良い畑には可愛い花が咲く雑草が増える?【畑は小さな大自然vol.81】

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良い畑には可愛い花が咲く雑草が増える?【畑は小さな大自然vol.81】

連載企画:畑は小さな大自然

良い畑には可愛い花が咲く雑草が増える?【畑は小さな大自然vol.81】
最終更新日:2020年05月29日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。僕は花屋さんで見る花たちよりも、畑に生えている雑草たちが咲かせる、小さくて可愛らしい花が好きです。不思議なことに畑の土づくりが進んでいくと、年々ハコベやホトケノザ、オオイヌノフグリなどの可愛らしい花を咲かせる雑草が増えていくことに気づきます。なぜ生える雑草が変わってくるのでしょうか。そしてなぜ可愛い花を咲かせるものが増えるのでしょうか。今回はこの謎に迫ってみます。

畑づくりが進むと、生える雑草が変わってきた!

 小さい花を咲かせるヒメオドリコソウ

一般的な農業ですと、野菜の生育に邪魔になるような害虫や雑草だったり、病気の原因となりうる土壌微生物を排除することで、より確実に大きくて立派な野菜を育てようとするのが普通だと思います。ところが僕はそんな排除される対象である虫や雑草、微生物たちの営みが愛おしいと感じてしまう性格なもので、自然農やパーマカルチャーなどの自然循環の仕組みを生かす技術を学び、むしろいろんな雑草や虫、微生物たちが増えていくような環境を意図的に畑に作っています。

虫や雑草の種類が増え、複雑な生態系が築かれるようになると、特定の害虫や病原体だけが大量に発生することがなくなっていきます。もちろん完全に虫食いをなくすことはできませんし、病気になることもあります。でもそれらの被害が広がってどうしようもなくなるといったことがなくなるのです。農家としての畑づくりには向いていない方法ですが、暮らしのための畑づくりとしてはとてもオススメな方法だと思い、この「畑は小さな大自然」シリーズの中で少しずつご紹介しています。

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こうしたやり方で畑づくりをしていくと、不思議なことに自然と生えてくる雑草の様子が変わってきました。しかも僕が好きな小さい可愛らしい花を咲かせる雑草が増えていくのです。今回は、なぜそんな現象が起きるのか? そしてなぜ可愛い花が咲く雑草が増えるのかの謎に迫ってみたいと思います。

生える雑草はどう移り変わっていく?

まず具体的に生える雑草がどう移り変わっていくのかなどをご紹介していきます。

地力の低い畑には「競争力が強い」雑草が生える

地力がない段階で特に生えやすいなと感じている雑草は、イネ科雑草のチガヤ、メヒシバ、エノコログサなど、また地下茎で増える雑草のスギナ、ヨモギ、ハマスゲ、アレチノギクなどです。

地力が低い畑に生えやすい雑草

イネ科雑草 チガヤ、メヒシバ、エノコログサ
地下茎雑草 チガヤ、スギナ、ヨモギ、ハマスゲ、アレチノギク

いずれも土の栄養を吸う力が強く、根の張りが強い雑草です。地下茎植物は根から他の植物の生育を阻害する化学物質を出して、自分のテリトリーを広げていることが知られています。痩せ地でも育つ植物は、競争力のある強いものが多い印象です。

 チガヤ

 スギナ

 ハマスゲ

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地力が高い畑の雑草は、可愛い花を咲かせる

そして地力がついてくるとだんだんと増えてくる雑草は、はじめにシロツメクサやカラスノエンドウなどが増えていき、そのあとハコベ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウなどが増えてくるなと言う印象です。共通点としてはいずれも可愛い花を咲かせると言う点です。イネ科雑草や地下茎雑草なども生えてきますが、その割合はだんだんと減っていきます。

 ハコベ

 ホトケノザ

 オオイヌノフグリ

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地力(ちりょく)とは?

