用する時に期待できる効果や、注意点についてご紹介していきます。
もみ殻と米ぬかはどこで手に入る?
もみ殻はコイン精米機やJAのライスセンターなどで無料でもらえるところが多いです。米ぬかはもみ殻に比べてまとまった量が手に入りにくいですが、コイン精米機で手に入る場合もありますし、お米やさんや直売所で販売しているところもあります。お米農家さんでしたら、自前で精米しているところもあるので、直接聞いてみるのも良いと思います。ただ販売しているものは加熱してあるものが売られていることもあります。堆肥(たいひ)などの発酵を促す目的で使う場合は、生の方が効果が高いので、確認してから購入しましょう。
もみ殻の利用方法
もみ殻に含まれる成分は炭水化物が約8割でケイ酸が残りの約2割を占めます。このケイ酸はガラスや陶磁器の原料ともなる物質で、これが含まれていることで、もみ殻はとても丈夫で硬く、土壌生物による分解もされにくいのが特徴になります。このケイ酸は野菜が吸収すると、茎葉が丈夫になると言われています。そのほかの栄養素はほとんど含まれていないため、肥料効果はあまり期待できません。このもみ殻を畑づくりに使う時は主に以下の3つの選択肢があります。
①生のまま使う
②もみ殻くん炭にしてから使う
③堆肥化してから使う
それぞれ詳しく説明していきます。
①生のまま使う
まずは一番簡単なそのまま使う方法です。生のもみ殻を畑で最もよく使うのが、マルチング資材として、畝の上に敷き詰める方法だと思います。もみ殻は硬くて、土壌生物によってもなかなか分解されにくいため、マルチング資材として適した素材です。土の上を覆うと、保湿・保温・雑草抑制効果などが期待できます。ビニールフィルムによるマルチングと比べると多少すきまはあるので、雑草は生えてきますが、通気性は良いので地温の上がりすぎを防ぐことができます。
また土の中にすき込んで、水はけを改善する効果も期待できます。通常、もみ殻のように炭素率の高い生の資材を土の中に入れると、それを分解するために糸状菌が一気に増殖し、その際に土から窒素成分も消費されてしまう窒素飢餓という現象が起こりますが、もみ殻はあまりにも分解しにくい素材のため、逆に窒素飢餓も起こりにくいようです。
②もみ殻くん炭にしてから使う
もみ殻をいぶして炭にしたものをもみ殻くん炭と言います。基本的に農家がもみ殻を利用する時は、この利用法が最も多いのではないかと思います。ホームセンターなどで売られているもみ殻くん炭器を使用することで自作できますが、火を扱うので広い場所が必要となります。
もみ殻くん炭の特徴としては、まず無数の目に見えない小さな穴があいている状態(多孔質)なので、これを土の中に入れると、水はけ、通気性がよくなるほか、保水性・保肥性も高まると言われ、微生物のすみかにもなるなどさまざまな効果が期待できます。またpHが8〜10でアルカリ性の資材なので、酸性土壌を中和する目的でも使えます。もみ殻に含まれるケイ酸やわずかなミネラルも、くん炭にすることで作物が吸収しやすい形となります。土の中に入れる場合や苗床用の土に混ぜる場合などは、生のまま入れるよりも炭にしてから入れた方が、もみ殻が持つポテンシャルを最大限に生かしやすいのではと思います。ただし有機物は含まれないため、他の堆肥と併用することが多く、あくまでも名脇役といった感じです。
③堆肥化してから使う
もみ殻に家畜ふんや米ぬかなどを混ぜ込み、発酵させてから使う方法です。そうすることでもみ殻だけでは足りない栄養素を補うことができ、逆に家畜ふんや米ぬかだけでは足りない土壌の物理性改善効果が期待できて、バランスの良い堆肥になります。こちらも堆肥化するための場所が必要となりますが、もみ殻をたくさん使って土づくりを行いたい場合はこの方法はオススメです。
米ぬかの利用方法
米ぬかにはタネもみが発芽するために必要な栄養のほとんどが集まっているので、ビタミンやミネラル、食物繊維など豊富な栄養素が含まれています。野菜の三大栄養素と言われる窒素、リン、カリウムもバランスよく含まれており、特に牛ふん堆肥などと比べてもリンの割合が多いのが特徴です。
窒素(%) | リン(%) | カリウム(%) | |
---|---|---|---|
米ぬか(生) | 2.69 | 2.34 | 1.76 |
もみ殻 | 0.32 | 0.03 | 0.31 |
牛ふん堆肥(副資材なし) | 2.2 | 1.3 | 2.4 |
農研機構「バイオマス成分データベース」より
米ぬかを使用する時は以下の2つの選択肢があります。
①生のまま使う
②ぼかし肥料にしてから使う
それぞれ説明していきます。
①生のまま使う
まずはそのまま使う方法です。生の米ぬかは栄養価が高い分、虫や微生物も来やすい状態です。その点を利用して堆肥の発酵を促す目的で使われることがよくあります。僕は畑にある雑草で堆肥をよく作るのですが、その際に米ぬかを混ぜ込むと雑草だけでは不足しがちなリンを補え、発酵も促せるので一石二鳥です。逆にリンが過剰な畑では米ぬかを入れすぎないようにします。
畑の土の上に直接まく方法もありますが、量が多すぎるとカビやナメクジなどが増えることがあるので注意しましょう。僕は畑に直接まく場合は土の上にそのままというより、畝の上に雑草やワラを敷いて、その上から1平方メートルあたり2つかみ分ほどふりかけて、ワラや雑草の発酵・分解を促す目的で使用しています。一度にたくさんまくというよりも月1回くらいのペースで、追肥のような形で少しずつまくような使い方がオススメです。土の中に入れるのは土の中のカビが増えたり、窒素飢餓を起こす原因となるのでオススメしません。
②ぼかし肥料にしてから使う
米ぬかは発酵していない未分解の状態のものを多く畑に入れると、病害虫の発生につながるリスクがあり、肥料の効き目も遅いという欠点があります。そこでぼかし肥料として発酵させてから使うと病害虫の発生も抑えられ、肥料効果も早く期待できます。ぼかし肥料の具体的な作り方については、以下の記事を参考にしてください。
特徴を知った上で、一手間かけて使うと効果抜群
もみ殻には栄養はほとんどなく、とにかく硬くて分解しにくい。米ぬかは栄養豊富で分解が早い。それぞれ全く異なる特徴を持った資材です。この特徴が使い方次第で、メリットにもデメリットにもなりますので、そこを把握した上で使用しましょう。またまとまった量が手に入りそうな場合はそのまま使うよりも、もみ殻はくん炭や堆肥にして、米ぬかはぼかし肥料にして使うことで、よりそのポテンシャルを生かしやすくなります。どちらも日本では比較的手に入りやすい資材ですので、うまく使えるようになって畑づくりに生かしていきましょう。
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