地力が上がることで雑草の変化が起こることは、一応畑の師匠にも言われていましたし、以前に本でも読んだことがありました。
地力とは簡単に言うと、その畑の土そのものが持つ植物を育む力のことです。明確な定義はないのですが、栄養素の量・バランスといった化学性、保水性や排水性といった物理性、土壌生物の量や種類、バランスなどの生物性の3要素が大きく関わっていると言われています。一般的には牛ふんや鶏ふん、米ぬか、雑草、落ち葉などの有機物を完熟発酵させた堆肥(たいひ)を入れることで、地力は上がると言われています。

地力の変化によって、植生の遷移が起こっている?

実は自然界では植物が時間の経過とともに自然と移り変わるこのような現象が常に起こっていて、これは「植生の遷移」と呼ばれています。例えば使われなくなった田畑で時間の経過とともに草木が生い茂り、数百年後には森になっていくような現象です。田畑に生えてきた雑草たちが虫を呼び、その雑草が枯れたものや虫の死骸、排せつ物が土の上に積み重なり、それを土壌微生物が分解・合成して栄養豊富な土となり、よりその土地が肥えた状態に変化するというように、雑草自体がその環境を変化させ、その環境の変化に応じた雑草に生え変わるという、自然界には当たり前にある仕組みのようです。

畑づくりにおいても生きものたちのフンや死骸を堆肥化して地力を上げていくことで、この植生の遷移が行われるのではないかと考えています。ただし畑の場合は、人が絶えず草を刈って手を入れるというような二次的な生態系なので、もちろん森になっていく遷移の仕方とはまた異なります。

可愛い花が咲く雑草が増えていることの意味


雑草の移り変わりが起こる理由は、地力の変化による植生の遷移現象でしょう。では、肝心の可愛らしい花が咲く雑草が増える理由は一体なんなのでしょうか。そもそも「これらの雑草はなんのために花を咲かせているのか?」を考えると答えらしきものが見えてきます。
そうです、きっとハチやチョウなどの蜜を吸いにくる虫に見つけてもらいやすくし、着地する場所をつくるためですよね。そうすることで花粉も一緒に運んでもらい、自分の遺伝子を他の株につけさせることで、繁殖する領域を広げています。正確に言うとイネ科雑草も花は咲かせますが、これらは虫ではなく風に花粉を運ばせています。

ここで肝心なのが、花を咲かせる植物というのは、特定の虫と共生する存在であるということです。そして花の形や色が違うことで、呼び寄せようとする虫も変わってきますので、それだけ虫の種類も増えているということになります。実はこの遷移現象は植物だけでなく、虫にも起こっているのだと思います。確かに、雑草を増やすと初めは害虫が増えるのですが、次第にそれを食べる天敵が増え、そして害虫でも益虫でもないただの虫もどんどん増えていき、生態系が多様に複雑になっていることが観察していると分かってきます。

生態系が豊かになると、助け合うことが生存確率を上げるのでは

地力が低く土が痩せている段階では、生物の多様性も低い状態です。その環境ではイネ科雑草や地下茎雑草のような、個で強いタイプ、もしくは同種のみで生き残ろうとする方が生き残りやすいのでしょう。しかし、地力が上がり、その分そこで生きる生物の多様性が増え、関係性が複雑になってくると、他の生きものと協力した方がより効率的で生存確率が上がりやすいのかもしれません。自然界と言うと弱肉強食のイメージが強いですが、多様性のある環境では助け合うことが自分のためであり、全体のためにもなるという優しく温かい世界が見えてきて、人間社会もこうだと良いなと思ったりします。みなさんも畑づくりを行う中で、生えてくる雑草の様子やその変化にぜひ注目してみてください。そうすると面白い世界が見えてくるかもしれません。

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そーやんの「畑は小さな大自然」シリーズ
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暮らしの畑屋そーやんが、自然の生態系の仕組みを利用しながら楽に野菜づくりができる方法などを伝授します。害虫や雑草などのお悩みも、このシリーズを読んでスッキリ!

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